「大退職時代」と言われる状況が続き、リモートワークがなくなりそうな気配もない。そんななか、パンデミックの波に飲まれないためのサービスを展開しているのがマルコ・エクスペリエンシーズ(Marco Experiences)だ。
同社は2019年10月、ソフトバンクグループで投資部門を担当していたスマン・シバ(Suman Siva)が創業した。多くの企業において社員たちが在宅勤務で離ればなれの状態が続くなか、マルコは本物の企業文化を育むサポートをしている。
マルコ・エクスペリエンシーズのスマン・シバCEO。
Marco Experiences
創業以来、マルコはネットフリックス(Netflix)、フェイスブック(Facebook、現メタ)、アップル(Apple)、コインベース(Coinbase)、ウーバー(Uber)をはじめ300以上の企業で400近くのイベントやアクティビティをサポートしている。
オフライン、オンライン合わせると4万人以上がマルコのイベントに参加したことがあるという。また、直近1年間で申し込みは780%増加しており、総売上は910%伸びているとCEOのシバは言う。
「コロナ禍で企業文化はピンチだと言われていますが、私たちは逆に企業文化を見直すチャンスだと思っています。コロナ禍だからこそつながることが必要になります。多くの人が会社を辞めるこの『大退職』の状況は、解決しがいのある課題だととらえています」
啓蒙とクリエイターをベースにしたプログラム
マルコの屋外プログラム。
Marco Experiences
マルコは「特別な体験を通して社員をひとつに」というシンプルなスローガンを掲げており、2020年には2人だった社員数も20人に増えた。
「マルコにお願いした最初のイベントはバーチャル・マジックショーでした。最初は半信半疑でしたが、参加者はすごくよかったと言っていました」と言うのは、マルコのクライアント、リチュアル(Ritual)の人事担当責任者であるジェン・コーネリアス(Jenn Cornelius)だ。
消費者向けにビタミン・サプリメントを提供するリチュアルではこれまで、マルコによるアクティビティを何度か開催してきた。コーネリアスは2022年の社員合宿もマルコのサポートを受けて計画したいと思っている。
「社員が自信を持って今後もこの会社で働こうと思ってくれるように、今年はそれなりの予算を確保しました。実際今までのところ、マルコのアクティビティでそのような効果が出ています」
アクティビティを通して会社の一体感を高める以外にも、トップクラスのクリエイターを呼んだり凝った開催場所を選んだりすることでファシリテーターの効果はさらに高まる、とシバは言う。
「心を動かされるようなクリエイターを使うことで、体験や気持ちをいきいきと感じてもらえます。競合他社はここまでこだわってファシリテーター探しをしていませんが、イベントの効果を高めるためにはとても重要な要素です」
それぞれのイベントは、会社のハッピーアワーの代わり以上の効果を持たせるようにしているという。マルコのホームページには、利き酒からビートボクシングのレッスン、催眠術体験、さらには数泊の合宿まで、全米のさまざまな場所で行えるアクティビティを検索できるデータベースもある。
申し込みする人たちの多くが口コミ客だとシバは言う。会社の露出を増やし、またホストや顧客の数を増やすために、毎月無料のコミュニティ・アクティビティも行っている。
2022年には、2月に行われた黒人歴史月間のように、歴史認識向上月間に注力していくという。また企業向けに新たに会員制度も設ける。登録すると定期的に会社のアクティビティを開催できるようになる。
「デジタルスキル研修やダイバーシティ、インクルージョンなど、社員に自信を持ってもらえるような、重要かつインパクトのあるテーマを取り上げたイベントも開催しています」とシバは言う。リチュアルではマルコのサポートのもと「Celebr(ate) Holiday Conversations」と題するアクティビティを行い、意義のある会話の仕方の研修・サポートを行ったという。
一体感、社是、ビジョンの3つが強いカルチャーを生む
強い企業文化を作るにはまず社員に一体感を感じてもらうことだ、とシバは言う。
「職場に対する帰属意識を感じられることが重要です。相互理解が会社や会社の事業を大きく向上させるのです」
また、企業は社是を明確に定義し、社員にしっかり理解してもらう必要がある。会社の考え方が社員の行動や仕事への参画姿勢を決定づけるのだとシバは話す。
「例えば社員のダイバーシティをどのくらい重視するかなど、会社の姿勢というのはどんな取り組みに投資するかに表れるものです」
最後に、強い企業文化の基盤になるのは、社員たちが共感し一枚岩になれるビジョンだ、とシバは言う。
「大きな成功を収めている会社では、会社が掲げる大きな目標に社員たちが共鳴しているのです」
(翻訳・田原真梨子、編集・常盤亜由子)