ロシアのミハイル・ガルージン駐日大使
FCCJ
緊迫が続くウクライナ情勢をめぐり、ロシアのミハイル・ガルージン駐日大使が2月2日、日本外国特派員協会で記者会見し、「ウクライナ侵攻の噂は西側で生まれ、西側が煽った」とアメリカやEU・NATO(北大西洋条約機構)加盟国などを批判。ウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟は認められないとするロシア政府の「NATO不拡大」要求を改めて主張した。
現在、ロシア・ウクライナ国境には10万人を超える規模のロシア軍が集結しているとされ、ウクライナ北部に面するベラルーシにもロシア軍が「演習」を名目に展開。軍事的緊張が続いている。
ロシア軍のウクライナ国境付近での増強は2021年の春と秋以降にわたって確認されている。ロシア側は、NATOがウクライナを軍事的に支援し、ウクライナもロシアとの国境地帯に軍を集結させていると主張。軍事行動を正当化しようと企図しているようだ。
ガルージン氏は同日の会見の中で「ロシア側からの戦争はない」としつつ、アメリカやNATOがロシアの侵攻に備えてウクライナに武器を供与していることを批判。「ロシアがウクライナとの国境付近に兵力を集中させようとしているというのは誤りだ」とも主張した。
また、「ウクライナ侵攻を疑う噂は全て西側で生まれた。西側はこの噂を積極的に広め、煽ったので、ウクライナ政府自身もとても怯え、"ちょっと待ってくれ、パニックになるな。悪いことは起きないよ"と言い出した」とも発言した。
ガルージン氏による会見内容は、ウクライナ情勢の緊迫化は「アメリカやNATOが引き起こしたもの」とするロシア政府の見解を改めて主張し、ウクライナのNATO加盟は認められないとする「NATO不拡大」の要求を改めて正当化するものだった。
ウクライナ情勢をめぐってはロシアのプーチン大統領が2月1日、西側諸国がウクライナをめぐり意図的に戦争へと誘おうとしており、ロシアの安全保障上の懸念を無視していると非難している。
こうしたロシア側の主張について、アメリカ国務省は「ロシア政府は、ウクライナとの国境に10万人以上の軍隊を配備し、現在の危機を引き起こした。ウクライナ側には同様の軍事活動はなかった」とロシア側の主張を否定している。
「“強い行動”は関係断つに等しい」経済制裁めぐり日本をけん制
ロシア軍がウクライナに侵攻した場合、アメリカやEU諸国などはロシアに対して厳しい経済制裁を加える方針だ。
これに対してガルージン氏は「ロシアの指導者に対する個人的な経済制裁や、世界の金融活動のメカニズムからロシアを遮断する制裁は、互いの関係を断つに等しい」と発言。プーチン大統領の個人資産凍結や国際金融取引に使われる銀行間ネットワーク「SWIFT」からロシアを締め出す制裁をアメリカなどが検討していることを非難した。
1月21日に開かれた日米オンライン首脳会談では、岸田文雄首相とバイデン大統領が「(ロシアがウクライナに侵攻した場合)いかなる攻撃に対しても“強い行動”をとることについて、米国や他の同盟国、パートナーとの緊密な連携を継続していく、引き続きしっかりと意思疎通を図っていく」ことを確認している。
ガルージン氏はこの「強い行動」という言葉を引用して「“強い行動”は日本とロシアの総合的な関係を発展させるためには逆効果」と発言。「ロシアと日本の対話において、ポジティブな雰囲気を作り出すことに貢献しない」「ロシアと日本の関係の精神と矛盾していると思う」と述べ、アメリカなどに同調しないよう日本政府をけん制した。
アメリカ国防総省は2月2日(日本時間3日深夜)、バイデン大統領が東ヨーロッパ地域への米軍派兵を正式に承認したと発表した。CNNは当局者の話として「数日中」には派兵されると伝えた。配備先はポーランド・ドイツ・ルーマニアで、あわせて約3000人規模になるという。
(文・吉川慧)