エレクトリック・オートノミーのEV充電ステーションのデザインコンペの最優秀作品。
Courtesy of Electric Autonomy
- エレクトリック・オートノミーのデザインコンペは、電気自動車の充電ステーションへの考え方を新たにするものだ。
- このコンペティションの上位作品は、充電ステーションを単なる停留所ではなく、目的地にすることに焦点を当てていた。
- 充電インフラは、電気自動車普及の大きなハードルとなっている。
電気自動車の充電の未来像を探るデザインコンペが実施された。
2022年2月1日、カナダのエレクトリック・オートノミー(Electric Autonomy)は、電気自動車の充電ステーションを再構築する国際デザインコンペティションの受賞者を発表した。このコンペの主なスポンサーである燃料小売企業のパークランド(Parkland)は、受賞したデザインをカナダのブリティッシュコロンビア州の少なくとも1つの充電ステーションに導入する予定だと述べている。
受賞した上位3つのデザインは、充電ステーションを単なる停留所としてではなく、目的地として捉え直したものとなっている。スコットランドのエジンバラを拠点とするJASグループ(JAS Group)の主任建築家であり、このコンペの最優秀賞の受賞者、ジェームズ・シルベスター(James Silvester)はプレスリリースで、自分のデザインを「単なる旅の過程」となるのではなく「楽しむための」空間として創り上げたと述べている。
エレクトリック・オートノミーのデザインコンペの最優秀賞作品。
Courtesy of Electric Autonomy
シルベスターのデザインしたステーションは楕円形で、雨水の収集や太陽エネルギーの利用といったサステナブルな要素も含まれている。また、カナダで最も重要な資源のひとつである木材をふんだんに使用したデザインになっている。
カナダの厳しい気候を和らげるため、屋根の張り出し方を工夫し、道路からも充電ステーションが見やすいように太陽光発電のライトを設置している。
エレクトリック・オートノミーのデザインコンペの最優秀賞作品。
Courtesy of Electric Autonomy
ドライバーがクルマのそばでリラックスしながら「充電」できることを重視したデザインにしたとシルベスターは話している。
この充電ステーションには、フィットネスセンター、庭園、アートギャラリー、ファーマーズマーケットが併設される予定だ。
エレクトリック・オートノミーのデザインコンペの最優秀賞作品。
Courtesy of Electric Autonomy
パークランドの戦略マーケティング・イノベーション担当シニア・バイスプレジデント、イアン・ホワイト(Ian White)はこのデザインコンペの目的について、「通常は退屈な充電時間の20分から40分を没入できるような楽しい体験に変えることで、ガソリン車のドライバーから羨望の眼差しで見られるようにすること」と語っている。
2位と3位に入賞したデザインも、サステナビリティに加え、充電ステーションでのエンターテインメントやコミュニティの要素に重点を置いたものとなっている。
エレクトリック・オートノミーのデザインコンペの2位の作品。
Courtesy of Electric Autonomy
2位を受賞したのは、トルコのイスタンブールを拠点に活動する建築家、セルチュク・キシミール(Selçuk Kişmir)の作品だ。
この充電ステーションは円形で、ドライバーが仕事をしたり、外で子どもと遊んだりスペースも用意されている。
エレクトリック・オートノミーのデザインコンペの2位の作品。
Courtesy of Electric Autonomy
3位に入賞したデザイナーのパヴェル・バビイエンコ(Pavel Babiienko)は、ドイツのベルリンを拠点に活動する建築家で、「仕事や勉強をするためのスペースを設け、人々がリラックスでき、他のEVドライバーとの交流できる環境を作りたかった」と話している。
エレクトリック・オートノミーのデザインコンペの3位の作品。
Courtesy of Electric Autonomy
この充電ステーションのデザインには、屋外のプレイエリアのほか、カフェもある。
エレクトリック・オートノミーのデザインコンペの3位の作品。
Courtesy of Electric Autonomy
電気自動車の普及には、充電インフラが大きなハードルになっている。電気自動車の所有者の5人に1人が、充電があまりにも「面倒」なためにガソリン車に戻ってしまっていると、以前Insiderは報じている。
CNBCの記者ブライアン・サリバン(Brian Sullivan)とアクシオス(Axios)の編集者ダン・プリマック(Dan Primack)は、夏に電気自動車のドライバーが路上で直面するいくつかの問題、空いている充電スタンドを「パニックに陥って」探すことから、華氏100度(摂氏38度)を超える暑さの中で充電のために40分待つことまでを紹介している。2人とも、電気自動車への乗り換えを支援する最善の方法は、充電ステーションを目的地にすることだと結論づけている。
「人々が立ち寄り、買い物をする場所を提供するんだ。彼らに何かすることを提供しよう」とサリバンは話している。
ガソリンスタンドと同じにするのではなく、充電ステーションを再構築することで、EV企業はテスラ(Tesla)の後を追うことができるだろう。テスラの充電ステーションには、コーヒーバーや自動販売機、テスラのグッズを備えたラウンジを併設しているところがある。テスラのCEOのイーロン・マスク(Elon Musk)は、レストランを併設した充電ステーションの建設を検討している。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)