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高騰する価格の一方でなぜ大量廃棄。サプライチェーン危機でわかった食料供給の脆弱性

じぶんごとのWe革命

REUTERS/Ricardo Figueroa

食料価格が急騰していることに対する悲鳴が飲食業界から、そして家庭から聞こえてくる。パンデミックが始まって以来、たびたび不安定になりながらも、私たちの食卓を支えてきたサプライチェーンが、ここへきてさらに綻びを見せ、食料価格を押し上げているからだ。

背景にあるのはエネルギー価格の上昇による輸送コストの増加だ。さらに食のサプライチェーンのあらゆる地点で、新型コロナウイルスの治療や隔離によって労働人口が常態的に不足していることなどがある。

特に価格の伸びが目立つのは輸入牛肉や小麦粉の価格で、麺類・パスタや加工肉などが値上がりしている。2021年から2022年にかけて、松屋、吉野家、ミスタードーナツなどのファストフード・チェーンが、次々と価格改定を発表しているのもこのせいだ。

とはいえ、日本の物価の上がり幅はまだ、諸外国に比べて相対的には抑えめだ。OECD諸国の消費者物価指数の食料価格の上昇率は2021年12月、6.8%(対前年同月比)の伸びを記録した。日本は2.63%(同)にとどまっている。しかし今後、エネルギー価格の上昇や人手不足が続いたり、危惧されているように円安が進んだりすると、食品価格はさらに上昇するだろう。

捨てていた野菜の皮や切れ端まで利用

アメリカカリフォルニア州オークランド港のコンテナターミナルで出荷コンテナが山積みになっている様子。

コロナによる人手不足などが原因で、アメリカの港では荷揚げできずコンテナが滞留している様子が話題になった。

REUTERS/Carlos Barria/File Photo

世界中で食料をめぐるさまざまな混乱が起きている。

豪雨に見舞われたオーストラリアでは水害によって運送のインフラが遮断され、各地で食料不足が報告されている。アメリカでは農業、物流、食品加工、小売といったサプライチェーン上の要所要所で人手不足が起きていることから食料の流通が遮断され、スーパーの棚が空になったり、棚に並ぶ食材の寿命が以前より短くなったり、クリームチーズや猫の餌といった一部の品目が手に入らないといった事態が発生している。

食料価格の上昇は、ただでさえストレスの高いパンデミックライフにさらなる圧を与えている。英語メディアやSNSでは、食料保存の工夫や保存食のレシピ、これまで看過されがちだった品目の代替使用、これまで廃棄していた野菜や果物の皮や切れ端の利用方法などを見かけるようになった。不可避のインフレは為政者にとっては頭の痛い問題ではあろうけれど、人間の順応能力にも感嘆する。

サプライチェーンの混乱は食料特有の問題ではないが、他の資材に比べて寿命が短い食材は、賞味期限までに消費者に届けることができなければ廃棄の憂き目に遭う。物流のラインや食品加工工場などにおける人手不足、パンデミックによる飲食業界の業績縮小によって、食肉に加工される予定だった動物が殺傷処分に遭ったり、流通するはずだった食料が大量に廃棄されたりするという問題が各地で指摘されてきた。

日本でも起きた牛乳の大量廃棄問題

ロサンゼルスのフードバンクで、車両のトランクに食品を積み込む様子。

コロナによって生活を直撃された人たちにとって、フードバンクという仕組みは一つの支えになった。

Shutterstock/Ringo Chiu

こうした現行のサプライチェーンの脆弱性はパンデミックが発生する以前から指摘されてきた。グローバリゼーションとともに大手企業による市場の占有が進む中、多数の中間業者を内包する緻密で複雑なサプライチェーンが作り上げられた。

この仕組みによってできた、常に潤沢な食料が市場に存在しながら価格や品質が制御される状態は、消費者にとっては良いことだとされてきたが、生産者が価格を決められずに圧迫されたり、見た目が悪いだけの食料が弾かれて廃棄されたりといった状況をも生み出してきた。大規模なサプライチェーンのどこかでつまずきが起きたり、何らかの理由で需要が激減したりすると、行き場を失う食材が大量に出る。

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