メタ(Meta)のマリア・アンジェリドゥ・スミスは、入社からの8年間でさまざまな役割をこなし、現在はFacebookアプリ部門のバイスプレジデント(VP)兼コミュニティ・プロダクツの責任者を務める。
子どもの頃は医師か建築家になろうと思っていた。しかしギリシャのアテネ経済商科大学を卒業後は、ブランド・マネジメント、戦略コンサルティング、さらにはプロダクト・マネジメントの仕事に就いた。その経験が全て、アンジェリドゥ・スミスをメタへと導いていった。
マリア・アンジェリドゥ・スミス。
Meta
彼女は自分の「やる気」がどこから来るのか、常に分かっていた。人助けをすることと、新しい何かを生み出すことだ。そして最近では、ビジネスパーソンの女性が「自分には管理職に就くだけの能力がある」と自覚する手助けをしたいと考えている。
デロイト・グローバルによると、テック大手は2022年、職場での女性の割合を33%に拡大するとみられている。しかしこれだけ増えても、テック業界全体の女性比率はまだまだ低く、指導的な役職ともなればさらに顕著となる。例えば、テック業界のジェンダーギャップ解消を目指す非営利団体「ウィメン・イン・テック」によると、ヨーロッパのテック業界におけるマネジメント職の女性比率はわずか5%だ。
現在、アンジェリドゥ・スミスはチームを管理し、ユーザーによるコミュニティ構築を促すFacebookのプロダクト(Facebook Groupsなど)をマネジメントしているほか、テック業界女性のメンター役も担っている。
そんな彼女は、自分のこれまでのキャリアで大切なことを2つ学んだ、と話す。目標にこだわりすぎないこと、そして自己批判を自信に変えることだ。アンジェリドゥ・スミスはゆっくりと語り出した。
自分のビジョンにこだわりすぎないこと
女性ビジネスパーソンをコーチングしていると、「やりたいこと」や「いきたい場所」について、固定化したイメージを持っているという話をよく耳にします。
確かに、自分が何を目標にしていて、何がモチベーションになっているのかを理解することは大切です。しかしそこにこだわりすぎてしまうと、最終的には目的地に速く到達できるかもしれないチャンスまで見逃してしまうかもしれません。
私は、「人助けをしたい、難しい問題を解決したい、新しいものを作り出す仕事がしたい」と常に思っていました。しかし、どの道を選ぶかについてはフレキシブルでした。そのため、予定していなかったところで道を曲がったり方向転換したりして、気づくとテック業界やプロダクト構築の世界にいました。そして最終的にメタにたどり着いたのです。
むしろ道のりにこだわらなかったおかげで、追いかける価値がある機会はどれかを見極め、本気で手繰り寄せることができたと思っています。人事、ブランド構築、戦略コンサルティング、成長戦略、マネジメント、プロダクト構築、私にとってはその全てが、力を発揮するうえで重要なパズルのピースでした。
私のキャリアを通じて伝えたいのは、まず自分のやる気の源泉を知ることがいかに大切かということ。ですが、自分の強みや関心に沿うものであるかぎり、他の選択肢や違う道のりを厭わず選ぶこともまた大切だということです。
自己批判を自信に変える
女性リーダーは自分の短所に目が行きがちです。私の場合、社会に出たばかりの頃は間違いなくそうでした。自分に対して過剰なまでに批判的だったのです。もっとうまくできたんじゃないかと、些細なことまでいちいち粗探ししては落ち込んでいました。上司から人事評価を受け取ると、良かった点には目もくれずに、真っ先に改善点を読んだものでした。
こうしたことの多くは人として当然の反応でもあります。私たち人間は、評価することではなく批判することによって自己を改善し、成長するよう条件付けられているからです。でもこのやり方では、長い目で見た時にキャリアが行き詰まってしまうでしょう。
特に女性は、自分が不得意なものを気にしすぎるあまり、得意なものを見落としてしまいがちです。
私からのアドバイスとしては、自分の不得意分野でまずは平均点以上を取れるよう努力すること。そうすれば、そこに気を取られずに済みますから。
その上で、自分が輝けないところに目を向けすぎるのはかなりの機会損失になると割り切った方がいいでしょう。そのエネルギーを全て、自分の強みをもっと磨くことに使ったらどうなるか考えてみてください。自分の強みは、絶対に欠くことのできない自分の特徴に変えられるのです。
(翻訳・松丸さとみ、編集・野田翔)