保育園や学校の休園・休校が相次いでいる。
撮影:今村拓馬
会計・人事労務クラウドサービスを展開するfreeeは、2022年2月4日、社員らの子どもが通う保育園や学校が休園・休校した場合に取得できる特別休暇制度の新設を発表した。
休園や学級閉鎖が相次ぐ中、保護者の支援が社会問題化していることを受け、社員の発案からわずか4日で制度化した。
この特別休暇制度についてfreeeは「福利厚生として制度化することで、社員が使いやすい制度にしたかった」と説明する。
国は保護者の支援策として、休園・休校で保護者が会社を休んだ場合、保護者に対して助成金を支払う制度を設けている。しかし使い勝手が悪いことなどから、民間企業が独自に支援策を打ち出した形だ。
社員570人中、約200人が対象
提供:freee
freeeが新設した「おうち育児休暇」は、年次有給休暇とは別に、最大5日有給で取得可能な休暇制度。
対象は、休園・学級閉鎖等に該当する小学校3年生以下の子どもがいる直接雇用の従業員(正社員・契約社員・アルバイト・インターン)。freeeの社員は約570人。そのうち、今回の休暇の対象となる小学3年生以下の子どもを持つ社員らは約200人と、約3分の1以上にのぼる。
freeeではコロナ前から、従業員自身や家族が病気にかかった際に使える「疾病休暇制度」があり、子どもがコロナに感染した場合にはこの休暇が使えた。しかし、休園・学級閉鎖の時には、通常の有給休暇を当てるケースが多かったという。
制度化を進めた2人の社員
制度を発案した秋山詩乃さん(右)と、自身も子育て中の宮﨑亮子さん。
撮影:横山耕太郎
この制度を発案したのは、freeeで人事企画を担当する秋山詩乃さん。きっかけは、2022年1月末に目にしたチャットだった。
3児の父でもあるfreee役員が「保育園に通う子どもが濃厚接触者になり、保育園に行けなくなった」と書き込んだのに対し、数人の社員が同じ境遇だと声をあげたのを見たことがきっかけだという。
「私自身は子育てをしていないのでこの問題に気が付くのは遅かったのですが、当事者ではないからこそ、声をあげやすいと思いました」(秋山さん)
秋山さんが休園・休校時の特別休暇制度について相談したのが、5人の子育て中でもある労務担当の宮﨑亮子さんだった。
突然の休校に「衝撃」
宮﨑さん自身、1月末に小学生2人と保育園に通う子どもの計3人が、休園・休校になった当事者だ。
「休校の知らせはメールで来ていたのですが、それに気が付かずに登校させてしまい、すぐに子どもが帰ってきました。休園と休校を知った時は衝撃でした」
オミクロン株の流行前から、宮崎さんはほぼリモートワークで勤務。だが休園・休校の影響で、これまで仕事に集中できていた午前中から午後にかけての時間も、育児に追われるようになった。
「ミーティング中に子どもに呼ばれたり、キックされたり、お腹すいたと言われたり……。これまで給食だったので、働きながら昼食を用意するのもかなり負担でした」
宮﨑さんは前出の秋山さんから相談を受け、すぐに2人で休園・休校時の休暇制度の設計に着手。freeeの場合、通常の休暇制度を新しく設ける場合は、役員会での承認が必要になるが、「特別休暇」の枠内であれば、すぐに制度化ができるという。
秋山さんが制度の検討を始めたのが月曜日で、金曜日には休暇制度がスタート。わずか4日で制度を作った。
国の助成金にはハードル
提供:freee
厚生労働省では、休園・休校で、仕事を休んだ保護者に対して一人当たり、1日最大1万5000円を支払う「小学校休業等対応助成金」を設けている。
しかし、この制度は企業側が国に申請する必要があったり、個人で申請する場合でも会社の同意が必要だったりするため、使い勝手の悪さも指摘されている。
「社員がこの制度を使いたいと思っても、いきなり会社に請求するハードルは高い。福利厚生として制度を作れば、会社としても休業・休校時の取得を積極的に認めると言うことになります。その意味でもスピーディーに制度を作れてよかった」(秋山さん)
freeeでは今後、制度の利用状況に応じ、国に助成金を申請するのかどうかを判断するという。
(文・横山耕太郎)