FRBの「タカ派転換」を前に、投資家たちは判断に苦しんでいる。そんななか米銀大手バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)が「一見極端に見える」利上げ予測を発表して話題を呼んでいる。
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米銀大手バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)による最新の金利見通しは、以前の予測に比べてより厳しいものになっている。
ただし、同銀によれば、それは投資家が考えるより良い結果をもたらすという。
バンカメは1月下旬、米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を2.75%とし、2022年に7回、23年にはさらに4回の利上げを段階的に行うとの予測を発表した。
この利上げ予測は、FRBが2021年12月の連邦公開市場委員会(FOMC)を経て示した22年中に3回という見通しや、米金融大手ゴールドマン・サックスが1月初旬に顧客向けレポートで示した22年中に4回との予測をはるかに上回る。
また、米シカゴ・マーカンタイル取引所などを運営するCMEグループによれば、バンカメが示した見通しは、FF金利先物市場が織り込む利上げ回数より2回ないし3回多いという。
バンカメの米国株・クオンツ戦略責任者を務めるサビータ・スブラマニアンは、2月7日開催のメディアイベントで「一見して極端な予測と思われる方も多いでしょう」と発言。
さらに、同銀グローバル経済調査責任者のイーサン・ハリスは、数兆ドル規模の包括的景気刺激策と低金利、労働市場のひっ迫が相まって高インフレを生み出しており、FRBがその状況を抑えつけるには金利を上げ続ける必要があるとの見方を語った。
「米経済はFRBの活性化目標をクリアするにとどまらず、一時停止の標識を吹き飛ばして加速を続けています。失業率は着実に低下を続け、インフレ率は目標値より大きく上振れ、昨今の供給制約が解消されたあとも高止まりを続けると予測されます」(ハリス)
2022年中に7回の利上げを実施すれば、経済成長とそれに連動する株式市場に打撃を与えることは間違いないように思われるが、スブラマニアンによれば、経済を減速させない「正常な金利水準」を実現するにはそれでも十分ではないという。
より重要なのは、金利上昇は株式銘柄の多くにとって究極的にはプラスで、株式市場にとって猛烈なインフレが起きるよりは確実にポジティブな影響をもたらすということだ。
「市場に真の弊害をもたらすのは、FRBの利上げ回数ではなく、FRBから発信されるメッセージなのです。
FRBは金融政策を決定するFOMCの会合ごとに25ベーシスポイント(0.25%)ずつの利上げを計画していますが、それ自体は市場にとってさほど大きなダメージにならないでしょう。
それより投資家が懸念すべきは、インフレが制御不能になりかけていることを理由に、大幅な利上げが必要だとFRBが言い出した場合です」
スブラマニアンによれば、株式市場にとってより深刻な問題は、FRBの(債券購入中止や売却による)バランスシート縮小だという。
量的緩和の縮小から引き締めへの移行に伴って株価指数のリターンは低下し、米国株の動向を示すS&P500種株価指数は2022年末時点で4600程度で取引されることになるとバンカメは予測する。年初を下回るものの、現在よりは約2%高い水準だ。
そうした展開に備えて、投資家は現金収入の多い企業を重視した先手を打つべきというのがスブラマニアンの考えだ。
「2022年の投資銘柄を選ぶのに使うべき指標をひとつ挙げよと言われれば、私なら『フリーキャッシュフロー利回り』(=事業活動による純現金収入を株価で割った比率、株価の割安感を示す)。条件に合いそうなセクターは『金融』あるいは『ヘルスケア』です。
大手テック企業も、ボラティリティ(=価格変動性)は多少高いものの、魅力的な投資先になってきています。『エネルギー』セクターにもまだチャンスがあると考えています」
また、上記とは別の顧客向けレポートで、バンカメ米国中小型株戦略責任者のジル・キャリー・ホールは、FRBのタカ派転換を受けて高いパフォーマンスを発揮する(中小銘柄)セクターとして、「半導体チップおよび半導体製造装置」「エンターテインメント」「航空貨物および物流」「建設資材」を挙げている。
一方、「ユーティリティ(公益事業)」「生活必需品」「通信」セクターの銘柄は、歴史的にみてFRBのタカ派転換時にはアンダーパフォーム(=ベンチマーク指標を下回る)になることが多いという。
(翻訳・編集:川村力)