2021年式ポルシェ・タイカン。
Porsche
- ポルシェが電気自動車のタイカンで、ロサンゼルスからニューヨークまでの走行を行った。
- 充電にかかった時間はわずか2.5時間で、これまでの記録を、5時間近く短縮した。
- 急速充電ができ、正しいルートを選べば、電気自動車での長距離ドライブも快適であることを示している。
電気自動車(EV)での長距離移動は、使える充電スタンドを探したり、充電に数時間かかったりと、大変なことになりがちだ。ガソリン車ならば5分で満タンになり、出発できるが、EVではフル充電するためには3、40分、時にはもう少しコンセントに繋いでおく必要があるかもしれない。
しかし、電気自動車のせいでアメリカの誇る雄大なロードトリップが消えることはないだろう。ポルシェ(Porsche)が最近、そのことを証明した。同社は2022年1月、EVセダンのタイカン(Taycan)が、ロサンゼルスからニューヨークまでの2834.5マイル(約4600キロメートル)を走行し、充電に要した時間は2時間26分48秒だったと述べた。
2021年式ポルシェ・タイカン。
Porsche
ポルシェは、これまで充電時間の記録を、5時間近く更新したことになる。さらに重要なのは、電気自動車での長旅が間違いなく実行可能であるということ、思っているほど悩む必要はないこと、何かしらの犠牲を払うこともないことを示したことだ。通常のアメリカ横断ドライブでも、トイレ休憩や食事などで、停車時間は2.5時間を優に超えるだろう。
もちろん、これは慎重に計画されたマーケティング・イベントであり、行き当たりばったりの旅とは違う。だが、それでも収穫はある。主に、電気自動車の充電時間が短縮され、高速充電スタンドが増えれば、EVでの長旅が今のような頭痛を引き起こすことはないだろうということだ。
2021年型ポルシェ・タイカン。
Porsche
今回使用された2021年型タイカンには、オプションのパフォーマンス・バッテリー・プラス(Performance Battery Plus)が搭載されており、EPA(アメリカ環境保護庁)が評価する航続距離は225マイル(約360キロメートル)だが、独自の航続距離テストでは、最適条件下であれば少なくとも300マイル(約480キロメートル)、おそらくはそれ以上走行可能であることを示唆している。それでもまだ、頂点に立てるわけではない。テスラ(Tesla)のモデルS(Model S)の航続距離は、400マイル(約640キロメートル)以上、ルーシッド(Lucid)のエアー(Air)は、500マイル(約800キロメートル)以上と評価されている。
だがタイカンの充電時間は、購入可能な電気自動車の中では最も短い。350キロワットの充電に対応しており、22.5分で75%まで充電することができるとポルシェは述べている。あるステーションでは、6%から82%まで充電するのに要したのはわずか22分だったという。
2021年型ポルシェ・タイカン。
Porsche
このような充電機能は現在ではまだ珍しいものだが、ヒョンデ(Hyundai)の新型EVアイオニック5(IONIQ 5)といった主流となるモデルへ徐々に浸透している。さらに、高出力の充電ステーションは非常に少なく、多くの地域ではまだインフラが整っていない。ポルシェが使用したのは、親会社であるフォルクスワーゲン(Volkswagen)傘下の、エレクトリファイ・アメリカ(Electrify America)の充電ネットワークだ。
それでもポルシェが行った旅は、ギネス世界記録のプレッシャーを抜きにしても、EVがガソリン車と同じように長距離ドライブに使えるという、急速充電の未来を示唆している。
[原文:Porsche just proved that stopping to charge an electric car won't kill the great American road trip]
(翻訳:Ito Yasuko、編集:Toshihiko Inoue)