ウクライナ情勢、外交努力は実るか。ロシア外相は“対話継続”をプーチン大統領に進言、でも事態はなお緊迫

ウクライナ情勢をめぐり、欧米各国の首脳が外交的解決に望みを託し、動きを活発化させている。一方のロシア側のラブロフ外相がプーチン大統領に欧米との交渉を続けるよう促したのとの報道も出ている。

ウクライナ情勢をめぐり、欧米各国の首脳が外交的解決に望みを託し、動きを活発化させている。一方のロシア側のラブロフ外相がプーチン大統領に欧米との交渉を続けるよう促したのとの報道も出ている。

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ウクライナ情勢をめぐり、欧米各国の首脳が外交的解決に望みを託し、動きを活発化させている。一方のロシア側のラブロフ外相からはプーチン大統領に欧米との交渉を続けるよう促す発言も出ている。

アメリカのバイデン大統領とイギリスのジョンソン首相が2月14日、電話で会談した。

米ホワイトハウスの発表によると、両首脳は「ウクライナの主権と領土の一体性に対する支持」を再確認した。また、ロシアが軍事的緊張をさらにエスカレートさせる行動を選択した場合は「“深刻な結果”を課すための準備」を含め、同盟国と緊密な協調をとることを強調した。

イギリス首相官邸によると、両首脳は「外交のための“重要な窓”は残されている」と語ったという。

一方で、ヨーロッパ各国がロシアから輸入している天然ガスについて「(ロシアへの)依存度を下げる必要性を繰り返し強調した」とし、「この動きは、他のどの動きよりもロシアの戦略的利益の核心を突くものである」との認識を示した。

ジョンソン氏は14日、ウクライナ情勢について「我々は絶望の危機に瀕しているが、プーチン大統領が(ウクライナから)後退する時間はまだ残っている。我々はみんなで対話し、ロシア政府がロシアにとって悲惨な過ちとなることを避けるように促している」とツイート。外交的解決への希望を捨てていないことを示した。

上記のツイートからおよそ4時間20分後、ジョンソン氏はバイデン氏との会談内容についてもツイート。「ロシアが、ウクライナへの脅威から身を引くための“重要な窓”があることで合意した」「ウクライナへのさらなる侵攻は、ロシアと世界に甚大な損害をもたらすだろう」とつづった。BBCによると、米英首脳の電話会談時間は40分だった。

ドイツは「ノルドストリーム2」が気がかりか。

緊迫するウクライナ情勢をうけて、欧州諸国のリーダーたちは外交的努力を続けている。

7日にはフランスのマクロン大統領がモスクワでロシアのプーチン大統領と、8日にはウクライナの首都キーウ(ロシア語表記:キエフ)でゼレンスキー大統領とそれぞれ会談した。

ドイツのショルツ首相(左)とウクライナのゼレンスキー大統領

ドイツのショルツ首相(左)とウクライナのゼレンスキー大統領

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14日にはドイツのショルツ首相もキーウでゼレンスキー大統領と会談した。

ショルツ氏はウクライナへの連帯を示し、経済支援を表明した。一方で、これまで拒否してきた武器供与については改めて否定。ロシアからウクライナを経由せず、ドイツへと天然ガスを輸送できるパイプライン「ノルドストリーム2」についても言及しなかった。ゼレンスキー氏は、ノルドストリーム2について「(ロシアの)地政学的な武器だ」批判した

ポリティコによると、ウクライナのNATO加盟についてショルツ氏は「(ウクライナの)NATO加盟問題は実質的な議題になっていない」「ロシア政府が、実質的に議題になっていないことを大きな政治問題にしているのは奇妙なこと」と述べた。

一方、ゼレンスキー氏は、NATO加盟は「夢」としつつ、「我々にとって、NATO加盟は絶対的な目標ではない」としつつ「欧州の安全保障構造をめぐる(ウクライナの)将来はウクライナが決める」とも述べた。

ショルツ氏は15日、プーチン大統領とも会談する予定だ。

ロシアのプーチン大統領(右)ちとラブロフ外相

ロシアのプーチン大統領(右)ちとラブロフ外相

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ロシアのラブロフ外相はプーチン大統領に交渉継続を促すが……

ロシアのラブロフ外相はプーチン大統領との会談で「外交的な話し合いはまだ尽くされてない」との見解を示し、プーチン氏に欧米と交渉を続けるよう促したという。

ただ、米CBSは米政府当局者の話として「ロシアは長距離砲とロケットランチャーの一部を発射位置に移動させ、ウクライナを威嚇している」「ロシア軍の一部の部隊は集合場所から離れ、“攻撃態勢”に入り始めている」と報道。アメリカ国務省は、在ウクライナの大使館職員をウクライナ西部リヴィウに移転したと発表した

ロイターによると、ウクライナのゼレンスキー大統領は14日のテレビ演説で、ロシアが16日に侵攻するとの情報を示し、この日を「連帯の日」にするべく「24時間以内に帰国し、ウクライナの軍隊、外交官、国民と共にあるよう呼び掛ける」と述べた。

インタファクス通信「一部部隊が基地に帰還へ」

ロシアのインタファクス通信は2月15日、ロシア国防省の発表として、ロシア軍の一部の部隊がウクライナとの国境付近での軍事演習を終え、基地に帰還しつつある伝えた。この部隊はロシアの西部軍管区および南部軍管区の一部部隊だという。

ロイターは「ロシアと米欧の緊張が緩和する可能性がある」と報じたが、なおも予断を許さない情勢だ

※ウクライナの首都はウクライナ語読み「キーウ」(ロシア語読み:キエフ)」と表記します。

【UPDATE】最新の情報に更新しました。(2022/02/15 18:40)

(文・吉川慧

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