年初来、ハイテク株の苦戦が続くが、それは裏を返せばバリュー(割安)株が増えているということでもある。米投資信託評価機関モーニングスターの見方を紹介しよう。
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2022年に入ってからグロース(高成長)株の悪戦苦闘が続いている。ハイテク株の多いナスダック総合指数は年初来13.6%の下落を記録。投資家の押し目買い(=株価下落時にその後の上昇を見越して買いを入れること)を誘発している。
米投資信託評価機関モーニングスターによれば、バリュー(割安)株は過去1カ月間で26銘柄から48銘柄へとほぼ倍増。高い企業価値を持ちながら、足もとの調整局面では割安価格で取引されているハイテク株11銘柄にとくに注目している。
同社データジャーナリストのジャキール・ホセインは最近の調査レポートでこう指摘する。
「ハイテク株は再び勢いを取り戻す可能性があります」「2021年末時点でハイテク株は18%割高の評価でしたが、(2022年1月の株価下落を経て)いまやわずか4%と割高感が薄れてきています」
モーニングスターの「ワイドモート指数」(=同社が厳選した競争優位性が高く割安感が強い20銘柄)に含まれる4銘柄の分析も含め、Insiderが以下のように情報を整理した。
いま購入すべき銘柄
「エコノミックモート」という用語は、日本語に直訳すれば「経済的な堀(ほり)」で、そこから何となく推測できるように、ある企業が競合他社に対して持つ優位性を意味する。著名投資家のウォーレン・バフェットが考案したとされる概念だ。
モーニングスターの「ワイドモート指数」を構成する銘柄は、高い価格決定力とコスト優位性を兼ね備え、競争を勝ち抜く条件が揃っている。
なお、同社は各銘柄のエコノミックモートを「ワイド(堀が広い)」「ナロー(堀が狭い)」「ノン(堀がない)」の3段階で評価しており、つまり「ワイドモート」は最も競争優位性が高い銘柄ということになる。
前出のホセインによれば、ワイドモートと評価される4銘柄が、いま相当な割安価格で取引されているという。
うち3銘柄、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリングTSMC)、ラム・リサーチ、テラダインは半導体関連。スマートフォンやノートパソコン、電気自動車(EV)に不可欠の部品である半導体、ひいてはその関連業界は長期的な投資対象として高い関心を集める。
残るワイドモート銘柄のセールスフォースについて、ホセインは「ソフトウェア分野において最も長期に持続可能な成長ストーリーを持つ銘柄のひとつ」と評価する。
以下で、ワイドモート4銘柄を含むモーニングスター注目の割安ハイテク株11銘柄を紹介しよう。
1.セールスフォース(Salesforce)
産業分野:ソフトウェア
株価:205.84ドル
時価総額:2050億ドル
分析:売上高成長率は今後数年以内に上場以来初めて20%を下回る可能性が高い。しかし、利益率の拡大はこのまま続き、年20%超の1株あたり利益を長期にわたって創出する。ソリューション間の緊密な統合とそれらの自然なフィットは同社の強力な価値提案の源泉となっている。
2.TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing)
産業分野:半導体
株価:119.85ドル
時価総額:6300億ドル
分析:近年の半導体メーカーの統合により、同社の最先端プロセスを統合した製造システムへのニーズが生まれると予想される。同社製半導体を使うAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ハイパフォーマンス・コンピューティングのオーガニック成長は数十年続く可能性がある。
3.ドキュサイン(DocuSign)
産業分野:ソフトウェア
株価:120.10ドル
時価総額:240億ドル
4.リングセントラル(RingCentral)
産業分野:ソフトウェア
株価:167.34ドル
時価総額:150億ドル
5.セイバー(Sabre Corp)
産業分野:ITサービス
株価:9.23ドル
時価総額:30億ドル
6.ブロードリッジ・ファイナンシャル・ソリューション(Broadridge Financial Solutions)
産業分野:ITサービス
株価:144.63ドル
時価総額:170億ドル
7.コグニザント・テクノロジー・ソリューションズ(Cognizant Technology Solutions)
産業分野:ITサービス
株価:87.34ドル
時価総額:460億ドル
8.リテルヒューズ(Littelfuse)
産業分野:エレクトロニクス
株価:253.77ドル
時価総額:60億ドル
9.ラム・リサーチ(Lam Research)
産業分野:半導体
株価:554.75ドル
時価総額:780億ドル
分析:従来はNAND型フラッシュストレージデバイスのようなメモリのエンド市場向けが中心を占めていたが、近年はファウンドリー(受注生産)やロジック設計の受注も十分に増え、サプライチェーン問題を克服できれば、2022年には健全な成長を実現できると考えている。
10.SAP
産業分野:ソフトウェア
株価:116.81ドル
時価総額:1470億ドル
11.テラダイン(Teradyne)
産業分野:半導体
株価:111.54ドル
時価総額:180億ドル
分析:年初来およそ30%におよぶ株価下落については、同社の自動試験装置(ATE)への需要が失われたわけではなく、先送りになったものとみられる。失われた売上高も、2023年から24年にかけてまるごと回収されると予想する。
(翻訳・編集:川村力)