フレンバシーのECサイト「グッド・グッド・マート」では、カレーやパスタソースなどのオリジナル食品も販売。写真は、一番人気の定期便プラントベース詰め合わせセット「プラントベース月替りBOX」。
出所:フレンバシー
微細藻類の「ユーグレナ(和名:ミドリムシ)」を使った健康食品やバイオジェット燃料を開発するバイオベンチャーのユーグレナが2月1日、食品を中心にした環境配慮型マーケットプレイス(ECサイト)「Good Good Mart(グッド・グッド・マート)」を運営するフレンバシーを買収したと発表した。
フレンバシーは、社会に良いインパクトを与える「ソーシャルグッドな消費」が当たり前の社会の実現を目指す、2015年創業のベンチャー。グッド・グッド・マートのほか、プラントベース(植物性食品)のポータルサイトでは国内最大級の「Vegewel(ベジウェル)」を運営している。
高まる「エシカル消費」の波
コロナ禍で巣ごもり需要が増加するなかで、グッド・グッド・マートやベジウェルのような環境や人権など社会問題の解決につながる「エシカル(倫理的)消費」への関心が高まっている。
電通が1000人に行った調査によると、コロナ禍の自粛期間中にエシカル消費をより意識するようになった人が全体の3割に上った。
環境や社会に配慮した商品を扱う「楽天市場」内の特設サイト「EARTH MALL with Rakuten(アースモール・ウィズ・楽天)」も、2021年1〜11月の流通総額が前年同期比290%増、アクセス数も前年同期比約4.5倍に伸びたという。
出所:「楽天新春カンファレンス2022」資料
エシカル商品のうち、消費者の関心が最も高く、また実際に購入されているのが「食品」だ(【図1】)。食品業界では、大手食品メーカー、スタートアップを問わず、大豆ミートなどのプラントベース商品の開発を加速させている。
【図1】分野別に見たエシカル消費の購入経験・購入意向。
出所:電通「エシカル消費 意識調査2020」
フレンバシー代表の播太樹氏は、一連のエシカル消費の波について、
「いまはまだ、興味があってもどこで買えるのか分からないという人が多いかもしれませんが、商品が増えれば消費者の目に触れる機会も増えるはず。何かきっかけがあれば、市場が一気に拡大すると思います」(播氏)
と語る。
拡大が予想されるエシカル消費市場のなかで、グッド・グッド・マートは単なる「社会貢献」に終わらないことを重視しているという。
「購入によって社会貢献ができればいいのかというと、僕はそうじゃないと思っているんです。それだけでは、寄付やチャリティのように一度きりの行動で終わってしまうかもしれません。でも、僕たちは持続可能であることを重視したい。
そのために、地球や社会、他者といった『ソーシャル』だけでなく、買った本人のメリットにもなる商品を提供すること。そこを大事にしています」(播氏)
プラントベースの食品は、生育・製造過程で排出するCO2の量や使用する水の量が牛肉や鶏肉、豚肉といった動物性食肉よりも少なく、環境負荷が低いとされる。さらに、肥満や糖尿病、心臓病の発生率も動物性食肉より相対的に低いとされ、ヴィーガンだけでなく、健康志向の人々の間で広がっている。
地球にも自分にもGoodであること。「その条件を満たすど真ん中の商品が、プラントベース」(播氏)だという。
「もちろん、プラントベースも万能ではありません。小麦や大豆のアレルギーを持っている人もいますから。それでも、卵や甲殻類などのアレルギーを持つ人には大切なタンパク源になるし、宗教上の理由で牛肉や豚肉を食べられない人も多い。
その意味で、プラントベースは食における『最大公約数』だと思っています」(播氏)
ユーグレナが見出した将来性とは?
グッド・グッド・マートでは現在、食品を中心に約400点を販売。プラントベースやグルテンフリー、アレルギー配慮、環境配慮、途上国支援など、12のキーワードから商品を検索できる。
出所:Good Good Mart Officialサイト
エシカル消費の需要が着実に高まっているなかで行われた、ユーグレナのフレンバシー買収。
ユーグレナの完全子会社となった経緯について、播氏は次のように話す。
「ユーグレナの方に初めて会ったのは2021年の秋口。資金提供を含めて何らかの協業ができないかと思い、面会を申し込んだのが始まりでした」(播氏)
創業以来、播氏は新株の発行などで資金調達をしてきた。
エシカル消費への注目度が高まっているとはいえ、日本の「エシカル消費市場」は欧米に比べればまだまだ小さく、市場規模のデータもほとんどない。そのため、資金調達をする相手に市場の将来性を説明することが難しかったという。
その点で、ユーグレナの反応は違った。
「ユーグレナはこの分野の将来性を理解していたので、市場規模の説明は一切必要なかった。それどころか、トントン拍子に話が進み、わずか数カ月で完全子会社化することが決まったのです」(播氏)
その根底にあるのは、ユーグレナの企業理念「サステナビリティ・ファースト」と、フレンバシーの目指す「ソーシャルグッド」が、言葉は違うものの「企業として目指している方向性が完全に一致していたから」(播氏)だという。
この認識はユーグレナも同様だ。
ユーグレナの広報は、Business Insider Japanの取材に対して、
「(フレンバシーは)ソーシャルグッドな消費とサステナブルな社会の実現に向けて共に成長することが出来る最適なパートナーです。具体的な戦略については開示できないものもありますが、ソーシャルグッドな商品をより多くの方に購入頂けるECプラットフォームとして成長を支援するとともに、ユーグレナグループ商品の新たな販売チャネル展開なども検討しています」(ユーグレナ広報)
と協業への期待を語った。
今後も引き続きフレンバシーの代表取締役を務める播氏は、ユーグレナグループの一員としてどのような展望を抱いているのだろうか。
「具体的な目標はこれから詰めていきますが、まずはグッド・グッド・マートの知名度を上げたいですね。そして、商品数も現状の約400点から増やしたい。ユーグレナの代名詞でもあるミドリムシを使ったグリーン・カレーなど、オリジナル商品を販売する日も来るかもしれません」(播氏)