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海外イベントから分析する「2022年テクノロジー流行」…メタバースは流行の一部、勢い増す韓国テック【尾原和啓×岩佐琢磨 対談】

撮影:Business Insider Japan

「メタバース」がバズワードになった2021年終盤から現在。2022年以降のIT業界はどうなっていくのか。

2022年1月に2年ぶりにアメリカ・ラスベガスで開催された国際的なテックイベント「CES 2022」に出展したShiftall(シフトール)代表の岩佐琢磨さんと、CESをリモートで取材したIT批評家の尾原和啓さん

テック業界を知る2人は、日本の国外で起こっている2022年のIT業界の潮流をどう読み解くか。CES 2022を改めて振り返りながら対談します。


対談風景

対談はMeta(旧Facebook)の「Horizon Workrooms」上で実施した。画像左からBusiness Insider Japan編集長で聞き手を担当した伊藤、尾原さん、岩佐さん。

画像:編集部によるスクリーンショット

──(CES 2022に)オンラインで取材者として参加された尾原さんは、事前の見立てとしてどのようなジャンルに注目されていましたか?

尾原:開催側(注:Consumer Technology Association、CTA)はもともと「モビリティー」「サステナビリティー」「ライフテック」「メタバース」が注目領域と言っていました。

展示自体は非常に簡素だったのですが、キーノートやスピーチではそこで公表するコンセプトビデオにかなり力を入れるようになっていました。

キーノート(基調講演)関連だと、今回1番大きかったのは「モビリティー」ではないでしょうか。

※米自動車大手GM(ゼネラルモーターズ)は、CES 2022で基調講演の1つを担当した

fedex

米自動車大手GMの配送用EV事業BrightDropの車両。Fedexは2021年12月に最初の車両を納入したことを発表している。発注はトータルで500台と報道されている。

出典:Fedex

(一方で)アメリカの医療品メーカーのアボット社が鳴り物入りでライフテック領域に入ってきた割には、キーノートを聞いた限りでは「中国の方が進んでいる」という印象を持ちました。

あとは、2021年からオンライン体制に進んだこともあり、展示やEureka Park(※)にいる方々は、サイト上でプロダクトのビデオをアップロードしていました。なので、そこ(Webサイト上)でざっと見て、気になった企業ごとに個別の取材時間をとってもらうようにしていました。

意外と取材していくと「メタバース」系は結構充実していました。

※Eureka Park……CESで例年スタートアップの展示が集まるエリアの名称

岩佐:多かったですね。ただ、現地で思ったのはメタバースより、(むしろ)自動車、メディカルヘルス、スマートエナジーの方が盛り上がっていました。

日本のメディアは「メタバース」と言い過ぎのような気がします。日本は自動車産業が強くて、かつメタバースがバズワードになっている国なので、「自動車」「メタバース」と報道されがちではありました。

海外でも取り上げられていますが、メディカルやライフテック、グリーンテックの方が気合が入っていたと思います。「A、B、Cと(注目ジャンルが)あって、&メタバース」みたいな。

スタートアップ企業の出展数はついに韓国系がトップに

尾原:あとおもしろかったのは、アメリカも高齢化社会になりつつあるので、ライフテックなどの括りが「Age Tech」(エイジテック、高齢者向けの技術)になっていた。

岩佐:確かに多かったです。

ヘルステックやライフケアの中だと、正真正銘の医療機器の認証を取らないといけないアプリやハードウェアという領域と、FitbitやApple Watchのような「日々の健康を記録するようなもの」とに分けられると思います。

日本にいると、前者の医療機器系はスタートアップにほぼいない。あってもメディアの話題には上がらない。でも、CES 2022だと韓国勢が医療機器系として非常に多く、気合いが入っていました。

(コロナ流行直前の)2年前はスタートアップと言えばフランスというイメージでした。が、(CES 2022全体では)韓国の出展者だけで約500社と言われています。フランス企業はその半分ほどと報道されてます。フランスの多くはフレンチテック(フランスのスタートアップ)でしょうから、韓国企業がその出展社数を超えたんですよ。正直、驚きました。

日本のメディアは「韓国すごかった」とは言わないんですが、現場にいると「アジア系を見たら中国の人だと思え」ではなく「韓国の人だと思え」という感覚でした。

韓国勢

韓国のスタートアップは勢いを増していた。

画像提供:岩佐琢磨さん

尾原:裏事情としては、中国系の出展がほとんどなかった。それも影響しているんじゃないかと。

岩佐:そうですね。中国からアメリカに出張するのはかなりハードルが高いようですし。

尾原:フランスは国をあげて「フレンチテック」を推していましたが、韓国は大学の連合や国の研究所など、国内でも複数のグループで競い合っているところがおもしろいですね。

特に最近は「IoT」もバズワード化していますが、結局はセンシングとAI技術が上がってきたということで、そこで医療系が盛り上がってきているのかなと分析しています。

岩佐:マップで見ると、赤く囲んだ部分がサムスン電子お抱えの「C-Lab」系列、政府系列、大学系列……などばらけてはいましたが、全部合わせると圧倒的強者でした。

出典企業

Eureka Parkの配置図で見る韓国勢(赤)とフランス勢(青)。面積比でみると韓国スタートアップの出典が非常に多いことが分かる。

画像提供:岩佐琢磨さん

フレンチテックはおしゃれだし、国民性としてデザインを押し出して、どちらかといえばカルチャー寄りの「衣・食・住」やコスメティックで強かった。「見たことがある技術だけど、かっこよく、おしゃれにまとめてきた」という特徴でした。

一方で、韓国のスタートアップは日本にすごく似ています。やはりサムスン電子、LGエレクトロニクス、ヒュンダイを抱えている国なので、モノの完成度が非常に高い。

「ここまで完成度の高い、ハード/ソフトのプロトタイプをつくってくるんだ」と、かなり衝撃的でした。

尾原:イノベーションは大きく分けて2種類あると思います。1つはExponential Innovation(エクスポネンシャル・イノベーション)と言って、テクノロジーの掛け算によって指数関数的に進化するもの。もう1つは、デザインや文脈的なものを重視して「意味のイノベーション」とも言われるデザイン・イノベーションというもの。

(これまで)フレンチテックはデザイン・イノベーションの分野で強かった。

でも、センサー、AI、ロボットがどんどん技術的によくなっていき、それが繋がっているというのがここ2、3年の動き。エクスポネンシャル・イノベーションの領域で韓国が日の目を見ているのは、そういう背景があると思います。

電気自動車は「大手の逆襲」が始まった

VISION-S02

CES2022プレスカンファレンスでSUV型の「VISION-S02」を世界初披露するソニーグループ会長兼社長の吉田憲一郎氏。

出典:CES2022プレスカンファレンス中継より

── お二人の中で、CESの出展内容で注目していたプロダクトや内容はどんなものでしょうか?

尾原:今回、ライフテック系にエクスポネンシャル・イノベーションの波が来ているわけですが、一方で電気自動車(EV)は技術が成熟化してきたので、大手の逆襲が始まったと思っています。

例えばソニーのEV参入が「まるで技術大国・日本、電気自動車でもソニーが来る」みたいな文脈で広がっているんですが、実のところは電気自動車になると分業化できるってことなんですよね。

ソニー自体は自分たちで(車体を)つくっていなくて、ボディーはオーストリアの「Magna Steyr(マグナ・シュタイア)」が担当している。自分が得意なところに特化して、他はOEM(他社に委託して製造すること)でできる、パソコンの(製造の)流れと同じことが起きているんです。

一方で、テスラが(電動トラックの「Semi」で)出遅れている中で、GMがトラックで勝負をしかけました。GMは、アメリカの物流大手の「FedEx」や小売大手の「Walmart(ウォルマート)」と手を組むなど、運用でカバーできるB2Bのエリアでしっかり連合軍を組んで、規模の経済でテクノロジーを乗り切ることに着手していました。

Fedexの車両は1時間2分30秒前後から登場する。

(EVの)テクノロジー戦争は技術開発競争から、ビジネス開発でどういう分業体制、戦略提携体制して乗り切っていくか、というフェーズに変わったとCES 2022で強く感じました。

── 社会実装のフェーズに移ってきたと言うことでしょうか。

尾原:そうですね。成熟化してくると、テスラみたいなハイエンド機はB2Bではそこまで必要ないので。そう言うところでしっかり組んできているGMはすごいなと。

── テスラもペプシ(ペプシコ)に電気トラックを納入するなど話題として上がっていますが、大手と現実に取り組むフェーズになりつつありますよね。

※テスラのEVトラックSemiについてペプシコ社CEOは2022年第4四半期に納品されるとCNBCの取材に答えた

尾原:テスラのようにオンラインで(自動車の)ソフトウェアを更新するというのは、自動車メーカーからするとかなり高度な技術です。でも、B2Bの場合は(極端な話オンラインでなくても)、納品後でもハードウェア的に更新することはできてしまうわけです。

全てがソフトウェア化、全てがスマートフォンのような形になるとテスラには追いつけない部分はたくさんありますが、“スマホ化”しなくても問題ない部分もたくさんある。

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