バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)は管理資産残高約5000兆円、運用資産残高260兆円(2021年11月時点)を誇る世界最大規模の金融グループだ。
Brendan McDermid/Reuters
米金融大手バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)の富裕層向け資産運用子会社、BNYメロン・ウェルス・マネジメント投資戦略ディレクターのジェフ・モーティマーは、株式市場の現況について同業他社より多少楽観的な見方をしているようだ。
モーティマーは最近、Insiderの取材にこう語っている。
「強気とまで言うつもりはありませんが、かと言ってまったく弱気でもありません。人間は不安になったり、疑心暗鬼になったりするものです。クライアントに対して投資ポートフォリオからあらゆるリスク資産をはじき出せなどとアドバイスするつもりはありません。現在地はいわば市場サイクルの中間点です」
年初来、株式市場では苦しい値動きが続いている。大型株の動向を示すS&P500種株価指数は6.4%、ハイテク株の比重が高いナスダック総合指数は11%、それぞれ下落している。
目の前で乱高下をくり返す相場を見てもなお、モーティマーは2022年末までに株価は上昇すると予測している。
「1月は一気に調整局面に突入し、多くの銘柄が深刻な下落を経験しましたが、市場はいま底を探っているところと見ています。年内はボラティリティ(=価格変動性)の高い状況が続くと思われますが、年末には8~10%程度の上昇で着地すると考えています」
モーティマーは、2022年内の市場回復を予測する理由を明らかにした上で、現在の相場環境で良好なパフォーマンスを得るための「3つの投資戦略」を提示している。以下で順に紹介しよう。
株式市場が回復すると言える理由
米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派転換や、ロシアのウクライナ侵攻に対する懸念から、最近は不安定な値動きが続いているものの、いずれも株式市場の暴落につながるものではないというのがモーティマーの見方だ。
「長期金利は少しずつ上昇していますが、まだ高いと言うほどの水準ではありません。それに、市場はすでに金利上昇を織り込み済みで、FRBによる年内4、5回の利上げを予想していない人はさすがにいないでしょう。
悪いニュースというのは得てして早くに(株価の材料として)織り込まれるものです。ロシアとウクライナの状況は確かに市場の注目のマトではありますが、リターンを左右するファクターはそれ以外にもたくさんあります」
BNYメロンは現在、FRBが「年内に3回ないしは4回」利上げを行うと予測しており、米銀大手バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)の「年内7回」予測とは大きな開きがある。
モーティマーによれば、インフレが自然に沈静化していくことで、FRBもよりハト派的なスタンスに傾く可能性があるという。
「インフレ抑制のためにFRBが一役買う必要があるのは間違いないこととしても、一方で時間の経過とともに、GDP成長率は鈍化し、サプライチェーンのひっ迫が緩和され、コロナ危機で離職していた人たちも徐々に職場復帰するでしょうから、インフレは解消されていくのではないでしょうか。
ボラティリティにふり回されることなく、それを乗りこなす必要があります。過去の歴史をふり返ってみても、こうした大きな変動期は長期的投資の視点から見て買いのチャンスであることが多いものです」
3つの投資戦略
第1に、大幅な株価下落に見舞われる可能性のあるセクターへのエクスポージャーが過大にならないよう、分散投資を徹底すること。また、ポートフォリオ内でグロース(=成長株重視)投資とバリュー(=割安株重視)投資のバランスをとること。
モーティマーは以下のように強調する。
「バリュー戦略とグロース戦略、小型株と大型株、米国株と国際株、それぞれへのエクスポージャーを取る必要があります。
『肉も野菜もバランス良く食べなさいよ』といった類いの退屈なアドバイスに聞こえるでしょうが、投資家に適切な結果をもたらすことは間違いありません。実際、グロース株の比重が多めの投資家はここ数カ月、そのツケを払い続けているのでは?」
第2に、インデックスファンド(=株価指数など市場の値動きに連動した運用を目指す投資信託)のようなパッシブ運用に頼らず、積極的に株価上昇が期待される個別銘柄を厳選して投資すること。
モーティマーによれば、(資産運用会社などの)アクティブ運用担当者たちは、強気相場のさなかでも最善を尽くそうとするという。
「経済サイクルのある特定の時期、例えばパンデミックによる経済危機からの脱却期には、パッシブ運用が功を奏するでしょう。
しかし、足もとの状況について言えば、銘柄選択に大きな実績を持つ優秀な担当者により大きな資産を配分するほうが有効な手法です。
状況は刻一刻と変化しており、あなたのポートフォリオに(長期的視点も含めた)真の価値をもたらすことができるのはそうした担当者なのです」
第3に、揺れ動く市場を前に保有する株式を手放したい誘惑にかられても、こうした時期だからこそ諦めず投資を続けること。
「若い投資家の方々は市場の下落を喜んでしかるべきです。なぜなら株式を買い増すチャンスだからです。
一度売り払ってしまえば、あとは次に安く買えるチャンスが来るまで、ひたすら株価下落を待つことになります。でも、いつそのタイミングが来るのかは、誰にも分かりません。
したがって、いますぐ資金を引き上げるのは完全に間違った判断、選択ということになります」
(翻訳・編集:川村力)