振動板の中央に穴の空いた完全ワイヤレスイヤホン「LinkBuds」がソニーから登場した。
撮影:小林優多郎
ソニーは、完全新型のワイヤレスイヤホン「LinkBuds(WF-L900)」を2月25日に発売する。直販価格は2万3100円(税込)。
LinkBudsの最大の特徴は、音を出す“振動板”に「穴が空いている」という点だ。その独自の機構によって、音楽の再生中にも周囲の音が聞こえる不思議な体験が得られる。
ワイヤレスイヤホン市場ではこのコロナ禍で、オンライン会議や、在宅業務や家事をしながら、音楽やポッドキャストなどを聴くといった“ながら聴き”の需要が拡大している。
LinkBudsはそんな需要にいかにフィットするのか。ファーストインプレッションをお送りする。
ソニー史上最小最軽量の完全ワイヤレスイヤホン
LinkBuds本体はかなり小さい。
撮影:小林優多郎
LinkBudsを触ってみてすぐに感じたのは「小さくて、軽い」ということだ。ソニーはLinkBudsについて、2022年2月時点で「ソニー完全ワイヤレスイヤホン史上最小最軽量」をうたっている。
筆者は普段、アップルの「AirPods Pro」(公称値10.8g)、グーグルの「Pixel Buds A-Series」(公称値10.12g)を使っているが、LinkBudsは実測値で約8gだ(それぞれ両耳の合計)。
写真左からLinkBuds、AirPods Pro。
撮影:小林優多郎
肌触りはややサラッとしている。今回試用したのは2色(ホワイト/グレー)のカラーバリエーションのうちの「グレー」だが、よくみると黒や白の小さな斑点が見える。
これは本体とケースの外装部分に再生プラスチックが活用されているからだ。なお、包装素材も普通紙などで構成されたプラスチックフリー仕様になっている。
音質は軽さに反してしっかりしている、音漏れはする
筆者の場合、装着してみると輪っかの部分が隠れるので一般的なイヤホンのようにも見える。装着感は上々だった。
撮影:小林優多郎
では、肝心の音はというと、かなりしっかりとした音がする。J-POPやオーケストラなどの音楽、YouTube動画、オーディオブックを聴いてみたが、高音が割れることなくクリアだ。
LinkBudsはハイレゾ非対応、対応コーデック(伝送方式)はSBC/AACのみと、例えばソニーの他の高級機種と違い音質面では差があるが、決して安っぽい感じではなかった。
気になるのは、音漏れ。シンプルに言えば音漏れ「する」。スマホの音量で50%を超えたあたりから、1メートル弱ほど離れていた場所から「何か聴いている」と分かるレベルだ。
そのため、自宅や職場、人と人との間隔が空いたカフェなどでは問題ないだろう。一方で、今回は試していないが、満員電車のような場所では音量によってはそれなりに周囲に聴こえてしまうだろうとは予想できる。
LinkBuds本体の背面。充電端子のほか、装着の有無を識別するためのセンサーもついている。
撮影:小林優多郎
ただ、その分「ながら聴き」に非常に有効だ。
筆者は妻が新型コロナの検査で陽性と診断された影響で1週間弱、家から1歩も出ず、家事や仕事をこなしていたが、LinkBudsで音楽を聴きながらする作業は快適だった。
調理器具や家電の音、隔離した部屋から訴えてくる妻の声を聞き逃すことはなかった。
IPX4相当の防水性能なので水回りの利用も安心。付属のものと合わせて5種類のサイズがあるフィッティングサポーターのおかげで、激しめに頭を振っても外れることはなかった。
マイク性能は上々だが、会議シーンの誤作動に注意
LinkBuds本体の正面。ソニーロゴの隣にはそれぞれマイク穴が見える。
撮影:小林優多郎
一方で、課題を感じるシーンもあった。それは主にオンライン会議のシーンだ。
本機の機構以外の特徴として「高精度ボイスピックアップテクノロジー」と「ワイドエリアタップ」という機能がある。
前者はマイクで得た音から環境ノイズを除去して装着者の声を強調するものだ。複数回のオンライン会議で使ってみたが、音質的には問題なかった(屋内にいたため騒音はない場所だったが)。
タップする場所のイメージ。本体をタップする(青く塗った箇所)以外にも、ワイドエリアタップをオンにすれば耳と頬の間をタップしても操作できる(だいたい赤く塗ったエリア)。筆者の場合、マスクをつけていても操作できた。
撮影:小林優多郎
後者のワイドエリアタップとは、音楽の一時停止・再生などの操作を本体のタップだけではなく、本体から離れた頬と耳の間をタップすることで実現できる機能だ。
初期状態ではオフになっており、純正スマホアプリ「Sony | Headphone Connect」で左右に機能を割り振れる。例えば、左側では2タップで音量を上げる、3タップで下げる。右側では2タップで音楽の一時停止・再生、3タップで次の曲へ、といった具合だ。
これは便利な機能だ。上記で示した以外にもSiriやGoogleアシスタント、Alexaの呼び出しに割り当てたり、「Spotify Tap」機能でアプリを開くことなくSpotifyの楽曲を再生したりできる。
「Sony | Headphone Connect」アプリで、各種設定を変更できる。
画像:筆者によるスクリーンショット
ただ、LinkBudsを接続したiPadでオンライン会議をしていた際、頬に手がぶつかったり、メガネをいじった際に強制退出されてしまうことが何度かあった。
これは「音楽の一時停止・再生」のコマンドが、会議アプリによっては「退出」に割り当てられていることが原因だ。頬をかいた際にLinkBudsが操作と誤認識して起こったのだった。
筆者の環境だと、iPadOS版のZoomとGoogle Meetで同様の動作を確認できた。ちなみに、Android版でも試したが、Androidの場合は会議アプリのバックグラウンドで音楽再生が始まるだけだった。
同じような環境で参加する人は、ワイドエリアタップをオフにして、本体タップで操作することを検討しておいた方がいい。
軽さの分、本体バッテリー駆動時間は短い印象
本体とケースのバッテリーを合わせると約17.5時間の連続駆動が可能(公称値)。
撮影:小林優多郎
バッテリー駆動時間も気になるところだ。
公称値では本体のみで5.5時間の連続駆動(DSEE/イコライザーオフ時)、ケース充電を加えると約17.5時間の駆動が可能だ。
筆者が実際に、DSEE(イヤホン側での高音質化技術)をオンにして2、3時間ぶっ通しでオーディオブックや音楽を聴いていると充電を促すアナウンス(残量20%程度)が再生された。
また、フル充電の状態からオンライン会議を約1時間してみたところ、残量は約70%程度。この時もDSEEはオン、さらにマイクを使っていた。この状態では3時間を超える会議に使うにはややギリギリの印象だ。
着け心地も自然で、かつ環境音も入ってくる機構なので延々と使っていられそうなイメージだが、バッテリー残量が少なくなれば外さざるを得ない。
ケースの背面にはペアリング用のボタンと充電に使うUSB Type-C端子がある。ワイヤレス充電には非対応。
撮影:小林優多郎
なお、ソニーの公称値では10分で90分再生できる分の充電はできるそうなので、「会議の合間など一区切りついたらケースにしまう」ことを習慣づければ支障はないとも言える。
根本的なところにあるバッテリー容量の少なさは、やはり軽量さとトレードオフなのだと思う。
これからも“ながら聴き”をするなら検討する価値あり
本体と付属品。包装素材には一切プラスチック素材を使用していないという。
撮影:小林優多郎
それに2万3100円(税込)という価格もひとつ躊躇するポイントかもしれない。
ただ、アップルの開放型イヤホン「AirPods(第3世代)」は2万3800円(税込)。骨伝導式を採用したShokz(ショックズ、旧AfterShockz)の製品も1万円〜2万円台の製品だ。
そう考えるとLinkBudsも高すぎるわけではないと感じる。特にLinkBudsの機構は現状では唯一無二で、そこから得られる音楽の試聴体験は満足度が高かった。
既に上記のような製品を持っていれば必要ないかもしれないが、これからも在宅業務などが続く予定で、“ながら聴き”に最適なイヤホンを検討しているのであれば、量販店などで体感してみて検討すべきだ。
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(文、撮影・小林優多郎)