ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた、3つの銀河が衝突している様子。
ESA/Hubble & NASA, W. Keel, Dark Energy Survey, DOE, FNAL, DECam, CTIO, NOIRLab/NSF/AURA, SDSS Acknowledgement: J. Schmidt
- アメリカ航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡は、3つの銀河が衝突して合体する様子を撮影した。
- 銀河が衝突すると、圧縮されたガスが新しい星を形成し、最終的にブラックホールが融合して時空が曲がる。
- NASAの新しいジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、このような星の爆発や超大質量ブラックホールを研究するためのものだ。
ハッブル宇宙望遠鏡は、3つの銀河がぶつかり、ゆっくりと合体していく様子を捉えた。
この画像は、6億8100万光年の彼方、かに座の方向で起こった宇宙の衝突を明らかにしたものだ。この3つの銀河は、IC2431と呼ばれている。10万人のボランティアが過去最大の銀河の調査を行った市民科学プロジェクト「Galaxy Zoo(銀河動物園)」で、ボランティアがこの3つの銀河の合体を発見した後に、天文学者はハッブル望遠鏡でここに焦点を合わせた。NASAは2022年2月、この新しいハッブル望遠鏡の画像を公開した。
銀河は大部分がほとんど何もない空間なので、星が衝突することなく、出会ったり通過したりする。しかし、ある銀河から別の銀河へと移動する物質が、ガスの雲を圧縮して新しい星を作る。こうして新しい星が次々と生まれることをスターバーストという。
近くのタランチュラ星雲はスターバースト、つまり新しい星が絶えず形成されている領域だ。
NASA/JPL-Caltech/Cornell University and University of Leiden
科学者たちは、すべての銀河の中心には超巨大ブラックホールがあると考えている。最終的にこの3つの銀河のブラックホールは、排水溝を回るように落ちて合体し、巨大な新しい銀河の中心に1つの巨大なブラックホールを形成するかもしれない。
その過程には通常何十億年もかかる。我々の天の川銀河は、約40億年後に隣のアンドロメダ銀河と衝突する運命にあるが、そうなるずっと前に太陽が膨張して地球を飲み込んでしまうだろう。
アンドロメダ銀河が天の川銀河と衝突している様子を、約37億5000万年後の地球から見た想像図。
NASA, ESA, Z. Levay and R. van der Marel (STScI), and A. Mellinger
NASAの新しい宇宙望遠鏡は、スターバーストと超大質量ブラックホールを研究するために打ち上げられた
超巨大ブラックホールが衝突すると、重力波と呼ばれる時空のさざ波が発生する。研究者たちは、いくつかのブラックホール衝突からそのような波を検出したが、銀河の合体の中心にあるブラックホールからは検出していない。
科学者たちは、宇宙には常に低レベルの重力波が存在し、それは合体している銀河から生じていると考えている。彼らはこの背景ノイズを検出するのに十分な感度の重力波検出器を作るために、現在も研究を続けている。
ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された、衝突する2つの銀河。
NASA, ESA, STScI, Julianne Dalcanton (Center for Computational Astrophysics / Flatiron Inst. and University of Washington); Joseph DePasquale (STScI)
天文学者は、宇宙望遠鏡を使って遠方から銀河の合体を観察することができる。1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡は、宇宙で運用される望遠鏡の中で最も強力なものだ。星の誕生と消滅を撮影し、冥王星の周りを回る新しい衛星を発見し、太陽系を通過する2つの恒星間天体を追跡してきた。その観測によって、天文学者は宇宙の年齢と膨張を計算し、ビッグバンの直後に形成された銀河を覗き見ることができた。
1997年の2度目の修理の後に撮影されたハッブル宇宙望遠鏡。
NASA
2021年12月、NASAはハッブル宇宙望遠鏡の100倍もの能力で宇宙を見渡せる新しい宇宙天文台「ジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡」を打ち上げた。
ウェッブ宇宙望遠鏡は赤外線を使用して、ハッブル望遠鏡では見えない銀河の中心部や星形成領域の塵の雲を見通すことができる。これにより、天文学者はさまざまな銀河における星形成を観測することができるようになる。
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(イメージ図)。
NASA GSFC/CIL/Adriana Manrique Gutierrez
また、ウェッブ望遠鏡によって、天文学者は太陽の何百万倍、何十億倍の質量を持つブラックホールを研究することができるようになる。うまくいけば、宇宙のはるか彼方を覗き込み、これまでに形成された最も古い銀河や、最初のブラックホールを見ることができるようになるだろう。そうなれば、超巨大ブラックホールがどのように巨大化したかを解明できるかもしれない。
この新しい天文台は、我々の銀河系の中心にある超巨大ブラックホールにも赤外線の視線を向け、なぜブラックホールが活発化と沈静化のサイクルを繰り返すのか、科学者が理解するのに役立つだろう。
ウェッブ望遠鏡は、100万マイル(約160万km)離れた軌道に移動し、宇宙空間で自らを展開するという危険な作業を完了した。現在は、冷却と観測機器の調整中だ。この新しい望遠鏡は、2022年の夏に本格的な観測を開始する予定だ。
[原文:A stunning photo from NASA's Hubble Space Telescope reveals 3 galaxies colliding]
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)