スコットランドで発見された翼竜の頭骨などの化石。
Gregory Funston
- スコットランドで、翼竜のほぼ完全な骨格の化石が発見された。
- 1億7000万年前に空を飛んでいた動物としては最大で、翼を広げると8フィート(約2.4メートル)もあったという。
- この化石は大型有翼動物の進化に関する我々の理解を変えるものになるという。
科学者たちが1億7000万年前に生息していた巨大な空飛ぶ翼竜類の化石を発見した。
この発見は、このような大型動物が初めて空を飛ぶようになった時期の見解を揺るがすもので、これまで考えられていたより約2500万年前も早い可能性があるという。
翼竜の骨格が岩に埋め込まれているのが見える。右端に突き出ている部分が翼竜の頭骨。頭骨は首の椎骨の横にあり、岩から突き出ているように見える肩の骨や翼の骨につながっている。
Gregory Funston
この動物の翼の幅は推定で8フィート(約2.4メートル)以上あったことが、2022年2月22日に発行された学術誌『カイレントバイオロジー(Current Biology)』で発表された。この個体は幼体のため、成体はもっと大きかった可能性があるという。
この翼竜類の新種は「Dearc sgiathanach」と呼ばれ、ゲール語で「翼のある爬虫類」を意味している。ギリシャ語で翼竜が「翼のある爬虫類」と言われるのと同様だ。
岩石から切り離された翼竜の頭蓋骨。
Gregory Funston
今回の解明は、2017年にスコットランドのスカイ島で発掘された、極めて保存状態の良い化石の発見に基づいている。
「この動物の骨格の約70%は化石になって保存されていた」と研究著者の一人はNBCニュース(NBC News)に話している。
「これまでの化石の多くは平らに圧縮されていたが、今回は立体的に保存されていた」とスコットランドのエディンバラ大学の古生物学者で、論文の共著者であるグレッグ・ファンストン(Greg Funston)はInsiderに語っている。
岩に埋め込まれたままの翼竜の骨格に頭骨を添えている。
University of Edinburgh promotional video
この翼竜の化石は重要な骨が失われているため、この動物の大きさを正確に知ることは不可能だとファンストンは言う。
しかし、研究チームの計算によると、翼幅は約8フィート(約2.4メートル)で、大きさはアホウドリより少し小さいと推定されている。
化石を含む岩石を薄く削って顕微鏡で観察したところ、翼竜が死んだときには骨はまだ成長していたことが分かった。つまり成体はもっと大きかった可能性が高い。
翼竜「Dearc sgiathanach」の骨格図。
Natalia Jagielska
恐竜とは別のグループに分類されている翼竜は、約2億2800万年前の三畳紀後期から6600万年前の白亜紀の終わりまでの恐竜のいた時代にまたがって生息していた。
白亜紀には、映画『ジュラシック・パーク』に登場するような、翼幅が30フィート(約9.1メートル)にも達する巨大な翼竜がいた。しかし、彼らは6600万年前の大量絶滅でいなくなってしまう。
スカイ島で化石が発見される以前、存在した期間の大半で、翼竜は小型だっただろうと科学者たちは考えていた。
比較的重い生物が飛ぶためには進化に時間のかかる特殊な翼が必要だったため、飛行の物理学が発達を妨げたという説がある。また、白亜紀に出現した鳥類に対抗するため、爬虫類は大きくなる必要があったという説もある。
「大きな翼竜は白亜紀のものであり、それ以前はどれもかなり小さいものだった、というのが長い間定着した考え方だった」とファンストンは言う。
「あなたたちは学校でそう教わってきているはずだ」
新しく発見された翼竜の化石。
Gregory Funston
しかしながら、Dearc sgiathanachは、約1億7000万年前、当時熱帯だったスコットランドを飛び回っていたと考えられている。
この研究の著者であるエディンバラ大学のスティーブ・ブルサット(Steve Brusatte)教授は、今回の発見を説明する動画の中で、「この翼竜はジュラ紀よりはるか昔のものだ」と述べている。
それは今まで考えられていたよりもずっと早い時期、鳥類が存在する前のことだ。
「我々が抱いていた多くの考えを覆すものだと考えている」とファンストンは話す。
翼竜と当時の肉食恐竜の様子をアーティストが描いたもの。
Natalia Jagielska
「科学者たちがこの化石をさらに掘り下げて研究することで、より多くの秘密が明らかになるだろう。この翼竜が押しつぶされずに立体的に保存されていたことで、さまざまな骨を新たに観察することができる」と彼は言う。
「例えば、頭蓋骨のいくつかの部分、特に繊細な口蓋は、この動物にしては例外的によい状態で保存されている。新しい技術を使って翼竜の骨を理解し、分析すれば、他にも驚くようなことが出てくるに違いない」
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)