NTTドコモは「dポイントクラブ」を6月3日にリニューアルする。
撮影:小林優多郎
NTTドコモは2月25日、同社が運営する「dポイント」ポイントプログラム「dポイントクラブ」の改定を発表した。新プログラムは6月3日からスタートする。
dポイントはNTTドコモの回線契約がなくても利用できる、共通ポイントサービスだ。会員数は約8700万人(2021年12月時点)。強力なユーザー基盤をもつポイントサービスだが、2021年7月にMMD研究所が発表した「2021年 通信会社と利用ポイントに関する調査」によると、「ドコモ回線以外」のユーザーで最も人気の共通ポイントは「楽天ポイント」が1位であり、dポイントはいずれのキャリアでも7位以下となっている。
キャリアごとのユーザーが最も利用するポイントサービス。
出典:MMD研究所
今回の「改定」は、本業である通信外の事業領域の拡大に取り組むNTTドコモとして、他キャリアユーザーへの拡大のための“テコ入れ”の側面がある。
新dポイントクラブの「4つのポイント」
6月3日から具体的に何が変わるのか。今回、大きく分けると4つの領域で変更がある。
(1) ランクの判定基準が変更、ライトユーザーのランクが上がりやすくなった
会員ランクは3カ月間の対象dポイント累計獲得数で決定される。
出典:NTTドコモ
いわゆる会員の“階級(ランク)”の段階数と判定基準が変更になる。
現在はドコモ回線の継続利用期間もしくは6カ月累計の対象dポイント獲得数によって、1st〜4th、プラチナの5段階が割り当てられ、クーポンや回線継続利用時の各種特典がある。
6月3日以降、5段階なのは同じだが「1つ星〜5つ星」という名称になる。判定基準は3カ月間の対象dポイントの獲得数のみとなる。
従来は初期の会員ランクから1ステップあがるのに6カ月累計で600ポイント以上必要だったが、新プログラムでは3カ月累計で100ポイントと大幅にハードルが下がっている。
対象となるdポイント。一部のキャンペーンや期間・用途限定のdポイントはランク判定対象外となる。
出典:NTTドコモ
なお、ランク判定基準となる対象のdポイントは以下のようになる。
現在と比較すると、年会費1万円の「dカードGOLD」特典で発生する光回線を含むドコモ回線料金の10%、3月から開始予定の「ドコモでんき Green」の電気料金の10%が対象ポイントとして追加されている。
- 街やネットのお店でためる(dポイント加盟店/d払い加盟店)
- ドコモの回線利用でためる
- dカードでためる
- アクセサリーやオプション品でためる
- dカードGOLD特典でためる(光を含むドコモ回線/ドコモでんき Green)
(2)dポイントカードで貯まるポイントがランクによって増加
「ポイント倍率アップ特典」は、ランクに応じてもらえるポイントが増える仕組み。
出典:NTTドコモ
では、ランクごとにどのような特典があるのか。ドコモ回線契約の有無にかかわらず全ユーザーに関係するのは「ポイント倍率アップ特典」だ。
ポイント倍率アップ特典は、dポイントカードでdポイントを貯める際にボーナスポイントが付くというもの。2つ星なら通常時の1.5倍、3つ星/4つ星なら2倍、5つ星なら2.5倍となる。
例えば、ローソンで800円(税別)の支払いをしたとする。ローソンではdポイントカードを提示すると日中で200円(税別)につき1ポイントが貯まるので、基本ポイントとして4ポイントが貯まる(基本は1ポイント=1円の価値)。
2つ星であれば、これに加えて+2ポイント。3/4つ星なら+4ポイント、5つ星なら+6ポイントの特典ポイント(期間・用途限定)が付与される。
なお、特典ポイントの1ユーザーあたりの付与上限は1万5000ポイントとなっている。加えて、特典ポイントは前述のランク判定基準の対象外となる点は注意。
(3)ドコモ長期契約者向けの特典が「d払い」利用必須に
ドコモ回線契約者向けの特典となるのが「長期利用ありがとう特典」だ。
出典:NTTドコモ
一方で、ドコモ回線契約者のみ対象となるのが「長期利用ありがとう特典」だ。
長期利用ありがとう特典は、ドコモの「5Gギガホ/ギガライト」などのプランを利用しているユーザーが対象で、ドコモ回線の継続利用期間と前述のランクに応じて、スマホ決済である「d払い」の誕生月の利用分に2〜20%のdポイントを上乗せして還元するというもの。
例えば、街のd払い加盟店で1000円(税込)の買い物をした場合、d払いで発生するdポイントは5ポイント。支払い時点が誕生月かつドコモ回線の継続利用期間が10年以上かつ4つ星以上であればであれば+100ポイントがもらえる。
d払いは銀行口座などからチャージした残高のほか、dカードや他社クレジットカードを紐づけて支払いが可能だが、ドコモ広報部によると「『長期利用ありがとう特典』の対象となる支払い方法は、現時点では決まっていない。今後決まり次第アナウンスをする」という。
なお、還元上限は契約中の料金プランに応じて1200〜5000ポイントと幅がある。新規契約の終了している旧プランや、オンライン専用の「ahamo」は対象外となる
また、長期利用ありがとう特典の提供開始にあたり、現在の長期利用者向け特典で会員ランクに応じて誕生月に一定のポイントが付与される「ずっとドコモ特典」は廃止となる。
(4)上位会員向けクーポンは廃止
上位会員向けだった「スペシャルクーポン」「プラチナクーポン」は廃止になる。
出典:NTTドコモ
最後に、クーポンについてだ。dポイントクラブでは現在、誰でも使える「dポイントクラブクーポン」と、4th以上で使える「スペシャルクーポン」、プラチナのみで使える「プラチナクーポン」の3種類を展開してきた。
これが、6月3日の新プログラム施行後は「dポイントクラブクーポン」のみになる。
上位会員にとっては特典が減る格好だが、NTTドコモは「(dポイントクラブクーポンで)全ランクのお客様向けに今後拡充しご提供いたします」としている。
長期契約者向けには「厳しい」サービス刷新
よりdポイントやd払いなどのサービスを広げていきたいNTTドコモ。
出典:NTTドコモ
今回のアップデートが改悪か改善か、一言で説明するのは難しい。
ランク判定基準の緩和にあるように、今まで4thやプラチナといった上位会員になれなかったユーザー、特にドコモ以外のキャリアのユーザーにとっては「何もしていないのに、日常で貯まるポイントが増える」からだ。
だが、長期利用者、特に10年以上のドコモ回線を使い続けるユーザーにとっては、あまり歓迎できない。
今までは10年以上契約していれば、自動的に最上位のプラチナランクになり、特典のクーポンがあり、かつ「ずっとドコモ特典」で契約プランによっては誕生月に最大3000ポイントを申請すればもらえたからだ。
それが、還元上限がアップしているとはいえ「d払いを使わなければ、もらえない特典」になったという事実は、どうしてもマイナスの印象がある。
NTTドコモによると、約70%のユーザーは10年以上ドコモを契約し続けているユーザー。
出典:NTTドコモ
ただし、長期契約者向けには改悪に見えるという指摘に対して、2月25日の記者向け説明会に登壇したNTTドコモ営業戦略部長の大島直樹氏は以下のように反論している。
「『ずっとドコモ特典』はエントリーをすれば、ポイントがもらえる仕組みだった。一方で、エントリーをする行為自体がお客さまから不満の声が上がっていた」
「(+20還元の)最高ランクに到達する方、7割の方が10年以上契約されているドコモにおいては、それほどハードルは高くはないという認識」
当然、説明会では「エントリー行為を不要にして、自動付与にすれば良いのでは」という指摘もあったが、大島氏は「(ポイントをまとめて付与するより)多くの接触機会を持って、日常的にdポイントやd払いを快適に使っていただくように」したい意図があると述べた。
冒頭で述べた通り、ドコモは非通信領域のビジネスに投資をしている最中であり、今回のアップデートはそれに伴うものだ。
また今回のアップデートにも関わっているように、長期契約者はクレジットカード「dカード/dカード GOLD」や、固定回線の「ドコモ光」というモバイル通信以外の範囲で囲い込まれているケースもある。
ドコモの「お客さんの7割が10年以上の契約者」という事実そのものが、こうした新規顧客歓迎に踏み切らせた要因とも言えるのではないか。
(文・小林優多郎)