フォードのマスタング・マッハE。
Tim Levin/Insider
- 電気自動車(EV)は、1回の充電での走行距離が大きく向上してきている。
- ただし、最新の分析によると、1マイルあたりの小売価格では、まだガソリン車に遅れをとっている。
- 近年のトレンドが続くなら、EVは2025年頃にガソリン車に並ぶ可能性があるが、まだ大きな課題が残っている。
10年前、テスラ以外の平均的な電気自動車(EV)では、ニューヨークからフィラデルフィアまでの95マイル(約152km)を充電のために止まることなく走ることはできなかった。
だが現在のEVなら、フィラデルフィアや225マイル(約362km)の距離にあるワシントンD.C.まで走破することが可能だ。 それに対し、ガソリン車は満タンで平均395マイル(約635km)を走行できる。
エコノミストのマイケル・プランテ(Michael Plante)とアナリストのショーン・ホワード(Sean Howard)は、EVとガソリン車を同じ基準で比べるため、小売価格を航続距離で割り、1回の給油・充電で走れる1マイル当たりのコストを算出した。
※プランテとホワードはダラス連邦準備銀行で働いているが、今回のレポートは銀行の見解ではない。
その計算によると、2012年の中間価格帯のEVは、航続距離1マイルあたりのコストが554ドルだったが、2021年は214ドルとなり、半分以下に減った。業界トップの航続距離であるために別で計算したテスラ(Tesla)は、2012年は352ドルで、2021年は173ドルになった。ガソリン車は過去10年間通して104ドル付近で大差なく、テスラを含めてEVはガソリン車に依然として遅れをとっている。
彼らは賢明にもこの指標でEVがガソリン車と並ぶ時期の予測を行っていないが、データからの推定では、最も早くて2025年頃だと思われる。
しかし、この予測は懐疑的に見たほうがいいだろう。
EVメーカーが、航続距離を伸ばして価格を下げ、消費者がガソリン車に期待する水準になるためには、多くの優秀な人材が必要だ。
EVの所有者が悪い買い物をしているわけではない。多くのドライバーは毎日ニューヨークからワシントンD.C.に行くわけではなく、1日30マイル(約48km)を走り、家や職場で何時間か駐車するのが普通だろう。
例えば、テスラのモデル3とフォルクスワーゲンのジェッタを日常的な使用状況で比較するには、アメリカエネルギー省の比較計算システムが役立つ。
それによると、ニューヨークで平均的な通勤をする人は、テスラの充電に年間527ドル使い、ジェッタのガソリンに年間952ドル使うことになる。1マイルあたりに換算すると、テスラは0.22ドルでジェッタの0.27ドルを上回る。
航続距離1マイルあたりの車両コストにも、エネルギー省の計算にも、EV所有者への優遇措置は含まれておらず、それを含めるとさらに総コストは下がるだろう。
より高速な充電器を備えた充電ステーションが各地に設置されるようになれば、航続距離の心配はあまり問題にならなくなるだろうが、電気自動車は我々が慣れ親しんだガソリン車に対抗するために、まだまだ進歩していかなければならない。
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)