ウクライナとロシアの初交渉は“協議継続”で合意、それでもロシア軍は攻撃を止めなかった【ウクライナ侵攻】

ベラルーシのホメリ州で会談するロシアとウクライナの代表団

ベラルーシのホメリ州で会談するロシアとウクライナの代表団

Sergei Kholodilin/BelTA/Handout via REUTERS

ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、両国の代表団は2月28日、ベラルーシ南東部ホメリで初めて交渉のテーブルに向かい合った。両国は近日中に2回目の協議を実施することで合意したと、双方が発表した。だが、ロシア軍の攻撃は続いており、決して楽観視はできない。

ウクライナ側「重要なトピックについて詳細な議論」

インタファクス通信によると、ウクライナ大統領府のミハイル・ポドリャク長官顧問は「ウクライナ領内での停戦と戦闘行為について話し合うことが主な目的だった」とし、「いくつかの優先的課題を定め、一定の解決策が示されている」と述べ、協議内容を持ち帰って検討する姿勢だ。

ウクライナ大統領府は交渉終了後の声明「両当事者は、互いに受け入れ可能な解決策を見出す見込みのある、いくつかの重要なトピックについて詳細な議論を行った」と説明。

その上で、「近日中にウクライナ側とロシア側の再協議が行われる予定」とした。

ロシア側「交渉プロセスを継続することに同意」

これに対し、インタファクス通信は会談後に報道陣の取材に応じやロシア代表団のメジンスキー大統領補佐官が「会談がおよそ5時間に及んだ」と説明。

メジンスキー氏は「あらゆる議題を検討した」とした上で「最も重要なことは、我々は交渉プロセスを継続することに同意したということだ。次の協議はポーランドとベラルーシの国境で数日以内」に開かれると明かした。

また、ロシア代表団のスルツキー下院外交委員長はロシア国営テレビに対し、「交渉があり、当事者同士が互いの意見を聞いたこと」がまずもっての結果とした。その上で「前進が可能ないくつかの重要項目が見つかった」とも述べ、協議内容を検討し次の交渉に望むと見られる。

戦闘なおも続く「ロシア軍が住宅地に一斉に砲撃」とウクライナ軍

ウクライナ・ハルキウで破壊された工場の全景(2022年2月28日)

ウクライナ・ハルキウで破壊された工場の全景(2022年2月28日)

via REUTERS

米・国防総省高官の分析によると、ウクライナに侵攻したロシア軍は27日時点では首都キーウ(ロシア語表記:キエフ)から30キロ地点にとどまっていた。

ところが、28日の分析では「今後数日間でロシア軍はさらに前進し、キーウを包囲しようとするものと思われる」と説明。依然としてロシア軍は複数の方向から首都に迫り、攻撃を継続。キーウ陥落の危機は続いている。

イギリス国防省は28日付けのレポートで「兵站の失敗とウクライナの頑強な抵抗により、ロシアの進軍は挫折を続けている」と分析。

一方で、当初の想定よりも苦戦しているロシア軍について、交渉を見据えて進軍を遅らせていた可能性もあるが、米・国防総省高官は都市に対して「包囲戦術」を実施する兆候があり、民間人への被害が懸念されるとしている。

交渉があった28日も、ロシア軍によるウクライナ各都市への攻撃が伝えられた。

ウクライナ軍参謀本部は2月28日、第二の都市ハルキウで「ロシア軍が住宅地に一斉に砲撃し、民間人が数十人の死亡、数百人が負傷した」と発表。

ウクライナ内相顧問を務めるアントン・ゲラシチェンコ氏も「ハルキウが大規模に砲撃された。数十人が殺され、数百人が負傷した」とFacebookで明らかにした。

SNSにはロシア軍から攻撃を受けた街の様子を撮影したとされる動画が続々と投稿されている。

ロシア側はこれまで交渉の前提に「ウクライナの非軍事化・中立化」を要求。それに加えてプーチン大統領は24日、ウクライナ侵攻を表明した演説の中で「ウクライナ政府はナチ化している」と一方的に主張。侵攻を正当化している。

ロシア側はウクライナの武装解除とNATO加盟阻止に加え、ゼレンスキー政権の打倒も狙っているとみられる。これに対し、侵略を受けているウクライナのゼレンスキー大統領は徹底抗戦を表明。

ウクライナ軍と国民は武器を手に、「英雄的」(ジョンソン英首相)に抵抗している。

※ウクライナの首都はウクライナ語読み「キーウ」(ロシア語読み:キエフ)」と表記します。

(文・吉川慧)

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