2022年3月1日、ウクライナのキエフで攻撃を受けたテレビ塔(ソーシャルメディアから取得した動画を静止画にしたもの)。
Youtube MEDplus/via REUTERS
ウクライナ当局は3月1日、首都キーウ(ロシア語読み:キエフ)のテレビ塔が砲撃を受けたと発表した。ロシア軍による攻撃とみられている。国防省は放送機器が故障し、一時的にテレビ放送が止まると発表している。
隣接地にあるホロコースト追悼施設は「言語道断だ」「ナチスの最大の虐殺地であるバビ・ヤールの跡地を爆撃し、キエフを攻撃し始めたのは、象徴的なことだ」とロシアのプーチン大統領を非難した。
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攻撃を受けたテレビ塔は、第二次世界大戦中にナチス・ドイツによって数万人のユダヤ人が銃殺された渓谷「バビ・ヤール」の追悼記念碑と追悼施設バビ・ヤール・ホロコースト・メモリアル・センター(BYHMC)の敷地と隣接している。
同施設は、ナタン・シャランクシー諮問委員長名で「プーチンが主権を有する民主国家への違法な侵攻を正当化するためにホロコーストをゆがめ、操作しようとしているのは言語道断だ」と声明を発表し、ロシアを非難した。
「主権を持つ民主主義国家への不法な侵略を正当化するためにホロコーストを歪め、操作しようとしているプーチンは言語道断だ。まったくもって忌まわしいことである。彼がナチスの最大の虐殺地であるバビ・ヤールの跡地を爆撃し、キエフを攻撃し始めたのは、象徴的なことだ」
「バビ・ヤール・ホロコースト・メモリアルセンターは、ヨーロッパ最大のホロコーストの集団墓地に建てられており、ソ連が数十年にわたって歴史の真実を抑圧した後、過去の悪を決して繰り返さないために、歴史の記憶を保存する活動を行っている。私たちは、真実が再び戦争の犠牲となることを許してはならない」
「ロシアのプーチン大統領が、ホロコーストに関連する言葉を使ったことを(ウクライナな侵攻を正当化する口実として用いたことを)強く非難し、ウクライナへの侵略を非難する。ロシア軍による戦争犯罪を記録しハーグの国際司法裁判所に提出することを約束する」
ゼレンスキー大統領もTwitterで攻撃への非難をつづった。
「世界のみなさんへ:同じバビ・ヤールの地に砲弾が落とされたとき、もし世界が沈黙し続けるのであれば『二度と繰り返さない』と80年間言い続けてきたことに、何の意味があるのか」
ゼレンスキー氏は「少なくとも5人が殺された」「歴史は繰り返す...」と付け加えた。
この攻撃については、イスラエルのオンライン英字紙「タイムズ・オブ・イスラエル」紙も報道。イスラエルのホロコースト博物館の声明を紹介した。
「ウクライナから流れ来たる、危険にさらされた家から逃げ惑う罪のない市民たちの姿や、バビ・ヤール・ホロコースト・メモリアルセンター付近へのロシアによる攻撃の写真を見た。激しい非難を表明する」
(文・吉川慧)