バイデン大統領「独裁者の侵略に代償を」一般教書演説で:ウクライナ情勢

連邦議会議事堂で一般教書演説にのぞむジョー・バイデン米大統領(2022年3月1日、ワシントンD.C.)

連邦議会議事堂で一般教書演説にのぞむジョー・バイデン米大統領(2022年3月1日、ワシントンD.C.)。

Saul Loeb/Pool via REUTERS

アメリカのバイデン大統領は3月1日夜(日本時間2日午前)、上下両院合同会議で政権の基本方針を示す一般教書演説に臨んだ。拍手で迎えられたバイデン氏は、冒頭のおよそ12分間でロシアのウクライナ侵略に言及。「独裁者の侵略に代償を」とロシアのプーチン大統領を非難した。

バイデン氏は、ロシア軍のウクライナ侵攻が「計画的であり、(ウクライナからの)挑発を受けていない侵攻だった」「外交を繰り返し拒否した」と非難。「自由を愛する国々」と立ち向かうと表明した。

また、「(プーチン大統領は)ウクライナに乗り込めば世界が転がり込むと考えていた」「しかし想像を絶する強さに直面した。ウクライナの人々だ」と、ロシア軍と戦うウクライナ国民を称賛した。


議場にはウクライナ大使の姿、出席者たちは国旗をふった

マルカロワ駐米ウクライナ大使(左)とファーストレディーのジル・バイデン氏。

マルカロワ駐米ウクライナ大使(左)とファーストレディーのジル・バイデン氏。

REUTERS/Evelyn Hockstein/Pool

バイデン氏は、ウクライナのゼレンスキー大統領が1日の欧州議会での演説で述べた「光は闇に打ち勝つだろう」というワンフレーズを紹介。ウクライナ市民が、身を挺して戦車に立ち向かったと勇気を讃えた。

会場には駐米ウクライナ大使の姿も。バイデン氏が紹介すると、上下両院合同会議の出席者らがウクライナ国旗の手旗をふった。青や黄のウクライナ国旗の色をあしらった服を身にまとう人もいた。


「ロシアの経済力を奪う」「オリガルヒの罪を追及する」

連邦議会議事堂で一般教書演説にのぞむジョー・バイデン米大統領(2022年3月1日、ワシントンD.C.)

連邦議会議事堂で一般教書演説にのぞむジョー・バイデン米大統領(2022年3月1日、ワシントンD.C.)。

Jim Lo Scalzo/Pool via REUTERS

演説では、同盟国・友好国とともに実施するロシアへの金融・経済制裁が、意味のあるものだと強調した。

ロシアの中央銀行の外貨準備を制限したことでルーブルの買い支えはできず、経済力を奪い、ロシアの軍事力にダメージを与えると述べた。ロシア機の領空への立ち入りも禁止すると表明した。

さらにプーチン氏に近い新興財閥(オリガルヒ)や実業家が不正な利益を得ているとし、司法省の専任チームが罪を追及すると表明した。

「ヨーロッパの同盟国とともに、彼らのヨット、豪華なアパート、プライベートジェット機を見つけ出し、押収している」

ウクライナへの派兵は改めて否定

連邦議会議事堂で一般教書演説にのぞむジョー・バイデン米大統領(2022年3月1日、ワシントンD.C.)

連邦議会議事堂で一般教書演説にのぞむジョー・バイデン米大統領(2022年3月1日、ワシントンD.C.)。

Shawn Thew/Pool via REUTERS

バイデン大統領は「我々は同盟国とともに、自由のための戦いでウクライナ人を支援している」「ウクライナの人々が国を守り、その苦しみを和らげるために、今後も支援を続けていく」と、ウクライナへの精神的・経済的な支援を強調した。

一方で、ウクライナへの派兵は改めて否定。東欧への米軍派兵はウクライナで戦うためではなくNATO同盟国を守るためだと述べた。

バイデン氏はロシアが演習名目でウクライナとの国境付近に軍を集結させていた段階から、ウクライナがNATOの同盟国でないことから、一貫して同国への派兵は否定している。

バイデン氏は2月26日に公開されたインタビューで「選択肢は2つ。ロシアとの第三次世界大戦に突入するか、ロシアに国際法違反の代償を払わせるか。そのどちらかだ」と語っている。

ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、NATO(北大西洋条約機構)は2月25日、NATO条約第5条(集団防衛義務)に基づき、加盟国で編成する即応部隊を東ヨーロッパに派遣することを決めた。アメリカ国防総省は1万2000人の派兵準備を表明。NATO第5条による即応部隊の派遣は初。カービー報道官はこれを「歴史的」と評した。

一般教書演説の中で、バイデン大統領はこうも述べた。

「この時代の歴史は、こう記されるだろう。『プーチンのウクライナに対する戦争はロシアを弱体化させ、世界の他の国々を強くした』と」

(文・吉川慧)

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