投票結果が示されたモニター。
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国連総会緊急特別会合は3月2日(日本時間3日未明)、ロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議を賛成多数で採択した。
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193カ国中、賛成は141カ国。反対はベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、ロシア、シリアの5カ国、棄権は中国やインドなど35カ国だった。
投票結果が会場のモニターに表示されると、議場からは拍手が沸き起こった。
拍手が沸いた議場。
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ウクライナの国連代表団。
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安全保障理事会(安保理)の決議とは異なり、総会決議に法的拘束力は無い。
ただ、国連総会がロシアの一方的な侵略を許さず、ウクライナを支持するという「世界の意思」を非難決議への圧倒的な賛成で示したことは、国際社会でのロシアの孤立を浮き彫りにした。
アメリカの国連代表団。
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議場から拍手が起こる中でのロシアのネベンジャ国連大使。
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「ウクライナに対する侵攻」と名付けられた決議は、日本を含む96カ国が共同で提案。ロシアのウクライナ侵攻について「最も強い言葉で遺憾の意を示す」と明記し、ウクライナ領域から直ちに無条件で撤退するように求めた。
また、プーチン大統領が決定した核を含む戦力の準備態勢強化も非難。侵攻の口実の一つとなった自称「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を独立国家として承認したことも、国連憲章に違反しウクライナの主権を侵害するとして非難した。
ベラルーシについても「違法な武力行使へのベラルーシの関与」を「遺憾」とし、国際的義務を遵守するよう求めた。
国連総会緊急特別会合とは
国連総会緊急特別会合とは、「国際平和への脅威・平和の破壊および侵略行為」が存在すると思われるにも関わらず、国連安全保障理事会(安保理)が常任理事国の5大国の拒否権の行使によって機能しない場合、安保理に代わって行動するために国連総会が開く会合だ。
開催には「国際社会の平和と安全の維持」が困難になったとき、安保理の決議による要請か国連加盟国の半数の要請が必要となる。緊急特別会合の要請手続きに関する採決では、安保理常任理事国の5大国も拒否権を行使できない。
この手続きを定めた総会決議は「平和のための結集」決議と呼ばれ、1950年11月に採択された。
当時は旧ソ連が北朝鮮を援護するため安保理で拒否権を多数発動。安保理が機能不全に陥ったことが背景にあった。
初の国連総会緊急特別会合は、第二次中東戦争(スエズ戦争、1956〜1957年)のときで、国連PKO(平和維持活動)である第一次国連緊急軍(UNEF 1)が初めて作られた。
「平和の破壊あるいは侵略行為」が発生した場合には「国際の平和と安全を維持または回復するために必要」とみなせば、総会は2/3の多数決で武力行使も含む集団安全保障措置を加盟国に勧告することも可能だ。
ただ、安保理決議と違い総会決議に法的拘束力はない。あくまで国連としての意思を示す意味合いが強い。
安保理の要請による国連総会緊急特別会合は、1982年のイスラエルによる「レバノン侵攻」以来となる。
UPDATE:棄権国、意思を示さなかった国の一覧を追記しました。(2022/03/03 15:46)
(文・吉川慧)