BALMUDA PhoneのスケジュールアプリがGoogle Playで公開された。配信されたアプリはBALMUDA Phoneと変わらないバージョンとなる。
撮影:小林優多郎
バルミューダは3月3日、スマートフォン「BALMUDA Phone」向けのスケジュール管理アプリ「BALMUDA Scheduler」をGoogle Playストアで無料公開した。Android 9以降を搭載するスマホで利用できる。
バルミューダはこれまで、BALMUDA Schedulerを含むオリジナルアプリは「BALMUDA Phone」でのみ利用可能としてきた。
その方針を大きく転換し、アプリの一般公開に踏み切ったのはなぜか。創業者の寺尾玄社長に独占インタビューから真意を探る。
「反対された」それでも独自アプリを公開した理由
バルミューダ創業者の寺尾玄社長。
撮影:小林優多郎
── 方針転換した背景には何があったのでしょうか。
寺尾:シンプルに、自分で毎日使っていてすごくいいと思ったので、もっと多くの人に使っていただきたいと考えました。
いい映画を観たらほかの人に勧めたくなるじゃないですか。それと同じです。ただ周りからは反対されましたけどね。
「BALMUDA Phone」だけの体験は、確かに1つ減ってしまうかもしれない。けれどそのリスクよりも、「リコメンドの想い」の方が勝ちました。
「BALMUDA Scheduler」は、グーグルやOutlook(マイクロソフト)のカレンダーと同期可能。「BALMUDA Phone」のほか、「Pixel 6」と「Galaxy Z Fold3 5G」の2機種で動作確認されている。iOSについては今のところ提供の予定はないが、検討していくとのこと。
撮影:小林優多郎
一方で「BALMUDA Phone」や(新たに立ち上げたブランドである)BALMUDA Technologiesの考え方や体験を、アプリという形で多くの人に知っていただけるのはすごいことだと思っています。
我々の製品は体験していただいて初めてその真価が伝わる。でも、家電は実際に買っていただかないと、体験していただけないですから。
──「BALMUDA Scheduler」はどのようなアプリですか?
寺尾:1年から1日までピンチ操作でシームレスに切り替えられるスケジューラーです。
ピンチ操作ってタッチパネル以上に、すごい発明じゃないかと思うんです。
スクロールでは位置を変えられるけど、ピンチでは尺度を変えられる。尺度を変えるって、スマートフォンの小さな画面には1番効く操作だなと。そう思った時頭に浮かんだのが、ピンチ操作ができるスケジューラーでした。
寺尾社長の「BALMUDA Phone」のダッシュボード。ブラウザーに次いで最も頻繁に利用するアプリが「BALMUDA Scheduler」だという(統計情報はインタビュー当日のみのもの)。
撮影:小林優多郎
予定を俯瞰して見られるので、実際に私自身の会議の見直しにも役立っています。
今日から明日、明日から明後日と時間が連続しているので、たとえば翌朝の予定なども意識しながら、飲み会の予定を入れられる。生活必需品のアプリになっています。
私たちが「BALMUDA Phone」で提案したのは、まさにこの生活必需品として最も良いスマートフォンの体験です。
片手操作しやすいサイズや形もそうですが、スマートフォンの体験は6:4で(ハードより)アプリだと思っているので、アプリとの組み合わせで、毎日の生活がより良くなる体験をお届けしたい。
撮影:小林優多郎
今回公開するのはアプリだけ。BALMUDA Phoneは、やはりハードウェアも合わせた上での完成形ではありますが、その一部でも知っていただければという思いです。
──「BALMUDA Phone」にはメモ、時計、電卓などのオリジナルアプリがインストールされています。今後これらも広く公開されるのでしょうか?
寺尾:今のところ他のアプリについては考えていません。
ですが、「BALMUDA Phone」向けには今あるアプリのアップデートと並行して、アプリの横展開にも取り組んでいます。2022年中にあと2本くらい、新しい特徴を持ったアプリを出したいと思っています。
バルミューダの強みは常識を疑ってかかれること。すでに「BALMUDA Scheduler」を超えるアプリのアイデアもあり、企画、デザイン、実装のチームやパートナーと、開発を進めています。
バルミューダスマホはなぜ「逆風」を受けたのか
BALMUDA Phoneの販売は決して順風満帆じゃない。
撮影:小林優多郎
──「BALMUDA Phone」については、金額や性能面などで厳しい意見もあります。現在の販売状況を教えてください。
寺尾:ソフトバンクさんの大幅な割引き施策もあって、そこから少し風向きが変わってきた、逆風は止んだイメージです。追い風はまだこれからだと思いますが、実際に2月以降、販売台数も大きく伸びています。
これまで、アップデートで製品の価値を高められるように開発を継続するのはもちろん、説明が足りなかったところを補う努力も続けてきました。
一方でオンライン等でいち早く購入してくださったお客様にも、何らかの恩返しをしたいと思っています。
「BALMUDA Phone」を使っていただける人の数が増えれば、それだけ多くのフィードバックもいただけますし、アップデートの原資もできる。これからさらにより良い体験を提供していくことで、恩返しをしていけるのではないかと考えています。
割引施策はあくまでソフトバンクの取り組みとしつつ、いち早くBALMUDA Phoneを購入したユーザーには「恩返しをしたい」と語る寺尾氏。
撮影:小林優多郎
── 厳しい意見が寄せられていることを、どう受け止めていますか?
寺尾:18年間ものづくりをしてきて、これまでも倒れそうになったことは何度もありました。ただここまでネガティブな意見をいただいたのは初めてでした。
自分の中で咀嚼(そしゃく)するまでに少し時間がかかりました。いろいろな人から意見をいただきましたが、逆に言えばそれだけ、バルミューダに大きな期待を寄せていただいてたのだと腹落ちしました。
私たちが今できるベストを提案できたと思っていますが、バルミューダにはもっとすごいもの、かっこいいものができると期待されている。簡単ではありませんが、道は必ず続いていると思います。
「家電だけに注力した方がいいとも言われた」
BALMUDA Phoneの分解モデル。
撮影:小林優多郎
── BALMUDA Technologiesの今後は。
寺尾:家電のバルミューダに対してBALMUDA Technologiesでは、インターネットにつながる技術集積度の高い商品群を手がけていく予定です。
IT機器だけでもなくて、ハードウェアとアプリ、サービスも含めて提供していきたいと考えています。
言葉にするとちょっとおこがましいですが、どちらのブランドも目指すのは人生の役に立つこと。人生は毎年の、毎年は毎日の積み重ねなので、その毎日の1つ1つの体験がより良いものになるようなアイデアやクリエーションを提供していきます。
BALMUDA Technologiesでは「インターネットにつながる」製品やサービスを展開していくとする寺尾氏。
撮影:小林優多郎
スマートフォンでは、ハードウェアやOSをパートナーと協業しています。ですが実は家電も、私たちが1から部品をつくっているわけではありません。いかに選んで組み合わせて新しい価値を創造するか。どちらも考え方は同じです。
(一部の人からは)家電だけに注力した方がいいとも言われました。確かにスマートフォンはライフサイクルが短い分、スピードも速いし、キーデバイスのスケジュールにこちらの開発スケジュールが引っ張られたりもする。
大変ですが、こうした困難を1つ1つ超えていくことで、新たな可能性が生まれると思っています。
すでに次のスマートフォンにも取りかかっています。ハードウェアとアプリのかけ算で、生活必需品としてのスマートフォンをさらに磨き上げていきたい。
スマートフォンだけでなく、ディスプレイサイズが異なるものや、ディスプレイのないものもロードマップを作成し、デザインを始めています。
複数の製品がそろって初めて、BALMUDA Technologiesの世界感が表現できるので、ここからは行動で見せていくしかないと考えています。