三菱電機×イオンモールのロボット実証実験は、人手不足を救う特効薬となるか

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建設、サービス、製造、その他さまざまな職場で人手不足が問題視されている。求人広告を出しても人手が集まらず、仕方がなく今いるスタッフで多くの業務をこなそうとして関係者の多くが疲弊し、より過酷な環境へと突き進むスパイラルに陥ることも。

また近年は、長く続いているコロナ禍によって私たちの生活様式が一変。マスクの装着、アルコールを用いた消毒、定期的な体温チェック。オフィスや自宅だけではない。人と人が接触する現場においては自らの手元だけではなく、周囲の殺菌消毒などのフローが必要となった。

人手不足と感染予防対策。さまざまな業務の現場に共通するこの2つの課題に取り組んでいるのが三菱電機だ。

商業施設における搬送ロボにかけられる期待

一般ユーザーからすると、三菱電機はエアコン、キッチン家電や生活家電といった機器のメーカーという印象がある。しかしこれらコンシューマー用の商品とは別に、ビル管理システムやエレベーター、産業・工場ロボット、発電システム、人工衛星など、さまざまな分野で人々の生活を支える機器やサービスを提供している。

その三菱電機が新たなチャレンジを始めた。大型ショッピングモールを管理・運営するイオンモールと共同で、愛知県の「イオンモール常滑」において、自律走行搬送ロボットを使った商品配送の実証実験を行っているのだ。

三菱電機 自動車機器事業本部 戦略事業開拓室 モビリティイノベーション推進部 五十嵐啓太氏は次のように語る。

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三菱電機 自動車機器事業本部 戦略事業開拓室 モビリティイノベーション推進部 五十嵐啓太(いからし・けいた)氏

「近年あらゆる場所で労働力不足が叫ばれておりますが、特にeコマース市場の拡大に伴って、搬送需要が増加していると感じます。また昨今、新型コロナウィルスの影響によって、非接触による物品の受け渡しといった需要も生まれており、これらの需要増加に伴って搬送ロボットの活躍できるフィールドは広がっているのではないかと感じています。」(三菱電機・五十嵐氏)

イオンモール常滑の営業マネージャー兼インバウンド推進リーダー 城下美沙子氏も「私たちの課題としても、人手不足は切実。そうしたなかで現在の従業員の方の負担を減らしていきたいという思いがあります。また、お客様もコロナ禍でニューノーマルな生活様式というものを意識される中で非接触型の商品提供の可能性を探っていました。搬送ロボットはその2点を解決できる一つの策として期待しているところです」と狙いを語った。

お客さんにも、ショップのスタッフからも好意的に受け入れられた

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今回の実証実験ではアメリカのCartken社の搬送ロボットを使用し、スターバックスの商品を屋内外の4つある配達場所のうちのいずれかで受け取ることができる。この搬送ロボットは段差の乗り越えや点字ブロックのような凸凹がある場所でもスムースに走れる車輪構造を持ち、また遠隔による見守り機能も備えている。

「走行中は常にオペレータが監視を行い、イオンモールさまのような日々多くの方が利用される施設におかれましても、周辺環境に応じて臨機応変に走行サポートを実施しています」(三菱電機・五十嵐氏)

搬送ロボットはすでにさまざまな工場や倉庫内で使われているが、そうした場所ではあらかじめ搬送ロボットが走るレーンが決められており、運用するためのノウハウも蓄積されている。しかし今回の実証実験で搬送ロボットが通るのは店内。お客さんが歩いている横を走らせている。

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「特別な環境を除き、私たち人間のそばでロボットが働くということは、まだ当たり前ではない世の中です。ゆえに反響は気になっていたのですが、実際に実証実験をはじめると、Cartken社のロボットの高い自律走行性能も相まって、イオンモールさまからは無事に走行できていることで安心していただき、また搬送ロボットをお使いいただいているショップのスタッフの方からはシンプルなオペレーションで分かりやすいとのコメントをいただいています。またお客さま、特にお子さまからはかわいいと感想をいただくこともあります」(三菱電機・五十嵐氏)

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イオンモール常滑 営業マネージャー兼インバウンド推進リーダー 城下美沙子(しろした・みさこ)氏

「お子さま、大人の方問わず、幅広い年齢層のお客さまに、とても興味を持っていただいています。休日ともなると、搬送ロボットの後ろを追いかけて歩いていくお子さまもいらっしゃるんですよ」(イオンモール・城下氏)

そう聞くと、興味本位で近づきすぎてしまう子どももいるのではと考えるが、もし搬送ロボットがうまく移動できない距離にまで近づいてしまったときはどうなるのか。

「興味を持ったお子さまが近づいてきたときは、搬送ロボットに備え付けられたカメラで検知をして、必要に応じてスピードダウン、またはその場で停止する設定になっています。少し離れてくれたときにまたゆっくり進むというかたちで、安全は十分担保して走行しています」(三菱電機・五十嵐氏)

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ショッピングモールという場所ゆえに、訪れる人の行動を邪魔するものであってはならないし、人の安全を第一に考えなくてはならない。そのためこの実証実験で使われているロボットを運用するに当たり、イオンモール側からは2つの要望があったという。

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「商品受け取り時に上蓋から手を離した場合でも、ゆっくりと閉まるようにしてほしい、というご要望をいただきました。こちらのご要望に対しては、上蓋へダンバーを取り付け、蓋が閉まるスピードを調整しました。また走行中に周囲への注意喚起をしてほしい、というご要望もいただきましたが、走行中に音楽を流すようカスタマイズをし、お客様のご要望にあわせて調整しました」(三菱電機・五十嵐氏)

ビル管理システムと連携して複数フロアをまたいで運べる

MELDY

提供:三菱電機

三菱電機は自身でも多用途搬送サービスロボットシステム「MELDY」を開発している。こちらはCartken社の搬送ロボットよりも大きい。

2021年12月に藤田医科大学病院(愛知県豊明市)において、薬剤部門から関連部門へ複数のフロアをまたいでの薬剤搬送実証実験を行った。診療だけではなく研究や教育、研修なども行う大きな病院では、カルテや薬剤の搬送を頻繁に行う必要があるが、ここにかかる人的コストは多大なものだ。コロナ禍となって病院内の業務負荷がさらに高まっているなか、搬送の省力化を実現するための特効薬になりえる。

「我々としては、ロボットを単体で提供するのではなくて、搬送ロボットとインフラ設備側との連携を軸としたソリューションを提供し、様々なお困りごとを抱えるお客さまへ役立てていきたいと考えております」(三菱電機・五十嵐氏)

三菱電機はビル管理システムやエレベーター開発にも長けたメーカー。複数のフロアを移動するとなると、搬送ロボットがエレベーターを呼び、エレベーターに乗り、目的階を指定して移動するシステムが必要になるが、三菱電機はすでにそのシステムを手掛けている。

エレベーターや入退室管理システムとロボットが連携することで、施設内での縦横移動が可能となります。施設内でのシームレスな移動が可能となることで、ロボットが活躍できるフィールドがより広がります」(三菱電機・五十嵐氏)

三菱電機が目指すロボット事業の未来

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イオンモール常滑店に話を戻そう。実証実験を続けたところ、コミュニケーションの課題が見えてきたという。

「搬送需要と非接触需要の増加によって、搬送ロボットが活躍できるフィールドは広がってきていますが、現状得られた知見として、人間の配達員と同じように柔軟なコミュニケーションが取れると、よりよくなると感じています。多くの人々の生活に浸透させていくためには、ロボット配送の理想のかたちをお客さまとともに見つけていく必要があります」(三菱電機・五十嵐氏)

しかし、実証実験の手応えは十分に感じている。

「三菱電機は多様化する社会課題の解決に向けてこれまで培ってきた技術の強化と、事業モデルの変革により、ライフ、インダストリー、インフラ、モビリティという4つの領域でソリューションを提供することを経営目標に掲げています。搬送ロボットもモビリティという枠組みで新規事業の取り組みを進めてきましたが、今回の実証実験を通じて、これら4つ全ての領域で価値を提供できる可能性があると感じています」(三菱電機・五十嵐氏)

法整備が進めば、今後は公道を使ったラストワンマイルの搬送も、ロボットが担う可能性がある。

「我々が暮らしを続ける中で、外出を伴う移動は欠かすことはできませんが、移動が困難な方・シーン・地域において、例えば配達員に代わってロボットが配送を担うことになれば、住民の方、配達員の双方にお役に立てるはずです」(三菱電機・五十嵐氏)

ロボット単体を販売するのではなく、誰もが扱いやすいと思えるロボットの運用システムや、状況に応じたカスタマイズ・チューニングなども含めて提案していくことは、さまざまなシーンにおける目の前の課題を解決できる手段となっていくはずだ。


三菱電機とイオンモールによる実証実験のプレスリリースはこちら

三菱電機についての詳細はこちら

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