ある環境団体が大手スーパーのクローガーを訴えた。
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- ある非営利環境団体が、食料品に含まれる鉛に関して、スーパーマーケット大手のクローガーを提訴した。
- この訴訟の対象となった商品には、同社のプライベートブランドのサラダキット、冷凍果物、ベーグルなどが含まれている。
- この非営利団体は以前、2021年にトレーダー・ジョーズを同様の訴訟で訴えている。
ある非営利環境団体が、食料品チェーン大手クローガー(Kroger)のプライベートブランド商品のホウレンソウとベーコンのサラダキット、冷凍フルーツ、スライス済みベーグルなどに高濃度の鉛が含まれているとして提訴した。今回の訴訟は、アメリカの小売店で販売されている商品の鉛の濃度をめぐる、小売業者と環境保護活動家・弁護士の間で起こった衝突の最新の事例だ。
環境弁護士のヴィニート・ダビー(Vineet Dubey)は2022年3月7日、エコロジカル・アライアンス(Ecological Alliance)の代理として、カリフォルニア州ロサンゼルス郡上級裁判所にクローガーを提訴した。クローガーは、Insiderのコメント要請にはまだ応じておらず、エコロジー・アライアンスの主張に対する反論もまだ行っていない。
ダビー弁護士は訴状で、エコロジカル・アライアンスは「独立した食品検査機関」に委託し、クローガ―の商品の鉛濃度を多数検査したと述べている。それによると、クローガーの「ほうれん草とベーコンのサラダキット1人前」から70.1マイクログラムの鉛が検出されたとし、カルフォルニア州が定める「1日の最大暴露量」の0.5マイクログラムを大幅に超えていたという。訴訟の対象となった商品は、クローガーのプライベートブランド「Simple Truth」「Private Selection」のいずれかに属するものだった。エコロジカル・アライアンスによると、同社の「甘い豆とニンジンの缶詰」、「クラムディリシャス・グラハム・クラッカーズ」、「シナモン・レーズン・プレスライス・ベーグル」や、シンプル・トゥルースの「オーガニック黄桃と梨のダイス」、「オーガニック・フローズン・ベリー・メドレー」などからも、カリフォルニア州が指定する最大暴露量の少なくとも13倍の鉛が検出されたという。
ダビー弁護士はInsiderに宛てたコメントで、クローガ-は「直ちにこれらの商品を棚から取り除き、新たな品質管理を行うべき」だと述べている。この訴訟では、同社に対して、カリフォルニア州内の店舗から製品を回収すること、製品に含まれるとされる鉛の濃度を下げること、パッケージに警告を追加すること、それぞれの違反につき最高2500ドル(約29万円)の「制裁金」を支払うことを求めている。
ダビー弁護士は訴状で、エコロジカル・アライアンスは2021年6月から10月にかけて、クローガー、カリフォルニア州法務長官、カリフォルニア州の各都市の弁護士に数回警告を発したと述べている。また、これらの公務員は「クローガーに対する訴因の調査を開始せず、起訴することはなかった」としている。
この訴訟は、アメリカの長年公衆衛生上の懸念である鉛をめぐる不安に触れたものだ。アメリカ疾病予防管理センター(CDC )は、水、汚染された粉塵、鉛塗料を介し重金属にさらされることは、小児の知的障害、成人の不妊症および神経障害に関連していると考えている。CDCは「子どもにとって安全な血中鉛レベルはない」とし、「血中の鉛が低レベルであっても、学習、注意力、学業成績に影響を与えることが示されている」と指摘している。2021年のある研究で、アメリカの約半数の子どもの血液中に高濃度の鉛が含まれていることが判明している。
クローガーが製品の鉛含有量に関する疑惑で非難を浴びるのは今回が初めてではない。日刊紙マイアミ・ヘラルド(Miami Herald)によると、クローガーなどの企業は以前、鉛の含有量の懸念から、食肉製品を回収したことがあるという。他の大手小売企業も、近年は監視の目を向けられている。2018年、ニューヨーク州司法長官は、ウォルマート(Walmart)とターゲット(Target)が鉛に汚染されたおもちゃを販売したとして訴訟を起こした。
またダビーが大手小売企業と関わるのも初めてのことではない。2021年、彼は食料品チェーンのトレーダー・ジョーズ(Trader Joe's)を相手に、エコロジカル・アライアンスの代理として同様の訴訟を起こした。この訴訟は現在も進行中で、2022年3月21日に訴訟管理会議が予定されている。エコロジカル・アライアンス自体も過去に反発を受けたことがある。2020年、ベスト・ブランズ・コンシューマー・プロダクツ(Best Brands Consumer Products)という企業は、同社のファニー・パック(腰回りに装着するバッグ)が安全でないという主張をめぐってエコロジカル・アライアンスを訴えた。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)