PMS(月経前症候群)や更年期の諸症状が原因で、退職、昇進辞退をする女性たちがいる。
こうした不調は「自分で対処すべき」「会社には相談できない」と考え、1人で悩みを抱えているのだ。
PMSや更年期症状で退職、昇進辞退も
PMSや更年期の症状は、女性のキャリアに大きな影を落としている。
出典:働く女性の健康意識調査(大塚製薬)
調査したのは大塚製薬だ。2021年9月、全国の20歳から59歳の正社員・公務員として働く女性2万人のうち、20歳から44歳に「PMS症状」、45歳から59歳には「更年期症状」についてたずねた。
PMS、更年期ともに症状を自覚している女性はぞれぞれ49%、50%と約半数を占める。
そのうち「PMSや更年期の症状によって日常生活に支障が出ている」と回答した女性たちに、キャリアとの関連をたずねた結果を以下に紹介する。
PMS症状のせいで「仕事を辞めようと思ったことがある」と回答した女性は41%にのぼり、実際に仕事を辞めた女性も17%いた。
更年期の症状も同様で、仕事を辞めることを検討した女性は45%、仕事を辞めた女性は6%だった。
出典:働く女性の健康意識調査(大塚製薬)
これらは昇進にも影響しており、過去に管理職(課長職相当以上)への昇進の機会があった女性のうち、37%がPMSの症状が原因で昇進を辞退するか悩んでおり、実際に昇進を辞退したという人も18%いた。
同様に更年期の症状を理由に昇進辞退を検討した女性は24%、昇進を辞退した女性は16%だった。
1人で抱え込ませず、企業課題として向き合って
PMSや更年期の症状で退職、昇進を辞退するほど追い込まれても、誰にも相談できない現状がある(写真はイメージです)。
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PMSや更年期による症状で退職や昇進を辞退するほど追い込まれる一方で、PMSでは5割超、更年期症状では4割が「会社では誰にも相談できない/したくない」と、1人で悩みを抱え込んでいることも分かった。
「会社内での責任が上がるほど人に相談できない」と考える女性も多い。
5割超の女性が、こうした不調は「自分で対処することが重要」だと考えていることが、その一因だろう。
一方で、PMSまたは更年期症状の対策は「企業が取り組むべき」だと回答した女性も、それぞれ6割、4割を占める。
調査を担当した、大塚製薬「女性の健康推進プロジェクト」の担当者は言う。
「女性活躍を妨げる要因の一つとして、PMSや更年期の諸症状などの女性の健康課題が大きく影響していることが浮かびあがってきました。これらの諸症状とうまく付きあっていくには、正しい知識の習得や一般的なセルフケアに加えて、医療機関を利用し、自身の健康状態を把握して対処することが大切です。さらに今回の調査から見えてきたように、個人の対処だけに任せず、企業課題として取り組むことが求められています」
健康課題の解消なくして、女性活躍施策の進展は望めない。国は、企業は、何ができるのか。当事者だけの問題にせず、社会全体で向き合うべきだろう。
(文・竹下郁子)