小紅書はインフルエンサー・マーケティングとeコマースへのアプローチが巧みだ、と専門家。蘇州イノベーション・フェアで小紅書やTikTokのライブ配信を行う出展者。中国江蘇省蘇州市で。2020年8月1日。
Costfoto/Future Publishing via Getty Images
- インフルエンサーとショッピングを融合させた「小紅書」が中国のZ世代に人気だ。
- ユーザーは2億人で、その多くは中国人だという。
- 小紅書は中国国外への拡大のための人材採用を行っている。
毎月Z世代の女性を中心とした推定2億人のユーザーが、「小さな赤い本」と名付けられたアプリを開き、美容のヒントやお勧めの旅行、夕飯の献立のアドバイスなどを探し求めている。このアプリでは投稿を見たり、アイテムをWeChat PayやAlipayで購入したりすることができる。
このアプリ 「小紅書」が、中国における買い物のルールを塗り替えている。
Sensor Towerのデータによると、小紅書のユーザーは主に若く裕福な女性で、これまでに2300万ドル(約27億円)を同アプリで消費しているという。2022年2月は、約110万ドル(1億3000万円)が消費され、前年比44%増だった。小紅書が世界で1億6700万回ダウンロードされたという。なお、これには中国でのAndroid端末によるダウンロード数は含まれていない。
「インスタグラム(Instagram)とEtsy、アマゾン(Amazon)が一緒になったようなもの」と、Red Digital Chinaの共同創業者、サラ・ヤム(Sarah Yam)はInsiderに語った。
TikTokと同様に、小紅書も国外にユーザーを広げていきたい考えだという。同社は東南アジア市場を皮切りに、このアプリを世界で公開するためのスタッフの採用を行っている。
このアプリの機能は、インスタグラムや、TikTok、Pinterestを使ったことのある人には馴染みのあるものだ。
小紅書(左)とピンタレスト(右)のユーザー・インターフェースの比較。
Weilun Soon from Xiaohongshu and Pinterest
だが、すべては商品を購入するよう仕向けるためのものだ。ライブ配信から画像や動画のギャラリーまで、インフルエンサーや独立系レーベル、ブロガーが製品やサービス、体験の購入を勧めている。
アプリの仕組み
アプリを立ち上げると、新たなコンテンツと出会うための3つの方法が示される。
「Follow(フォロー)」は、自分がフォローしているアカウントの最新の投稿、「Explore(探す)」は自分の閲覧履歴に基づきいてキュレーションされた投稿、「Nearby(周辺)」は地理的に近いクリエイターの投稿を表示している。
小紅書を始めたばかりのフリースタイル・スキーのアイリーン・グー(谷愛凌、Eileen Gu)のフィードを見てみると、ほとんどが自身の競技中のクリップだが、グーの顔が映り、化粧台の前でユーザーに話しかけている動画がある。投稿をクリックすると、グーが中国語で話し出す。グーが書いたものと思われる字幕には、メイクするのに「パーフェクトなツール」を見つけたとある。そして、いくつかのテキストがポップアップし、Kohlerというブランド名が表示される。この投稿が、化粧台の広告だということが分かった。だが、コメントでKohlerのブランドをタグ付けしていることを除けば、有料広告であることを示すものは何もない。
ユーザーの1人は、次のようにコメントしている。
「あなたのルックスは、中国中の憧れ」
この投稿をクリックするとKohlerの小紅書オフィシャル・ストアのページに飛ぶ。
「Explore」タブをクリックすると、ブランドが製品に関するライブ配信を行っているのを見ることができる。
北京を拠点とするファッション・レーベルを宣伝するある投稿は、白と黒のチェックのワンピースの良さをアピールしている。背景には、同じワンピースを購入したという他の視聴者のコメントが現れ、スクリーン下部に挿入された画像には、429元(約8000円)と339元(約6300円)という2つの価格が表示されている。
この画像をクリックすると、さらに多くの写真と購入ボタンが表示され、2つの価格の安い方は小紅書限定の特別価格であるという注意書きが現れるという仕組みだ。
この視聴から購入までのインテグレーションは、小紅書が長い間培ってきたものであり、現在の他のeコマースアプリやソーシャルメディア・アプリでは完成に至っていないものだと専門家らはInsiderに語った。
ロジックはインスタグラムに似ている。買い物客は個人の宣伝を信用する傾向がある。セレブであれインフルエンサーであれ、それは一度も会ったことのない人たちで、偽物や粗悪品が溢れているにもかかわらず。
小紅書が中国のオンラインeコマースに占める割合は推定15%だと、市場調査会社Consumer Search Groupのサイモン・タイ(Simon Tye)は伝えている。
小紅書は今後、国外の視聴者にアピールしたい考えで、インスタグラムなどのアメリカの有名なサービスに挑もうとしている。
(翻訳:Ito Yasuko、編集:Toshihiko Inoue)