このTwitterボットは、企業の国際女性デーを祝うメッセージをリツイートし、その男女賃金格差を公開している。
@PayGapApp/Twitter
- あるTwitterのボットが、国際女性デーを祝う企業の男女賃金格差をツイートしている。
- このことを知り、メッセージを削除した企業もある。
- 開発者は、言葉と実際の行動の違いに注意を促したかったという。
フランチェスカ・ローソン(Francesca Lawson)は、ソフトウェア開発者のアリ・フェンサム(Ali Fensome)と作ったTwitterボットが、1日で数万人のフォロワーを獲得するとは思ってもいなかった。彼らのボットは、プロフィールに記載されている1つのシンプルなタスクを実行するために作られた。
「雇用主の皆さん、もしあなたが国際女性デーについてツイートしたら、私はあなたの男女間賃金格差をリツイートする」
国際女性デーの3月8日、Gender Pay Gap Botは女性社員がいることや女性だけの会議を開催していることを自画自賛する企業のツイートを引用ツイートしている。それらのツイートには女性スタッフの写真も一緒に掲載されることがよくある。問題は、このような企業の言葉とデータ、そして給与の公平性が一致しないことだとローソンは言う。
このボットが、国際女性デーに賃金格差をツイートし始めると、瞬く間に拡散し、特に賃金格差が大きい場合には、数百の「いいね」やリツイートを集めた。例えば、法律事務所のShearman & Sterlingでは、「女性の時給の中央値は、男性よりも52%低い」とボットは書いている。
ローソンはInsiderに「問題が存在しないことになってしまえば、解決するための手段を講じることはできない」と語った。
「問題を認識することこそが、未来を考え、それをどのように解決するかを実際に考える第一歩となる」
フリーランスのコピーライター兼ソーシャルメディア・マネージャーであるローソンは、自身の経験をもとにこのボットを思いついた。以前勤めていた会社では、同僚から「いかに社員がエンパワーメントされ、多様性に富んでいるか」をアピールするように言われるたびにがっかりしていたという。データの裏付けがなかったからだ。
「データはあなたの立場を裏付けていない」と彼女は言った。
「だから、漠然とした、甘ったるい、意味のない投稿にお金を使うのではなく、まだできていないことに焦点を当てて会話を続けよう」
Gender Pay Gap Botは、国際女性デーに関する投稿をした1000社以上の企業をリツイートした。ローソンは、企業が女性を祝福し、その価値を認めることは素晴らしいことだが、男女平等を実際に進めることに比べれば、それは容易いことだと考えている。
「難しいのは、それを自社の文化や雇用慣行の中に組み込むことだ。我々が本当に望んだのは、これらの企業の言動が行動と一致しない場合に、その企業に責任を負わせることができるようにすることだ」
このボットの開発者は、企業が力を与えるようなメッセージをつぶやくよりも、自分たちの欠点を自覚することの方がずっと重要だと考えている。
Mike Kemp/Getty Images
ローソンとフェンサムは、2021年の国際女性デーの直前に、平等を推進する企業から毎年出てくる「ワッフル(意味のない言葉)」の多さについて話していたことがきっかけで、このボットの最初のバージョンを開発したという。データの出所はイギリス政府のウェブサイトで、従業員250人以上の企業の賃金格差データが掲載されている。
しかし、始めは彼らのボットが企業のツイートをリツイートするのが早すぎたため、うまくいかなかった。スパムとして報告され、Twitterからアカウントを凍結されたのだ。2022年は、リツイートに10分の時間差を設けることで、稼働を続けている。
いくつかの企業はリツイートされた後にツイートを削除し、中にはボットをブロックした企業もあった。ローソンによると、最も良い対応をした企業は、給与格差の理由とそれに対する対策を説明してくれたという。これこそが本当に重要なことで、企業は自分たちに足りない点を自覚し、それに対して何かをすると約束するのが望ましいと彼女は言う。
Gender Pay Gap Botの将来については、今のところ未定だ。ローソンによると、少なくとも今週末までは稼働させ、その後は、さらに利用できるデータを探したいとのことだ。例えば、黒人歴史月間に企業から届くメッセージに対処するための人種別賃金格差のデータや、プライド月間中に意識を高めるためのLGBTQ+の従業員のデータなどを入手したいという。しかし、そのようなデータは公開されていないものをあるため、もっとアイデアを掘り下げる必要があるかもしれない。
「我々が国際女性デーに活動する理由は、データがあるという理由だけだ」とローソンは述べている。
「将来、さらに多くのデータが見つかれば、戻ってくるだろう」
[原文:How a Twitter bot went viral by shaming companies on International Women's Day]
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)