日本のスポーツNFT元年。バスケ川崎「PICKFIVE」で遊んでみた…メルカリ、ミクシィ、楽天の状況は?

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3月12日、バスケの「天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会」で優勝を決め喜ぶ川崎ブレイブサンダースの篠山竜青選手。こういった記念写真もNFT化して価値を持たせることができる。

(C)JBA

海外で巨額の金額が動いて話題になっている、スポーツにまつわる動画やデジタルカードをNFT※1 で取引する「スポーツNFT」が日本でも始動し始めた。

アメリカの先行事例では、NBAのスーパースター、レブロン・ジェームズのダンク動画が2021年4月に38万7600ドル(約4500万円)で落札されたり、この2月にはメジャーリーグ往年の名選手ミッキー・マントルの1952年に発売されたカードをNFT化したものが、175イーサリアム(当時のレートで約47万ドル、約5400万円)で落札されて大きな話題を呼んだ。

国内では2021年に、スポーツリーグやチームとともにIT企業がその仕掛け人となる形で「スポーツNFT」が続々と発表された。バスケットボールBリーグの川崎ブレイブサンダース(DeNA)や、プロ野球の横浜DeNAベイスターズ、そのほか楽天、メルカリ、ミクシィなどもスポーツNFTを仕掛けている。

いま、国内ではどんな実績が出ていて、関係企業はどう見ているのか、取材した。

※1 NFT:Non-fungible Token、非代替性トークン。ブロックチェーン技術を活用することで自分が所有する物や作品の資産価値を担保する。

NFTカードとファンタジースポーツを両方楽しめる「PICKFIVE」

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実際に開かれる公式戦ごとに、自分の所有する選手のカードから計5枚(5人)を選んでデッキを作成する。

PICKFIVEのスマホ表示画面をスクリーンキャプチャー

国内スポーツで本格的に動き出した事例の1つが、バスケットボールBリーグの川崎ブレイブサンダースが運営している、NFTを使った試合連動型カードゲーム「PICKFIVE(ピックファイブ)」だ。

2021年5月に試験的に実施し、2022年2月3日から正式に開始した。開始から約1カ月が経過し、枚数限定でNFT化して販売した選手のデジタルカードは、一番高い倍率のもので14.4倍になった(枚数を超えた応募が集まると抽選購入になるが、現時点では販売価格は一定)。新たな収益源を模索するスポーツ業界としては、上々の滑り出しを見せている。

ピックファイブはブラウザー上で楽しめる。利用登録の際にはLINEアカウントが必要だ。利用者のデジタルカードはLINE Blockchain上のNFTにひも付けられている。

ピックファイブの楽しみ方は大きく2つある。

1つはゲーム要素。試合開始直前までに、所有する選手のデジタルカードから5枚のカード(5人の選手)を選ぶ(ピックファイブではこれを「デッキ作成」と呼ぶ)。

試合後に実際の試合のスタッツ(得点などの記録)が反映され、獲得したポイントで利用者同士が順位を競い合う。いわゆる「ファンタジースポーツ※2」的なカードゲームだ。稼いだポイントは、選手のサイン入りグッズなどと交換できる予定だ(現時点では未開始)。

※2 ファンタジースポーツとは:実在する選手を集めて、架空のオリジナルチームを作り、選手たちの実際の成績に連動してポイント等を競い合う、オンラインシュミレーションゲーム。欧米では大人気となっている。

もう1つが、NFT化したカードを購入し、ピックファイブの利用者同士で売買するという使い方だ。川崎ブレイブサンダースの選手のプレー写真のカードを、枚数限定で3000円から1万円で購入できる。

カードには販売期間リミットが設定されており、発行枚数が5枚か10枚のみ(現状)。所有することで特別感を持ちやすくなっている。もし5枚販売のカードに対して、購入希望者が枚数を超えて集まったら、販売終了後に抽選で購入者が決まる。

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PICKFIVEではNFT化されたカードが購入できる。枚数が限定されている。

PICKFIVEのスマホ表示画面をスクリーンキャプチャー

同チーム運営会社のDeNA川崎ブレイブサンダースで、事業戦略マーケティング部部長を務める藤掛直人氏によると、サービス開始から約1カ月(2月3日から3月1日までのデータ)で、ピックファイブの累計登録者数は3987人、デッキ作成ユーザーは2415人だった。

ピックファイブの利用者の層と、アリーナでの試合観戦者の層はほぼ変わらなかったが、10代から40代の利用者が目立ったという。

藤掛氏は「初めての観戦者の方から、コアなファンまで満遍なく遊んでくれている。それほどマーケティングを強く打ち出していなかったこともあって、母数が多いわけではないが継続的に使ってもらっている印象があります」と分析する。

記者が体験。ピックファイブで実際に遊んでみると……

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PICKFIVEの開発を担当した藤掛直人氏。出向元のDeNAではゲーム開発を担当した。バスケ部出身で、小中学校の頃はNBAの試合中継をよく見ていたというバスケ好き。

出典:川崎ブレイブサンダース

期間中には2月5、6、12、13日とリーグ戦が行われ、その都度、活躍予想のデッキを作成できる。ピックファイブが正式開始してから初めての試合である2月5日は約1800人がデッキを作成し、6日以降の3試合も、1日あたり約1400人で継続率が約9割以上と安定して、活躍予想をファンが楽しんでいるのがわかる。

NFTカードは2月3日から3月1日の間では、14種類計107枚が販売された。藤掛氏によると、藤井祐眞選手の1万円で販売されたカードにも10倍以上の倍率がつく人気ぶりだった(14.4倍の倍率だったカードの選手名については、関係者は回答を控えた)。なお、カードの購入応募の平均倍率は4.6倍だった。

こういった取り組みは、リーグ全体で実施することが一般的に思えるが、ピックファイブは川崎ブレイブサンダース単体で楽しむ形だ。

そのメリットについて、藤掛氏は

「リアルタイム観戦が楽しくなる。そこに尽きます。また、一般的なファンタジースポーツだと複数チームにまたがるため、数字だけ見て試合観戦を楽しめなくなる。ライト層なファンの方含めて、常に熱狂できる観戦体験を提供するためにあえて(チーム)単体にしました」

と明かす。

2月5日に記者自身もピックファイブに登録して、これまで4試合ほど遊んでみた。ファンタジースポーツ的なゲーム自体を体験するのは実は初めてだ。活躍を予想して楽しむのは、正直なところ、まだ慣れない。ただ、ポイントはある程度たまってきて、これが何か貴重な物と交換できるようになれば、ゲームを楽しむモチベーションにも繋がるのかなとは感じた。

川崎ブレイブサンダースの藤掛氏もその点を把握しており、

「ポイント交換所の景品を目指して、頑張って、というサイクルが現状ないので、ゴールが無い状態。1シーズンを楽しませるには苦しい。早くポイント交換所を実装させたい」

と話した。

川崎ブレイブサンダースにとっては、3月末から4月頭が実装目処とされる二次流通の交換売買機能が実装されてからが「本番」だろう。二次流通が機能し始めた時に、デジタル資産形成に機敏な人達が注目する可能性はあるだろう。

ただ、カードの二次流通における売買価格があまりに高騰していた場合(そんなことが起こりえるのかは不明だが)、ファンそっちのけの投機対象となった際、運営側やファンがそれを良しとするのかは気になるところだ。

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