ワイン投資は経済が危機にも比較的強いと言われている。
Reuters
グローバル経済が危機に見舞われたとき、高級ワインは投資家の救世主になってきた。2008年のリーマンショックでは、下落していく株価を横目にワイン投資の主要な指数であるLiv-Ex1000は上昇していた。
実際、ワイン投資でのリターンは、アートやその他の投資対象と比較して上回っていることが多い。株式市場ほど浮き沈みが激しくなく、また株式市場に相関しないからだ。
データ元:Liv-exおよびYahooファイナンス。なお、これは過去のデータであり、ヴィントの提供する商品の将来予測ではない。
Vint
この安定性と収益性で、ワインは「究極のポートフォリオ分散のための資産」だと言うのは、ワイン投資のプラットフォームを運営するヴィント(Vint)のCEO兼共同創業者のニック・キング(Nick King)だ。
キングは株式投資業界にいた経歴を持つが、ワインのリターンは長期的に見て信頼できるものの、これまで一般の投資家からはアクセスしにくかったと言う。
「誰かに2万5000ドル(約300万円、1ドル=120円換算)を預けたら3週間後にワインのリストが送られてくるというのはあまりいい顧客体験だと思いませんでした。そういう売り方は限られた人に対してだけの、不透明で効率主義的なやり方だと感じました。そこで8カ月かけて、証券取引委員会から認可を取得したのです。
こうすることで、高級なワインやスピリッツのコレクションを作って証券取引委員会に書類を提出すれば、適格投資家にもそうでない投資家にもこうしたコレクションの株を買ってもらえますから」
Liv-Ex1000は過去1年間で投資家に24%、今年に入ってからは5%のリターンを出している。一方で、例えばS&P500は過去1年間で8%上昇、今年に入ってからは11%下落している。
ヴィントの各コレクションはそれぞれが株を発行するLLC(有限責任会社)であり、株を買うのと同じように投資家が高級ワインを買うことのできる、「効率的で信頼できる」投資のしくみだとキングは説明する。ボトルの入手・保管に関連する物流面での課題とコストは、計算から除外されるモデルとなっている。
「効率性という意味では、株式同様、人々はワイン・スピリッツ業界全体にリスク分散をしたいでしょうし、トップレベルのワインに投資したいと思うでしょう。さまざまなものを組み合わせることで、それが可能になります。
投資ポートフォリオの中で、ワインは安定剤の役割を果たします。それに、過去121年間で年ベース8.5%のリターンを生み出してきた長い実績もあります。これを私は現代のポートフォリオ理論を通して見ているところがあります。(ワインは)リターンを減らすどころか、むしろリスク調整後のリターンに貢献する投資商品なのです」とキングは言う。
投資すると決めたらどのワインにするかを決めるわけだが、投資家が注視すべき特定の地域やビンテージがあるのは確かだ。
ヴィントでワイン部門のヘッドを務めるビリー・ギャランコ(Billy Galanko)によれば、まず、自分のポートフォリオに「ブルーチップワイン」、つまり高級ワインの中で一番評判の高い有名なものをそれなりの割合で入れておくべきだという。これはボルドーやバーガンディーなど、ワインで有名なヨーロッパの地方を指す。
「また、いま勢いのあるものにも投資したいでしょうし、これから流行りそうなものにも目を付けておきたいでしょう。例えば南米産やアメリカ産のワインです。地域だけではなくビンテージについても、そのように分散投資をすることが重要です」
ギャランコは、賢いワイン投資家は、最近のトレンドやブームに目を光らせて、早めに手を付けておくべきだという。
「例えば、2000年代初め、2000年代終わり、2010年代初めにアジアで火がついたボルドーワイン・ブームがありました。2009年に多くの人が買い始めた際にはこれ以上高くならないだろうと思ったのですが、2010年と11年にはさらに高くなっていきました。
ここ1年ではシャンパンが素晴らしいパフォーマンスを見せています。バーガンディーも同様です。今はこの2つがかなり買われています」
また、トップクラスのワインが流行っているときは、トップ生産者の「2番手のワイン」に投資すると成功することがあるのだという。「大人気のワインが出ると、その地域全体に波及効果が生まれるのです」
「この1年間でナパバレーはすごく売れましたが、それが純粋に収集のしやすさゆえなのか、カルト的ファンを持つワインが多いからなのかは分からないですね。最近になってナパバレーのワインは、イギリスやヨーロッパで広く飲まれ始めています」とギャランコは言う。
「いま注目するならこういったワインでしょうね。それ以外にも、スペインやローヌバレーもこれから人気が出るのではないかと目を付けています」
(翻訳・田原真梨子、編集・大門小百合)