スーパーマーケットのDXについて、楽天と西友が具体的な取り組みを発表した。
撮影:小林優多郎
「コロナ禍での食品のEC化は超拡大フェーズに入りつつある」
楽天会長兼社長の三木谷浩史氏は3月10日、都内で開催した発表会で、スーパーマーケットの西友との更なる連携強化についてそう表現した。
楽天と西友は、2018年1月の楽天と西友の親会社であるアメリカ・ウォルマートの提携以来、「楽天西友ネットスーパー」(2018年10月)の展開などを共にしてきた。そして、2021年3月には楽天は子会社である楽天DXソリューション経由で資本出資を行い、西友の20%の株式を保有している。
写真左から楽天の三木谷浩史会長、西友の大久保恒夫社長。
撮影:小林優多郎
このような経緯から楽天と西友が実店舗とネットスーパーなどに代表されるネットサービスの連携、いわゆるOMO(Online Mirge with Offline)戦略を取ること自体に驚きはない。
三木谷氏が「超拡大」と評するこのOMO戦略はどのように、全国328店舗ある西友の実店舗(西友、リヴィン、サニーの合計:3月10日時点)を変えるのか解説しよう。
西友の店舗で楽天ポイントが貯まりやすく/利用しやすくなる
楽天は自社のキャッシュレス決済手およびポイントサービスに利用するカードにおいて、西友デザインを発表した。
撮影:小林優多郎
消費者から見て、今回の連携の最も分かりやすい強化点は、ポイントおよびキャッシュレス決済の領域だ。
楽天と西友は4月1日より順次、以下の楽天経済圏に関するサービスを西友実店舗や楽天の各サービスに導入する。
- 4月1日……西友デザインの「楽天カード」(クレジットカード)を受付・発行開始
- 4月5日……「楽天Edy」(非接触電子マネー)での決済対応を開始
- 4月26日……西友デザインの「楽天ポイントカード」の発行および店頭で楽天ポイントカードの提示によりポイントの加算(200円につき1ポイント)・利用(1ポイント=1円相当)が可能に
- 4月26日(予定)……「楽天西友ネットスーパー」アプリが「楽天西友アプリ」にリニューアル。ネットスーパー購入機能と「楽天ペイ(2次元コード決済)」機能を統合
ネットスーパーなどのオンラインの情報に、西友の実店舗の情報も加わることで、デジタルマーケティングの「精度」が上がる。
出典:楽天
あわせて4月26日から5月8日まで、楽天ポイントの付与が通常時の5倍になるキャンペーンを実施。5月以降も通常の2倍貯まる「楽天ポイント2倍デー」などの優遇施策を実施する見込み。
楽天のIDと紐づいたポイントプログラムや決済手段と、西友の実店舗での購買データが合わさることで、楽天と西友の両者は消費者に対し、より効率的なマーケティング施策や商品開発が可能となる。
OMO戦略の鍵を握るのはアップデート予定の専用アプリ
新しい「楽天西友アプリ」では、ネットスーパーの注文機能に加えて、楽天ペイでの支払いやポイントカードの提示が可能になる。
撮影:小林優多郎
注目すべきはアプリだ。実店舗としての西友の主な狙いはここにある。
前述の通り、現在ネットスーパーでの購入専用アプリである「楽天西友ネットスーパー」アプリは、実店舗の決済で使える楽天ペイ機能を統合することで、オンライン・オフラインどちらでも使えるアプリに進化する。
この新アプリ提供の狙いは、消費者の利便性向上に加え、ネットスーパーユーザーの実店舗への送客、またはその逆にある。
西友の大久保恒夫社長。
撮影:小林優多郎
西友の大久保恒夫社長は発表会で「西友の実店舗では高齢化が進んでいる」と実店舗の課題ついて言及。
「実店舗では50〜70代がメインの顧客だが、ネットスーパーは30〜40代といった若い顧客になる」(大久保社長)とし、異なる年齢層の相互利用を促すことで、オンライン・オフラインどちらの売り上げも伸ばす相乗効果を狙う方針だ。
その要であるアプリのについて、大久保社長は「2022年に120万超、2025年には250万超」とダウンロード数の目標を公表している。
楽天はスーパー向けプラットフォームの外販も視野に
楽天グループの三木谷浩史会長。
撮影:小林優多郎
一方で、楽天としての狙いは楽天カード、楽天Edy、楽天ポイントといったサービスの提供で、同社のポイントやIDを中心としたいわゆる「楽天経済圏」を拡大することだ。
さらに、三木谷氏は発表会で「この(OMOの)プラットフォームは西友さんから始まり、ほかの中小のスーパーでも使えるようにしていきたい」と発言。
具体的な計画は語らなかったが、西友との取り組みを成功させ、他のさまざまな規模のスーパーマーケットにも売り込んでいく狙いがある。
(文、撮影・小林優多郎)