3月18日に発売開始する「iPhone SE(第3世代)」。一般にはiPhone SE3とも呼ばれる機種だ。前モデルのSE2からは、ボディーサイズはまったく変化がない。
撮影:石川温
3月18日発売のiPhone SE(第3世代)を数日間、試用している。直販価格は5万7800円(税込)からとお手頃だ。
iPhone SEのコンパクトなサイズ感は、日本で根強い人気を誇っている。iPhone SEが支持され続ける理由のひとつに「Touch ID(指紋認証)」がある。
2年近いコロナ禍でマスク生活が当たり前になった。また、ここ数週間は花粉が飛びまくり、花粉症の人にはマスクをしないことにはツライ日々となっている。筆者も目がかゆく、クシャミが頻発する毎日を過ごしている。
仕事柄、使う端末は最新モデルを選ぶようにしているので、普段は「iPhone 13 Pro」を愛用している。マスクをつけているため、当然ながらFace ID(顔認証)は効かない。毎度毎度、パスコードの入力を求められてうんざりしているのが実際のところだ。
今やiPhoneのラインアップとしては指紋認証Touch ID搭載端末は少ないが、いまだにスマホのシンボルにもなっている「丸いボタン」。親しみのあるデザインとは言えるだろう。
撮影:石川温
久々にiPhone SE、しかも最新の第3世代を使ってみて、感動したのが(極めて当たり前だが)指紋認証の簡便さだ。
画面下のホームボタンをぐいっと押せば、画面ロックが解除される。
あらかじめ、右手の親指だけでなく、人差し指、左手の親指、人差し指と4本の指を登録しておけば、どちらの手でiPhone SE(第3世代)を持ち上げても、すぐにロック解除が可能だ。「いちいち、パスコードを入力するストレス」から解放される。
5G対応になって「最も安いiPhone」はどう変わる?
前モデルにあたる第2世代のiPhone SE(右)と、新発売のiPhone SE(第3世代)の比較。確かにスピードは違うが……。
撮影:石川温
今回のiPhone SE(第3世代)の見どころの1つはSEとして初めて、5G対応になったことだ。
5Gに関しては、正直言って、まだその恩恵を思いっきり受けられるというものでもない。
実際に街中でiPhone SE(第3世代)で5Gネットワークにつないで速度チェックをしてみたが、テストを始めた途端に4Gに切り替わってしまうというのが度々あった。
現在、ほとんどの場所が4Gネットワークの上に5Gネットワークをかぶせただけの「NSA(ノンスタンドアローン)」という構成になっており、5Gから4Gに切り替わってしまうことが多い。
また、5Gにつながった状態でも、4Gと大して変わらない速度になってしまうことも多々ある。ソフトバンクやKDDIは4Gで使っていた周波数帯を5Gに転用しているところが多いため、4Gと同等の速度しか出ないのだ。
NTTドコモはこれまで5Gに割り当てられていた周波数帯だけで5Gネットワークを構築していたが、これからは4G周波数の転用も行っていく。
5Gエリアが一気に広がるが、言い方を変えれば、4Gと変わらない速度の場所が増えていくだけのことになる。
中身がiPhone 13相当に「高速化」する意味
カメラは基本的に変更なし。シングルレンズで光学ズームはないが、デジタルズームでここまでは寄れる。
筆者の作例をもとにBusiness Insider Japan作成
さらにiPhone SE(第3世代)にはiPhone 13シリーズと同様のチップ「A15 Bionic」が搭載されている。
iPhone SE(第3世代)とA15 Bionicとの相性はどうなのか、動画編集などを試みたが、途中でハタと気がついた。
「4.7インチのiPhone SE(第3世代)で動画編集のような重たい処理はしないのではないか」。
そもそも、コンパクトなiPhone SE(第3世代)は、最新のアプリを高性能チップでゴリゴリとぶん回す機種ではない。ユーザーの特性からもiPhoneに求めるのは電話、メール、SNS、地図、ウェブ、動画再生ぐらいなものだ。
カメラも背面に1つしかないので、自分で凝った動画や写真を撮影して加工して、アップするような人に向けた機種ではない。
そう考えると、iPhone SE(第3世代)にA15 Bionicはオーバースペックすぎるのではないか……。
そんなことを考えながら、iPhone SE(第3世代)を使っていたら、またも気がついた。
アップルが最新のチップを載せてきたのは、ユーザー属性と商品として寿命を考えてのことだ。iPhone SEは最新の機能に興味があるというよりも、「同じ機種をできるだけ長く使いたい」という人が好んで買っている。
現在のiOSは比較的、古い機種に対しても最新のバージョンを提供している。例えば、現在、提供されているiOS15はiPhone 6s以降が対象機種となっている。つまり、6年前の機種でも最新のOSが使えてしまうと言うわけだ。
これから発売のiPhone SE(第3世代)もひょっとすると6年後、2028年まで最新のiOSが使えてしまう可能性もゼロではない。「1つの機種を末永く使いたい」という人こそ、A15 Bionicが載ったiPhone SE(第3世代)が選択肢になってくるわけだ。
Touch IDがない「iPhone 13」シリーズにもマスク対応機能がきた
手元に届いたiPhone 13 miniの新色。今週に配信予定の最新のiOS15.4が先んじてインストール済みになっていた。マスクでも顔認証できるのがポイントだ。
撮影:石川温
iPhone SE(第3世代)とともに我が家にはiPhone 13 miniのグリーン、iPhone 13 Proのアルパイングリーンがやってきた。試しにiPhone 13 miniをセットアップしたところ、なんと最新のiOS15.4がインストールされていた。
iOS15.4には「マスクをしたまま顔認証で画面ロックを解除できる」という機能が盛り込まれており、早速試してみた。
確かにマスクをした状態でもFace IDが機能して、ロックが解除される。もう、パスコードの入力を強要されなくて済むので、かなり楽だ。待望のアップデートであり、今週、対象機種のiPhoneに配布される予定だ。このアップデートによって、多くの人がマスクをしたままロックを解除できる恩恵を受けられることだろう。
そうすると「指紋認証のiPhone SE(第3世代)じゃなくてもいいのでは」という気になってくる。
ただ、ちょっと違うのが、iPhone SE(第3世代)であれば、「指紋をタッチすればロックが解除され、すぐに操作できる」ということだ。
iOS15.4のiPhone 13 miniでは、マスク姿でも顔認証でロックが解除できるものの、画面の下から上にスワイプする、というワンアクションが必要となるのだ。
たいした動作ではないので、さほど気になりはしないのだが、一日に何度もロック解除をするだけにこの点だけは指紋認証のiPhone SE(第3世代)のほうがスムーズでストレスがないのは間違いない。
iPhone SE(第3世代)はデザイン的にも機能的にも目新しさに欠けるが、長く愛されたデザインであり、「いままでの使い勝手を変えたくない」というiPhone 8以前のユーザーには最適な選択肢と言えるだろう。
最新のチップを搭載したことで、これからも長く愛用できる安心感も大きい。そういった意味で、iPhone SE(第3世代)は、「iPhoneがそこそこ使えればいい」という幅広い人に受け入れられる機種と言えそうだ。
(文、写真・石川温)