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「怖かった」ロシアに原発を攻撃されたザポロジエからポーランドに避難してきた人々が明かした苦難

避難民

ザポロジエから鉄道で避難する人々(2022年3月7日、ウクライナ)。

Dmytro Smoliyenko/Ukrinform/NurPhoto/Getty Images

  • ロシアによるウクライナ侵攻を受け、ポーランドへ避難する人々はその途中で恐ろしい状況に直面している。
  • ザポロジエ(ザポリージャ)から避難してきたある一家は、自分たちの乗った鉄道が空襲警報で一時停止した時には爆撃されるのではないかと不安だったと話している。
  • ロシアはザポロジエにある原子力発電所を攻撃していて、大災害が起きるのではないかとの懸念が生じている。

カテリーナ・コンパニエツさん(34)と7人の家族がウクライナのザポロジエから避難し、安全にポーランドの国境を越えるまでには1週間かかった。通常なら車で15~16時間の道のりだ。

ザポロジエからリヴィウに向かう途中、一家の乗った鉄道は空襲警報で一時停止した。照明も消えた。混雑した車両には約250人ほどが乗り合わせていて、誰もがロシア軍に空爆されるのではないかと心配していた。この時、どんなことが頭の中に浮かんでいたのか尋ねると、コンパニエツさんは一言「怖かった」と答えた。コンパニエツさんとその家族は3月11日、ポーランド東部の都市ルブリンの駅でInsiderの取材に応じてくれた。ルブリンはウクライナから逃れてきた人々が一時的に滞在する拠点の1つとなっていて、コンパニエツさん一家はドイツへ行きたいと希望していた。

ロシアによるウクライナ侵攻は、ウクライナ国内の移動を恐ろしい、命に関わる可能性すらある体験に変えてしまった。2月下旬に侵攻が始まって以来、250万人以上のウクライナ人が徒歩や鉄道、バス、車で国外へ避難した。自分たちの住んでいた都市や町で地獄のような経験をした後、多くのウクライナ人は24時間以上をかけてポーランドへ逃れ、国境を越えるまでに何時間も待たなければならない。

コンパニエツさんたちが暮らしていたザポロジエには、ロシア軍が攻撃したヨーロッパ最大の原子力発電所がある。ザポロジエの住民にとって、それは恐ろしいことだった。彼らはチョルノーブィリ(チェルノブイリ)の原発事故の経験を覚えていて、攻撃を受けた時には似たようなことがザポロジエで再び起きないことを祈っていたと、コンパニエツさんは語った。

ザポロジエの原子力発電所での戦いによって原子炉が被害を受け、大災害につながるのではないかとの強い懸念はヨーロッパやその他の国々にも広がった。発電所でウクライナ軍とロシア軍が衝突すると、施設の一部では火災が発生し、ウクライナ当局はロシア側が爆弾を使用したと非難した。NPRの分析によると、ロシア軍による攻撃 —— これによりロシアがザポロジエ原発を掌握した —— は当初考えられていたよりも原子炉に近い場所で起きていたことが分かった。

コンパニエツさん一家と同じく、ザポロジエからルブリンに避難してきたカップルのミレーナ・ラマトバさん(19)とバディム・ピリプチュクさん(17)は、原子力発電所への攻撃が「恐怖感」を生み出したとInsiderに語った。ドイツへ向かっていると話した2人も、ポーランドにたどり着くまでには苦労があったという。2人が乗った鉄道はものすごく混んでいて、通路に立っていなければならなかった。ザポロジエからポーランドのヘウムまでは36時間かかった(通常なら車で15時間だ)。2人とも家族をウクライナに残し、ラマトバさんは飼い犬(ジャーマン・シェパード)もウクライナに置いてこなければならなかった。

ミレーナ・ラマトバさんとバディム・ピリプチュクさん

ザポロジエから避難してきたミレーナ・ラマトバさんとバディム・ピリプチュクさん。

John Haltiwanger/Insider

コンパニエツさん、マツニエバさん

カテリーナ・コンパニエツさん(右端)とゼナイダ・マツニエバさん(左から2番目)。家族と一緒に。

John Haltiwanger/Insider

実際、ウクライナからポーランドやその他のヨーロッパの国々に避難した多くの人々が家族を残してきている —— 好きでそうしたわけではないケースがほとんどだ。

ロシアによる侵攻を受け、ウクライナ政府は18~60歳の男性の出国を禁止している。コンパニエツさんによると、彼女の夫は2014年にはウクライナ東部のドンバスでウクライナ陸軍の任務を果たし(この年にロシアの後ろ盾を受けた分離派との戦いが始まった)、現在は領土防衛隊にいるという。

中には、出国を禁じられた夫とともにウクライナに残り、ロシアとの戦いを支援する女性たちもいる。そして、ウクライナを離れることを拒否したり、からだが不自由なために避難するのが難しい状況にある高齢者も多い。

コンパニエツさんと一緒にザポロジエから避難してきたゼナイダ・マツニエバさん(37)は、親戚をウクライナに残してきたことが避難をする上で一番辛かったとInsiderに語った。「これからどうなるのか分からないし、彼らにもう一度会えるかどうかも分かりません」とマツニエバさんは話した。

ただ、ウクライナの人々は希望も持っている。

「ゼレンスキー大統領を信じています。わたしたちが勝つと信じています」とコンパニエツさんは語った。

[原文:'Fear': Ukrainians from Zaporizhzhia, where Russia attacked a nuclear plant, faced a harrowing journey to Poland

(翻訳、編集:山口佳美)

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