データによると、従業員の給与明示は給与格差の解消に役立つ可能性がある。
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- ニューヨーク市では5月から、求人情報に従業員の給与範囲を記載することが義務付けられる。
- アメリカの複数の州では、女性やマイノリティの賃金格差を解消するため、給与の透明性に関する法律を制定している。
- また、給与の透明性は、労働力不足の中で企業が労働者を確保するのに役立つかもしれない。
2022年のイコール・ペイ・デイ(3月15日)からちょうど2カ月後、ニューヨーク市で給与の透明性に関する新しい法律が施行される。これは、女性や有色人種が賃金の平等を勝ち取るのに役立つかもしれない。
ニューヨーク市は、雇用主に対して求人情報に従業員の給与範囲の明示を義務付けることで、雇用市場における不透明性に終止符を打った。データによると、給与の透明性は、歴史的に業界を越えて白人や男性に比べて賃金が低い女性や有色人種の賃金の是正に役立つ可能性があることが示されている。また、新しい法律は、労働者を必要とする企業にひずみを生じさせている現在の労働力不足の解消にも、役立つかもしれない。
ニューヨーク市議会で2021年12月に可決されたこの法案は2022年5月に施行される。議会は給与の透明性の欠如について、「差別的で反労働者的」だと指摘した。
「すべてのニューヨーク市民は、求人に応募する際、自分や家族を支えられるか判断する権利を持つべき」と、元ニューヨーク市議でこの法案の共同提案者であるヘレン・ローゼンタール(Helen Rosenthal)は、プレスリリースで述べた。
「今こそ競争を公平にして、職を求めるニューヨーク市民の尊厳を取り戻すときが来た」
ニューヨーク市の他にも、コロラド州、カリフォルニア州も最近、給与の透明性に関する法律を制定した。また、メリーランド州、ワシントン州、オハイオ州トレドとシンシナティにも、給与の透明性を求める同様の要件が定められている。
給与の透明性は女性やマイノリティ、従業員を求める企業に役立つかもしれない
お金のことを話すのは品性に欠けると言われることもあるが、若い世代はそれを変えたいと思っている。
クラウド上のデータベースはますます一般的になってきており、例えばジャーナリズムのような業界では、労働者が給与、福利厚生、性別、人種、その業界での経験年数などを記載したスプレッドシートを回覧している。
これらのネットワークは、男女間や、白人と有色人種の間にある賃金格差を縮める意図がある。
例えば、Economic Policy Institute(EPI)の2020年の報告によると、白人男性が1ドルを稼ぐ間に、黒人男性が稼ぐ金額はわずか0.71ドルだ。
全米女性法律センター(NWLC)によると、黒人女性は特に厳しく、白人男性のアメリカでの年収を稼ぐためには、19カ月かかる。EPIによると、白人男性が1ドルを稼ぐ間に、黒人女性はわずか0.63ドルしか稼げないという。この格差は時間とともに拡大し、黒人女性は40年以上のキャリアで96万4000ドルを失いかねないとNWLCは試算している。
これらの格差は近年、企業の負担になり始めている。2022年2月、グーグルは雇用や給与において女性やアジア人への偏りがあるという主張に対し、従業員に260万ドルを支払った。
従業員の給与の明示は、賃金格差の縮小に役立つとデータで示されている。PayScaleが2020年に発表した調査では、自分のいる組織に給与の透明性があると答えた女性は、同じ組織の男性が1ドル稼ぐ間に、平均で1ドルから1.01ドル稼いでいることがわかった。調査によると、給与の透明性は、差別を減らすほかに、雇用主が従業員を確保するのに役立つ可能性もある。これは、2021年に3440万人が仕事を辞め、「大退職」時代と呼ばれる中、アメリカの企業にとって喫緊の課題だ。
beqomのレポートによると、従業員が賃金格差があると感じたとき、それが実際にあるかどうかに限らず、その会社にとどまる意欲のある人は16%減少するという。UCLAの2013年からの調査でも、給与に透明性があると従業員はより生産的になるとわかった。
「賃金に関する秘密主義的なカルチャーがあるため、自分が給与の差別にあっているかどうかを知るのは難しい」と、NWLCの教育・職場担当バイスプレジデント、エミリー・マーティン(Emily Martin)はThe 19thに語った。
「男女間や人種間の格差を縮めるための一つの答えは、給与の透明性だ。なぜなら、太陽の光には殺菌効果があるのだから」
[原文:NYC companies will have to share job salaries upfront — and it could help close the gender pay gap]
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)