インド発のホテルベンチャー「OYO」が名前を「Tabist」に変更する。
画像:OYO
インド発のホテルチェーン「OYO」を日本で展開していた「OYO Japan(オヨ・ジャパン)」が4月1日から社名を変更し、「Tabist(タビスト)」となる。
同時に、全国で展開していたホテルブランド「OYO」も新しい名称に刷新するという。
コロナ禍で旅行がインバウンド需要から国内需要へと切り替わっている中で、サービス名も“日本発”を押し出すことで、30代(ミレニアル世代)を狙う。
賃貸の伸び悩み、ホテルへの転換
OYO上陸会見の様子。当初から、ソフトバンクのテクノロジーを使った「住居のDX」を売りにしていた。(写真左:ヤフーの川邊健太郎CEO、右:OYOのリテシュ・アガルワルCEO/肩書きはいずれも当時)
撮影:西山里緒
2013年にインドで創業し、数年のうちに国内トップシェアを誇るベンチャーとなったOYO。
2019年には、本国OYOとソフトバンクグループとの合弁会社として日本に上陸。「インドの黒船」とももてはやされたが、これまでの道のりは決して平坦ではなかった。
当時の主力事業はホテルではなく賃貸サービス。「髪を切るように引越しを」とうたい、敷金・礼金・手数料ゼロ、スマホ一つで契約できる、いわば「賃貸のDX(デジタル・トランスフォーメーション)」的なコンセプトを強みとしていた。
しかし賃貸事業は伸び悩んだ。「数カ月単位での引越し」というコンセプトとコロナ禍の直撃というタイミングの悪さもあり、賃貸事業からは2021年に撤退。その後「OYO Japan」は2021年6月に株式会社化してソフトバンクの子会社となり、ホテル事業に注力している。
ホテル事業では、中小のホテル事業者と契約し、予約システムや集客、収益管理システムなどをOYOが担う。売り上げの一部を手数料として徴収する仕組みだ。
2020年3月には、契約したホテルの客室数は約6000室になり、直近の2022年3月には約7000室(施設数は約230)と少しずつ伸びてはいる。ただ、市況の影響もあり、大きな成長は難しい。
1年間で1万室達成を目指す
コロナ禍に入って以降、OYOの稼働率は4割〜5割を推移している。
出典:OYO Japan 2022年3月16日記者説明会資料
それでもこの事業に取り組む理由は、全国約95万室という、独立系ホテル・旅館の大きな市場だ。こうしたホテルはコロナ前から低い稼働率に直面しており、デジタル化の遅れや人材不足も問題になっているという。
ソフトバンクの持つダイナミック・プライシングなどのテクノロジーを活用すれば、こうした課題を解決できる、とTabistの社長を務める田野崎亮太氏は強調する。Tabistのスタート時には、PayPayを通じたクーポンの配布も予定している。
OYOから名称を切り替えた理由として、田野崎氏はこう語っている。
「(今までは)グローバル展開をしている、手頃な価格で泊まれるというブランドイメージがあった。Tabistという名前に変わることで、手軽に旅ができる、そしてご当地体験ができるというサービスにシフトしていきたい」
今までグローバルなOYOアプリの一部として存在していた予約アプリも、新たに「Tabist」として作り直す。アプリには、宿泊施設の周辺情報やアクティビティなども表示させ、旅のローカル情報が手に入る機能を強化する。
現在のユーザー層は、40代〜50代のビジネス層が中心だが、「ローカル旅」を押し出すことで、新たに30代の顧客層も狙う。2023年度末までには、300施設、1万室の達成を目指す。
なお、今回の名称変更による株主の出資比率に変更はないという。現在の株主は、ソフトバンク、OYO Hospitality UK、SVF Ohio Japan(UK)の3社。
(文・西山里緒)