ドイツのドレスデンで。2022年3月16日撮影。
Sebastian Kahnert/Getty Images
- オミクロン株のBA.2系統により、ヨーロッパの国々でCOVID-19患者が急増している。
- 免疫力の低下と制限の緩和によって、アメリカやその他の国でも簡単に感染が拡大しかねない状況にある。
- これまでも、ヨーロッパの感染者急増に続いて、同じような感染の波がアメリカにもやってきている。
ヨーロッパのおよそ12カ国でオミクロン株のBA.2系統による感染が急増しており、アメリカの公衆衛生の専門家が今後数週間でアメリカでも同じような感染の波がくると予測していることを、ワシントン・ポストが2022年3月16日に報じた。
100万人あたりの感染者数は、ヨーロッパの多くの国で増加しており、特に最近の感染例が多いのはオーストリア、オランダ、スイス、ドイツだ。
医師で作家のエリック・トポル(Eric Topol)は3月13日、上昇を見せるOur World in DataのグラフをTwitterに投稿した。
ヨーロッパに次の波が到来している。
専門家はワシントン・ポストに対し、オミクロン株BA.2系統は元のオミクロン株よりも感染力が強く、ヨーロッパでの感染者や入院者数の急増に拍車をかけていると述べた。
トポル医師は別の投稿で、パンデミックの規制緩和と、ワクチンによる免疫力の自然な低下によって、新しい変異株の感染が広がっているとしている。
オミクロン株BA.2系統についてわかっていること
最新のデータによると、オミクロン株BA.2系統は、以前のオミクロン株より感染力が1.5倍高いと見られるが、この新しい変異株がより重症化しやすいというエビデンスはない。
BA.2系統はBA.1系統より追跡が難しいとする報告もある。科学者は、BA.2系統にはない特定の遺伝子変異を見つけることで、元のオミクロン株の広がりを追跡した。
BA.2系統もCOVID-19のPCR検査で陽性を示すが、新しい感染例をオミクロン株の種族に結びつけるには、さらなる遺伝子解析が必要だ。
アメリカでも同じことが起きると専門家は考えている
アメリカ疾病対策予防センター(CDC)では、BA.2系統の感染例について、他のオミクロン亜種と比較して追跡しているが、今のところ警告は発していない。
アメリカのCOVID-19の新規感染者数と入院者数はここ数週間で減少しており、BA.2系統による感染者数の割合は増えている。3月12日の時点で、アメリカの新規感染者の約4分の1がBA.2系統によるものだとCDCは見ている。
だがこの亜種はすでに、アメリカ北東部などの一部地域で広まっている。ニューヨーク州、ニュージャージー州、プエルトリコ、ヴァージン諸島では感染者の39%がBA.2系統によるもので、ニューイングランドもそれに近いと、ロイターが報じている。
ジョンズ・ホプキンス大学の新型コロナウイルスリソースセンターのデータによると、アメリカは、感染者が急増しているヨーロッパの多くの国より、ワクチン接種率が低い。アメリカの人口の約66%がワクチン接種を完了しているが、ドイツとイギリスはそれぞれ約76%と74%だ。
「ワクチン接種率が比較的低く、特に高齢者が多い地域では、入院者数や死者数の急増するかもしれない」と、感染症専門医でカイザー・ヘルス・ニュース(Kaiser Health News)の編集者であるセリーヌ・ガウンダー(Celine Gounder)は、ワシントン・ポストに語った。
ワクチン接種率と規制が感染に影響する
CDCの最新のガイドラインによると、現段階では感染者数が低い水準となっているため、アメリカのほとんどの州でマスク着用推奨を緩和できる。
感染者数、入院者数、死者数が減少していることから、CDCはここ数週間、屋内でのマスク着用から人々に「休息を与えよう」としてきた。
CDCのロシェル・ワレンスキー(Rochelle Walensky)所長は、COVID-19の感染レベルが再び悪化すれば、マスク着用のガイドラインを復活させると話しており、もしヨーロッパと同じような流行がアメリカでも起きたら、この「休息」は短い期間で終わる可能性がある。
一部の専門家は、新しい変異株が国内外で増えていることから、CDCの新しいガイドラインに関わらず、マスクを着用しているとワシントン・ポストに話している。
「なぜ(亜種が)ここに来ないのか、我々が十分にワクチン接種しているからなのか、私にはわからない」とカリフォルニア大学サンディエゴ校のエアロゾル感染の専門家、キンバリー・プラター(Kimberly Prather)は述べている。
「だから私はマスクをまだ着用している。屋内ではマスクをつけているのは私だけだから、人々は私を変な目で見るが、気にしない」
ワクチンによる保護は、COVID-19による入院や死亡を防ぐのに依然として効果的だが、2020年後半に人々が最初に接種したときほど強力ではない。ワクチンメーカーは65歳以上の免疫力を高めるため、4度目の接種の承認を求めており、将来は毎年COVID-19のブースター接種が行われる可能性がある。
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)