BMW i4 M50
BMW
- BMW i4 M50は、BMWの新しい電動スポーツセダンだ。価格は6万5900ドルからで、ベースモデルとなるi4は5万5400ドルから。
- i4の外観と装備は、電気を動力源とする驚異的な走りを除けば、ガソリン車であるBMW4シリーズに似ている。
- ラジカルではなくノーマル、それがこのEVを選択する理由になるだろう。
BMWの電動化へのシフトは順調に進んでいる。同社は従来の多くの車種にハイブリッドモデルを提供するだけでなく、フル電動車のラインアップも充実させている。SUVのiX3とiXはその出発点にふさわしいものだったが、6万6000ドル(約784万円)の新型i4 M50は、BMWが自動車愛好家を喜ばせるための電動スポーツセダンへの初挑戦となる。
「BMW i4」は既存モデルを電動化したもの
電動車のi4は離れて見ると、ガソリンエンジンを搭載した4シリーズ グランクーペのような、スタイリッシュな車だ。現行の4シリーズの外観は、発売当初はマスコミや一般からの批判を浴びたが、慣れ親しんだためか、その印象は和らいでいる。しかし、ガソリン車とEVでは微妙な違いがある。EVのグリルはクローズド・タイプとなり、サスペンションも変わり、テールパイプは無く、シートも新しくなり、EVの土台となる部分のスペースを生むためにフロアも新しくなっている。もちろん「i4」のバッジも付いている。
BMW i4 M50
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内装は、BMWのような高級車に期待される洗練された操作系、明るいディスプレイ、豪華な質感など、そのすべてを備えている。しかしこの電動4シリーズには、ライバルを意識してか、ガソリン車の兄弟車にはない、巨大なタッチスクリーンが新たに搭載されている。全体としては、少なくともi4に関しては、BMWは伝統的なモデルを電動化することで、外観や雰囲気を大きく変えたりして「同じだけど違う」車を求める購入者を遠ざけてしまうようなことはしていない。
「i4 M50」という名前の「M」の部分が重要だ。これはBMWの「M」部門、つまりBMWの主要ラインナップのうち、高速で完成度の高い、エンスージアスト向けバージョンの開発者たちがチューニングを担当したことを意味している。
しかし、これは「本物の」Mではない。もしそうなら「Mi4」と呼ばれていただろう。「M」モデルとノーマルモデルの中間的な位置づけの「Mパフォーマンス」だ。
BMW i4 M50
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M50は83.9kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、前後に1つずつモーターを配置した全輪駆動で、最大544馬力、最大トルク794Nmを発生する。BMWによると停止状態から3.9秒で時速62マイル(約100km/h)に達し、最高速度は時速140マイル(約225km/h)に制限されているという。
アメリカ環境保護庁(EPA)による航続距離は245マイル(約395km)で、適切な充電器を使用した場合、30分で10%から80%の充電が可能。BMWのMのチームは、Mシリーズ車が普通そうであるように、ハードな運転にも対応できるようにサスペンションにも手を入れている。
BMW i4 M50
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さらに、M専用の「スポーツ・ブースト(Sport Boost)」モードが搭載されており、ボタンを押すと車の性能が最大限に発揮される。モーターが1つで硬いスプリングがないノーマルのi4は、速さでは劣るが、その分、航続距離が伸びる。
快適で親しみやすいi4のドライビング
BMWは4シリーズのレシピを大きく変えていないので、始動は簡単。ブレーキを踏んで、スタートボタンを押すだけだ。
静かに走り出すと、i4の巨大なインフォテインメント・スクリーンに目が釘付けになる。高解像度で使い勝手がいい。メニューの移動も簡単でやりたいことを選ぶことができる。
BMW i4 M50
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BMWは4シリーズの電動バージョンからかなりの数の物理的なボタンを削除し、代わりにタッチスクリーンメニューにその機能を入れたが、これは移動中のフラストレーションにつながる可能性がある。従来のBMW iDriveインフォテインメント・コントローラーも健在で、メディア、ナビゲーション、電話、その他無数のメニューに素早くアクセスできる。
iDriveは直感的に操作できるシステムで、画面の操作も簡単だった。問題は、たくさんあるメニューの中から必要なコンテンツを見つけられるかだ。
私はまずi4のドライビングモードのうち、最も実用的だという「Eco Pro」からスタートした。これは可能な限り使用エネルギーを少なくし、充電の間隔を長くするモードだ。
BMW i4 M50
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このモードにすることで、「走り」を犠牲にしているようには感じられなかったが、BMWらしさが薄れてしまったような気がした。快適性はプログレッシブアクセルコントロールで非常に向上しており、M50の巨大なパワーを簡単に操ることができた。i4の5049ポンド(約2290キログラム)という重量を感じさせないスムーズな走りを実現している。
「Sport」は「M」の本領を発揮するモード。速くて荒々しくて、まっすぐな道を走らせるのにぴったりだ。i4にさらなるパワーを与えるスポーツ・ブースト(Sport Boost)は、BMWのM部門が電気の力でどれほどのことができるかを示す機能で、驚くほど速く、最高時速140マイル(約225km/h)近くまで簡単に加速できる。BMWが作曲家ハンス・ジマー(Hans Zimmer)と開発したエンジン音を模した走行サウンドを奏でながら。それは、不快感を与えず、ちゃんと「vworp(ドラマ『ドクター・フー』に登場するタイムマシン、ターディスが出す音を模倣したもの)っぽさ」を出している。
BMW i4 M50
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i4を操るには2つの方法がある。ひとつはアダプティブ回生システム、もうひとつはワンペダルドライビング(アクセルペダルの踏み込みを弱くして減速する)だ。街中では楽しいワンペダルドライビングも山道ではコントロールが効かなくなる。アダプティブ回生システムにすると、前方の交通状況や運転に応じて、システムが回生ブレーキの具合を調整してくれる。
滑り出しは順調に思える
これは何十年にもわたって自動車を進歩させてきたBMWが送り出す、初の高性能EVだ。競合するポールスター2(Polestar 2)やテスラ・モデル3(Tesla Model 3)のパフォーマンスには、それぞれ長所(そして熱狂的なファン)があるが、BMWファンならば間違いなくこの車を気に入ることだろう。
i4 M50がガソリンエンジンを積んでいないからといって、BMWの個性が失われたわけではない。これは将来の「M」のEVに期待を抱かせるスタートだと思う。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)