Lucas Jackson/Reuters
- 温暖化と二酸化炭素量の増加は、多くの人々のアレルギー症状を悪化させる可能性がある。
- ある最新研究は、花粉シーズンが長期化し、2100年までに花粉の量が最大で200%増えると予測している。
- 複数の花粉シーズンが重なって、季節性アレルギーや花粉症を悪化させる可能性がある。
多くの人々が将来的に、くしゃみや鼻水、喘息の発作に苦しめられることが増えそうだ。
温暖化と二酸化炭素量の増加によって、花粉シーズンがこれまでよりも長く、激しくなる可能性があるからだ。学術雑誌『ネイチャー コミュニケーションズ』に3月15日に掲載された最新研究は、今世紀末までにアメリカでは花粉シーズンが最大で40日早く始まり、最大で15日長く続く可能性があると予測している。同時に、毎年放出される花粉の量も最大で200%増加する可能性があるという。
これは花粉症に苦しむアメリカの1920万人の成人と520万人の子どもたち(アメリカ喘息アレルギー財団調べ)にとって悪い知らせだ。
「アレルギーというと鼻づまりや目のかゆみを思い浮かべるかもしれませんが、より深刻な喘息の原因にもなります」とこの研究に携わったボストン大学公衆衛生学部の環境健康学の教授パトリック・キニー(Patrick Kinney)氏はNBC Newsに語った。
「月日を経るにしたがって、症状が悪化し、薬を必要とする人が増えるでしょうし、花粉アレルギーになる人も増えるでしょう」
花粉シーズンはすでに長くなりつつある。『米国科学アカデミー紀要』に掲載された2021年の研究によると、この30年で花粉シーズンは約20日延び、花粉量も21%増えたという。
今回の最新研究は、そうした傾向が続くだろうと警鐘を鳴らしている。
それぞれの花粉シーズンが長期化し、重複する可能性も
車にたまった松の花粉(2020年3月30日、ジョージア州ダンウッディ)。
Brynn Anderson/AP Photo
春になって気温が上がるにつれ、さまざまな草、花、木が花粉を作り出す。ただ、気温のベースラインが上がると、花粉の放出も早くなる。
秋になっても気温が高いままの状態が続くと、ブタクサといったアレルギー性の高い植物の花粉シーズンも長くなる。また、大気中の二酸化炭素量が多いと、花粉量の増加にもつながる。
今回の最新研究で、ミシガン大学の大気科学者アリソン・ステイナー(Allison Steiner)氏と大学院生のYingxiao Zhang氏は北米で最も一般的な15種類の花粉について、コンピューターモデルを走らせた。このモデルは21世紀の最後の20年で気温や降雨量といった要素が花粉の生産にどう影響するかを予測したもので、2人はこの予測を1995年から2014年までの実際の花粉のデータと比較した。
ミシガン大学のアリソン・ステイナー氏とYingxiao Zhang氏。
Marcin Szczepanski/Lead Multimedia Storyteller, Michigan Engineering
例えばアメリカ北東部ではカエデの次にオーク、ハコヤナギと続くように、それぞれ異なる種類の木はそれぞれ異なるタイミングで花粉を作り出す。ところが、ステイナー氏とZhang氏のモデルはこうした花粉シーズンの一部が温暖化によって長期化し、それぞれが重なり合うようになると示している。
こうした花粉シーズンの重複は、アレルギーを持っている人々にとって「悲惨な状況を増やす」可能性があると、キニー氏は指摘する。
「気候変動によって、花粉が誘発する呼吸アレルギーは悪化しています。わたしたちの研究結果は、気候変動がもたらす花粉と付随する健康被害への影響に関するさらなる研究の出発点になるでしょう」とZhang氏はプレスリリースの中でコメントしている。
(翻訳、編集:山口佳美)