起業後、スケールさせるために必要な要素とは?渋谷にスタートアップ界隈の人々が集まる理由

東京都渋谷区は企業同士の繋がりや連携を支援するプラットフォームとして、2020年11月に「渋谷コンソーシアム~Shibuya Startup Deck(シブデック)~」を立ち上げた。渋谷区を世界的な「スタートアップの街」にしたいという思いで活動している。活動にかかわるのは渋谷区と大企業、スタートアップの三者がメインだ。組織の垣根を超えてスタートアップを支援し、新しい視点を取り込みつつ社会課題を解決していく取り組みに、どんな未来が期待できるのか。渋谷区区民部グローバル拠点都市推進室の鈴木陽一郎氏、ベスプラのCEO遠山陽介氏、パーソルテンプスタッフ第一営業本部の榎本広志氏に話を聞いた。

渋谷にスタートアップのエコシステムを作る

3人の男性

写真左から渋谷区区民部グローバル拠点都市推進室の鈴木陽一郎氏、ベスプラのCEO遠山陽介氏、パーソルテンプスタッフ第一営業本部の榎本広志氏。

「Shibuya Startup Deck」——。インタビューの始めに、この名前の由来を聞いてみた。いくつかあるというが、なかでも最もピッタリくるのが「スケートボード由来」だ。

「ストリートカルチャーの象徴であるスケートボードの板を“デック”というんです。スケボーでは、すごい技を習得するために何度もトライして、転んで、起き上がって、を繰り返します。スタートアップも同じで、トライアンドエラーでPDCAのサイクルを回しながら技術やノウハウが積み上がっていくものですよね」(鈴木氏)

渋谷といえばストリートカルチャーの街として発展してきた。そんな渋谷を世界的なスタートアップの街にしようという取り組みが本格的に始まったのは2020年1月。内閣府が「世界と伍するスタートアップ・エコシステム拠点都市の形成戦略」を進めていたこともあり、現在の「グローバル拠点都市推進室」の前身に当たる部署ができたのだ。

渋谷区のチームがスタートアップについて調べてみると、不動産を借りたり銀行口座をつくったりする際、なかなか与信が通らずに困る企業が多かったという。そこで民間の不動産会社を巻き込んでスタートアップ向けの不動産サービスの検討を始めると、好感触。金融やその他の分野でも、官民が連携してスタートアップを支援するプラットフォームを作ることに。こうした経緯から20年11月に立ち上がったのがShibuya Startup Deckだ。

鈴木陽一郎さん

鈴木陽一郎(すずき・よういちろう)。2015年東京急行電鉄(現、東急)入社。渋谷駅前エリアマネジメント等渋谷の開発に関わる官民連携プロジェクトを歴任。2020年4月より渋谷区へ派遣、渋谷区のグローバル拠点都市推進室に在籍。

Shibuya Startup Deckがミッションとして掲げるのは4つ。スタートアップが起業しやすい「環境の整備」。イノベーションの土壌となる多様性を形成するための「グローバル化」。支援、共助が生まれやすくする「コミュニティ形成」。スタートアップの成果である技術の「実証実装」だ。

「サンフランシスコなどの話でよく、カフェで食事をしながらプレゼンをしていたら、隣のテーブルに座っていた投資家が興味を持ってくれた、というのがあると聞きます。その街にいることでコミュニケーションコストを下げられる、スタートアップが困ったときに知恵や資金も手に入れられる、渋谷がそんな街になればというイメージです」(鈴木氏)

Shibuya Startup Deckに集まる現在の会員は、スタートアップ、大企業が半々で、合わせて100社ほど。スタートアップが成長しやすい環境を作り、「それぞれの豊かさを実現する街」というビジョンのもと、大企業もスタートアップも行政も互いに垣根なく意見を述べ合いつつ、社会課題を解決するための知恵やアイデアを出していくことを目指している。

スタートアップ経営、課題は成長段階に応じた人材獲得

遠山陽介さん

遠山陽介(とおやま・ようすけ)。ベスプラCEO。2012年、「本気で世界を救うサービスを目指して」(遠山氏)ベスプラ設立。認知症予防に向けた脳の健康維持アプリ「脳にいいアプリ」や安全運転のための「運転免許認知機能テスト」などをリリース。

Shibuya Startup Deckに参加するスタートアップは、この座組みをどう活用しているのか。参加スタートアップのひとつ「ベスプラ」は、高齢者の脳の健康維持アプリとして東京都八王子市などが採用している「脳にいいアプリ」で知られる。「世界を救う」という壮大な目標を掲げ「社会課題をなんとかするICT」をつくることを目指し、これまで高齢者雇用の創出をはじめさまざまな社会課題解決に取り組んできた。

「健康とかフードロス、人材、高齢者の問題…。最前線で頑張っているのはやっぱり自治体なんですよ。だから、自治体と一緒に何かをやることで協力したいという思いを強く持っていました。また、スタートアップとしてスケールしていくには、大きい事業者との連携は大きな力になります。Shibuya Startup Deckにいろんな事業者がいらっしゃるのは魅力でした」(遠山氏)

0から1を生み出したスタートアップが、その1を10に、100にスケールさせるのは容易なことではない。だが、行政やさまざまな企業とのコミュニケーションのなかで、独自に開発した技術を、どんなところに、どんな風に役立てていくのか、新しいアイデアの種が生まれることがある。

「もちろん、鈴木さんがたくさん汗をかいて、いろんな企業とスタートアップを繋ぐ企画をしてくださっているからこそなんです」(遠山氏)

現在、ベスプラが密接にコミュニケーションをとっている企業に、人材派遣のパーソルテンプスタッフがある。遠山氏は、現在取り組んでいる高齢者のヘルスケア事業をこの先、高齢者の雇用に関する事業へとつなげていけないかと考えている。そこで、さまざまな職種、さまざまな年代の人材、そして人材を扱う仕事についての豊富なナレッジをもつパーソルテンプスタッフと組むことで、課題を解決していけないかと考えているのだ。

「これから人生100年時代が来て、もっと長く働き続ける未来がやってきます。人は働くことで健康になるというエビデンスもあるんです。高齢者が、それぞれの健康状態とスキルに合った働き方ができるようにすることで、働いてもらう側も助かるような仕組みを作れたらいいなと思っています」(遠山氏)

企業の垣根を越えて「スタートアップのためのコミュニティを作りたい」

榎本広志さん

榎本広志(えのもと・ひろし)。2014年パーソルテンプスタッフ入社。人材派遣・人材紹介サービスを中心に総合人材サービスを提供する渋谷オフィス七課の責任者を務める。2020年11月より「Shibuya Startup Deck」の共同運営事業者として参画し、日々スタートアップ企業の課題について人材面からの支援を目指す。

パーソルテンプスタッフは、Shibuya Startup Deckが設立される以前から渋谷区が企業と一緒に新しい取り組みを始めるとの情報をキャッチし、手を挙げたと榎本氏は話す。

なぜ人材派遣の分野ですでに大きな存在感を持つパーソルテンプスタッフが、Shibuya Startup Deckに参加したのか。スタートアップの支援や交流に力を注ぐ理由はどこにあるのか。

「当社は『雇用の創造』を経営理念として掲げています。官民連携のような場に私たち人材会社が関わる事で、スタートアップの成長に何かしら繋がり、その企業がスケールしていくことで雇用の場が増え、雇用の創造が達成されていくことに繋がると考えています」(榎本氏)

実際に2021年には、スタートアップと企業との出会いの場をつくるShibuya Startup Deckの企画への参加をきっかけに、ベスプラを含む3つのスタートアップとの交流を始めたという。

3社は、ベスプラが高齢者雇用、他の2社が女性活躍の推進、障害者雇用の促進と、いずれも雇用にかかわる課題に取り組んでいた。そこで2021年末には、パーソルテンプスタッフとそれら3社とで、各社のもつ課題や解決策についてディスカッションなどを行うセミナーを開催した。

「セミナーで話し合ったからすぐに問題が解決する、世の中が変わるということではなく、こうしたテーマは長い時間を必要とするものです。継続していくことが必要だと考えています」(榎本氏)

もちろんパーソルテンプスタッフは、スタートアップの課題であるセールスや人的リソースの問題などの点で「支援」も行うことになる。例えば2012年創業のベスプラは、現在社員数6人。研究開発以外の人材リソースが足りない部分で、パーソルテンプスタッフを頼っている。

「スタートアップは目の前の事業に集中しがち。普段は僕が人事、経理、総務を全てやっていますが、この先、分業できる人材が必要になる時が来る。しかし、どのタイミングでどのくらい、どんな人材を配置すればいいのか、その判断は簡単ではありません」(遠山氏)

そこで人材採用のプロフェッショナルであるパーソルテンプスタッフの知見が生きることになる。榎本氏は、こうした人材採用の部分だけで協力するのではなく、よりよいアドバイス、プランを提示できるように、経営計画の立案からプロジェクトメンバーとして相談を受けられる体制が理想だと話す。企業として、既存のサービスを提供するためというよりも、スタートアップの成長をしっかりとサポートしていきたいという思いの方が強いのだという。

「スタートアップに特化した人材紹介エージェントはまだ少ないですよね。当社だけでは実現は難しいですが、Shibuya Startup Deckに参加されているHR領域の他の企業とも連携して、『渋谷にくれば人材のことをしっかり相談できる』というコミュニティを作っていきたいですね」(榎本氏)


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