100%プラントベースの素材でできたオムライス。
撮影:三ツ村崇志
大豆などを材料に作られる代替肉(植物肉)をはじめ、植物性食品(プラントベースフード)を発売する企業が増えている。
3月9日には、プラントベース食品専門のカフェ・2foodsを運営するTWOと食品メーカー大手のカゴメが、動物性タンパク質である「卵」を一切使わないオムライス「Ever egg オムライス」※を開発したことを発表した。
3月10日から2foodsの全6店舗で提供を開始しており、応援購入サイトのMakuakeでも、4月20日まで冷凍食品の「2foods プラントベースオムライス」として限定販売されている。
2foods渋谷店で「卵を使わないオムライス」の実力を確かめてきた。
※同一製造ラインで牛肉、豚肉、鶏肉、魚介類、乳製品、卵を含む製品を製造していることに注意。
ニンジンと白インゲンでふわトロな「卵」を再現
左からチキンライス、デミグラスソース、卵の冷凍食品(サンプル)。
撮影:三ツ村崇志
Ever egg オムライスは、TWOとカゴメが2021年4月に包括業務提携を結んでから共同開発してきた商品の第一弾だ。
デミグラスソースと、トマトケチャップの2種類のソースが用意されており、店頭価格はどちらも税込で1210円(テイクアウトは税込1188円)。
オムライスの主役とも言える「卵」の部分は、主にニンジンと白インゲン豆からできており、独自技術である「野菜半熟化製法」によって、洋食店で食べるような「ふわトロ」な食感を実現しているという。
カゴメの商品開発本部主任の池井崇大氏は、
「プラントベースエッグは大豆を使用することが多いのですが、原料を大豆にするとどうしてもボソボソとした食感になってしまいます。原料の組み合わせを100パターン以上試して、ニンジンと白インゲン豆を使うことになりました」
と開発の経緯を語る。
チキンライスもソースも100%植物性
デミグラスソース味のEver egg オムライス。デミグラスソースには油脂が浮かんでいるように見えるが、使用されているのは植物性の油脂。味はしっかりしてるが、あぶらっこさは感じなかった。
撮影:三ツ村崇志
実際目にしてみると、オムライスの卵の部分のツヤや半熟加減は絶妙だと感じた。人によって好みは分かれるが、普通の卵を溶いた際に現れるような「白身」が固まった部分は見られなかった。
Ever egg オムライスでは、卵だけではなくオムライスの構成要素である「チキンライス」や「デミグラスソース」「トマトケチャップ」も原料は100%プラントベースだ。
チキンライスの「チキン」には大豆ミートを使用し、カゴメ製の野菜出汁調味料などで味付けがなされている。また、デミグラスソースにはバターの代わりに豆乳バターを使用。トマトケチャップは、カゴメ特製のトマトピューレを使用するなど、味にこだわりをみせる。
チキンライスも100%プラントベースだ。
撮影:山﨑 拓実
実食してみると、デミグラスソースやトマトケチャップソースにはかなりしっかりとした味がついていた。第一印象は素直に「おいしい」と思えた。プラントベース食品はヘルシーさが売りの1つとなっているが、少なくとも「味が薄い」と思うことはなかった。
チキンライスも、大豆ミート特有の大豆臭さや、食感に対する違和感はまったくと言っていいほど感じられず、十分「チキンライス」だ。「チキン」だけを取り出して食べると、食感や味はトリの胸肉にかなり近い。
ただ、ソースをつけずに「卵」の部分だけを食べてみると、比較的タンパクな味わいで、卵特有の濃厚さが好きな人にとっては少し物足りないと感じるかもしれない。実際、Ever eggでは、卵の栄養素を完全に再現できているわけではないと、3月9日の発表会でも説明されていた。
しかしそれでも、「オムライス」として完成された商品のレベルは、「100%プラントベース」と言われなければ気が付かないレベルだ。
進む、代替「卵」の開発競争
TWOの東義和CEO(左)とカゴメの山口聡社長(右)
オンライン発表会のキャプチャ
カゴメの山口聡社長は、3月9日の発表会で、
「健康、環境に興味をもつ人が増えていく中で市場は拡大していくと思っていました。その中でTWOから声をかけていただきました。コンセプトや試食した中で『これがプラントベースフードなのか』と大変驚きました」
とTWOと業務提携に至った経緯について語っていた。
商品開発の第1弾として「オムライス」を選ぶ上では、植物性食品であることに対する「驚き」や2foodsのコンセプトである「ヘルシー・ジャンク」を体現できるかどうかなど、さまざまなことを考慮したという。世代を超えて愛される商品かどうかも重要な視点だった。
TWOの東義和CEOは、カゴメとの業務提携について、大企業とベンチャーの業務提携ではあったもののそこに明確な役割分担はなく、企画のアイデア出しから実際に試作をつくる段階に至るまで「50:50(フィフティ・フィフティ)でやってこれたと思います」と、対等な関係で開発を進めてこられたとBusiness Insider Japanの取材に答えた。
今回はオムライスという商品として提供しているが、将来的には「卵」だけを販売することも戦略として検討しており、その際には
「カゴメは販売元になるので、この先、いろいろな流通に売っていくことになった場合は、カゴメ主体でやっていただくことになります。TWOとしては、ブランディングやプロモーションにおいて、引き続き商品を世に広げていく役割を担っていければと思います」(東CEO)
と今後の展開を見据えていた。
撮影:山﨑 拓実
国内では、キユーピーが2021年6月から業務用としてプラントベースエッグの「HOBOTAMA」を発売。2022年3月17日には、市販用の新商品「HOBOTAMA 加熱用液卵風」と「HOBOTAMA スクランブルエッグ風」の販売も開始した。加熱用は脱脂アーモンドパウダーを、スクランブルエッグ風は豆乳をベースにするなど、用途に応じて原料を変える工夫を施している。
スタートアップの取り組みも見逃せない。
まだ商品化には至っていないものの、植物肉スタートアップのネクストミーツは2021年6月にBtoB用に代替卵の商品化を開始することを発表。12月には、プラントベースフードの開発を手掛けるグリーンカルチャーも、「植物性ゆで卵」のプロトタイプの開発に成功するなど、各社、代替卵の開発を進めている。
(文・三ツ村崇志)