Press service of the State Emergency Service of Ukraine/Handout via REUTERS
- ロシアは2022年2月24日にウクライナに侵攻し、その後、本格的な攻撃を行っている。
- 国連は、ウクライナで3月19日までに902人の民間人が死亡、1459人が負傷したとしているが、実際は死者数はもっと多いのではないかと述べている。
- 以下の写真は、首都キーウ郊外からウクライナ東部のマリウポリまで、かつて平和だった地域が荒廃した戦場と化している様子を映し出している。
人口140万人、ウクライナ第2の都市であるハルキウは同国の北東部に位置している
2014年10月14日、ウクライナ、ハルキウの中心にあるスムスカヤ通り。
Pavlo Pakhomenko/NurPhoto/Getty Images
ハルキウでは2014年3月以降、親ロシア派の不穏な動きが散発的に見られたが、侵攻前は都市インフラへの被害はほとんどなかった。上の写真は、クラシックな建物と店が軒を連ねる賑やかな夜のハルキウのスムスカヤ通りの様子。
2022年3月21日、破壊されたハルキウの集合住宅
自治体の職員とボランティアが、ハルキウの破壊された住宅の残骸を片付けている。
REUTERS/Vitalii Hnidyi
アルジャジーラ(Al Jazeera)が報じたところによると、2月24日のロシア侵攻開始以来、ハルキウでは少なくとも500人が死亡しているという。3月15日、600棟以上の建物が破壊されたとイーホル・テレホフ(Ihor Terekhov)市長はテレビのインタビューで語った。
ハルキウは絶え間なく砲撃を受けており、専門家によるとロシアは意図的に住宅を標的にしているという。
「これほどまでに空虚で、静かで、暗いハルキウを見たことがない。数日間の砲撃の後、歴史ある市街地はまるで第二次世界大戦中のようだ」と、ハルキウ在住でEuropean Expert Associationのリサーチ・ディレクター、マリア・アヴデーエワ(Maria Avdeeva)は語った。
キエフ郊外に位置するイルピン市は人口7万人足らずの街だ
イルピンの近隣の街並み。
iStock/Getty Images Plus
イルピニ川の近くにあるイルピンは、鉄道駅のほか自然公園や歴史的な建造物で知られている。
イルピンの鉄道橋はロシアの攻撃で破壊された
2022年3月12日、キエフ郊外のイルピンの町から逃げ出す人々。
REUTERS/Gleb Garanich
空爆によってイルピンの多くの住宅、道路、橋が被害を受けた。
ワシントンポスト紙は、市内の重要な橋が破壊され(写真上)、住民は一列になって避難することを強いられ、中には白い旗を持つ人もいたと報じた。
出国しないことを決めた人々の多くはウクライナの領土防衛軍(Territorial Defence Forces)に属し、地下シェルターなどにとどまった。
下の写真はウクライナ北部の人口28万人の都市、チェルニーヒウのシェリコワ通りにある学校だ
ウクライナ北部、チェルニーヒウにあるにある学校。
Google Maps
チェルニーヒウは、バロック様式の聖堂や修道院で知られている。
チェルニーヒウは、9世紀から13世紀半ばにかけて、複数の公国の連合体だったキエフ大公国(Kyivan Rus)の中で最も主要な都市のひとつだったと言われている。ロシアのプーチン大統領は、ロシアのウクライナ侵攻を正当化するために、このキエフ大公国を利用した。
2022年3月のチェルニーヒウへの空爆で、街の多くが破壊され、学校も大きな被害を受けた
ロシア軍の砲撃で損壊した校舎。
Press service of the State Emergency Service of Ukraine/Handout via REUTERS
チェルニーヒウでは、ロシア軍による空爆により、多くの住宅地が被害にあった。
博物館などの文化施設も破壊された。3月3日付の動画には、学校や小児病院がある住宅地での砲撃が映し出されている。また、3月16日にテレグラム(Telegram)やツイッター(Twitter)で流れた映像には、パンを求めて並んでいたチェルニーヒウの住民の少なくとも10人がロシア軍に殺害される様子が映っている。「本日、ロシア軍がチェルニーヒウでパンを買う列に並んでいた10人を射殺した」とキーウのアメリカ大使館は3月16日、Twitterに投稿した。
「このような恐ろしい攻撃は止めなければならない。我々は、ウクライナにおけるあらゆる残虐な犯罪に対する説明責任を担わせるために、利用可能なあらゆる選択肢を検討している」と同大使館は付け加えている。
ウクライナの首都キーウのスヴャトシンスキー地区には高層住宅が立ち並ぶ。この地区には34万人以上が住んでいる
キーウ、スヴャトシンスキー地区の住宅地。
Google Maps
住民によると、スヴャトシンスキー地区は、庭園や商店、カフェなどがあり、結束の強いコミュニティだという。またこの地区にはいくつかの学校と地下鉄の駅もある。
ワシントン・ポストによると、3月15日にスヴャトシンスキー地区のアパートがミサイル攻撃を受け、少なくとも4人が死亡した
2022年3月15日、首都キーウの中心部から12km離れたスヴャトシンスキー地区で、ロシアの砲撃によって発生した火災を消火する消防士たち。
Andrea Filigheddu/NurPhoto/Getty Images
これは、3月14日以降にロシアが首都の住宅地を空爆したと見られる少なくとも3回のうちの1回だとワシントン・ポストは報じている。
ウクライナ非常事態庁のFacebookへの投稿によると、16階建ての建物から少なくとも27人の住民が消防士によって救出されたという。
下の写真は2015年に撮影されたもので、マリウポリ近郊の住宅と高層アパートが写っている
2015年1月26日、ウクライナ、マリウポリの東地区。
Evgeniy Maloletka/AP
ウクライナ南東部に位置するマリウポリは、43万人以上が住む都市だ。この街は8年にわたって「ドンバス戦争」に巻き込まれており、2014年以降、ことあるごとに親ロシア分離主義者の攻撃を受けている。
BBCによると、マリウポリは2014年2月、ドネツク人民共和国の首都であると宣言されたが、その4カ月後に再びウクライナの支配下に入ったという。
マリウポリは2月24日以降、ロシア軍に包囲され、攻撃を受けている
2022年3月17日、マリウポリでロシアの攻撃で破壊されたアパートの近くに集まる人々。
REUTERS/Alexander Ermochenko
2022年3月9日、ロシアはマリウポリの小児病院と産科病棟を空爆した。アルジャジーラによると、その爆撃は1マイル(約1.6キロメートル)離れた場所でも地響きがするほどだったという。
AP通信が撮影した負傷した妊婦は、そのケガが原因となり、胎児とともに死亡したという。AP通信によると、マリウポリ市内の集団墓地には、死体が山積みになっているという。
国連は3月20日、これまでに902人の民間人が死亡、1459人が負傷したと発表した。ただし、マリウポリの避難施設への攻撃などによる被害は把握できておらず、実際の数字はさらに増える可能性が高い。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)