米投資信託評価機関モーニングスターは、年明けの急落後低迷が続く株式市場のなかで、長期投資で超過リターンを期待できる銘柄を特定している。
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年明け前、米投資信託評価機関モーニングスターは2022年の展望として、米国株の割高感に注目していた。
同社米国株チーフストラテジストのデイブ・セケラは、2022年1月、2月に株式市場が下落すると予測し、その主な理由として以下の4つを挙げていた。
- アメリカ経済の成長は続くものの、2021年よりペースが鈍化する
- 米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めに動く
- インフレ高進の過熱が少なくとも2022年上半期までは続く
- 2022年内を通して金利上昇が続く見通し
2021年はS&P500種株価指数が27%近く上昇した当たり年だったこともあり、セケラの予想に多くの市場関係者が賛同した。
しかし、市場は予想を上回る動きを見せた。
2022年の最初の取引日(1月3日)は、S&P500種株価指数が過去最高値を記録した最後の日になった。その後、2月24日にはロシアがウクライナに軍事侵攻し、地政学的リスクも織り込まなければならなくなった。
「ウクライナ侵攻が引き起こす最大のリスクは、コモディティ価格の上昇、そして私たちがいま目にしているような原油や小麦、トウモロコシなどコモディティ価格の上に積み上げられる(需給を反映しない)いわゆる『戦争プレミアム』、さらにはそれらがインフレの過熱と加速をあと押しし、年明け前の見通しを上回る可能性があることです」
「3月初頭、当社は2022年のインフレ予測をアップデートし、年間平均インフレ率を3.6%から4.3%に引き上げました。同時に、アメリカの実質国内総生産(GDP)予測を3.9%から3.7%へと若干引き下げています」
その後、モーニングスターの調査対象銘柄に含まれる米国株はすべて、適正価格を10%近く下回る水準まで下落した(同社の適正価格は、企業の将来キャッシュフローとその予測可能性に基づいて算出される)。
同社は高インフレがさらに数カ月続くものの、2022年下半期には緩和されると予測する。
その理由として、インフレの要因となった供給障害が解消され、数四半期かけて消費者行動の正常化が進み、サービスセクターが成長することを挙げる。
また、モーニングスターは2021年、最も割安感のあるセクターとしてエネルギーを挙げていたが、年初来最高のパフォーマンスを見せつけ、すでに適正な株価水準に達したとする。
セケラによれば、エネルギー銘柄をオーバーウェイト(=資産の配分比率を多くする)してきた投資家は、イコールウェイトに戻す方向で配分を見直すタイミングだという。
株価上振れ余地の大きい7銘柄
現時点における投資家へのアドバイスとしては、短期的な市場の変動に惑わされず、長期にポジションを保有すること。
それを前提に、大型株、中型株、小型株にかかわらずグロース(高成長)セクターの銘柄が昨今の株価急落を受けて足もとで圧倒的に割安な水準で推移していることを特筆する。
セケラとモーニングスター欧州株調査部門を率いるアレックス・モロゾフは、Insiderの取材に対し、同社がレーティングで4つ星あるいは5つ星ランクの高評価を与える銘柄のうち、割安で「長期投資を通じて超過(=ベンチマークを上回る)リターン」を期待できるものを具体的に示した。
通信セクターでは、メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)とアルファベットがいずれもきわめて割安。
モーニングスターはメタの予想適正価格を400ドルに設定しているが、3月16日の終値はその半値近い203.63ドルだった。言い換えれば、最大93%のアップサイド(=上振れ余地)があることになる。
また、アルファベットの予想適正価格は3600ドルで、同日の終値は2665.61ドル。こちらは最大26%のアップサイドを期待できることになる。
「年明けから注目してきたテーマのひとつが、2022年下半期の消費者行動の正常化です。行動制限化にあった人々の行動が活発化し、大衆の集まるイベントへの参加が本格化すれば、サービスなど一部のセクターで業績回復が進むでしょう」
配車サービス大手のウーバーは、そうした行動正常化の恩恵を受ける企業のひとつ。モーニングスターの評価は5つ星。予想適正価格は73ドル、現在の株価水準は32ドル前後。
飲料大手アンハイザー・ブッシュも同様だ。サービスセクターがリアルイベント参加者の回復を実現できれば、アルコール飲料セクターもその恩恵をこうむることになる。現在の価格水準は59ドル前後、モーニングスターの予想適正価格は90ドル。
また、破壊的技術の領域で注目されるのが、データ分析ソフトウェアのパランティア。取引価格は現在12ドル前後、モーニングスターの予想適正価格は31ドル。3倍近いアップサイドの可能性がある。
アジア市場に目を向けると、モーニングスターの評価ランクが高いのはアリババとテンセント。長期的に見てきわめて魅力的な成長ポテンシャルがあるという。前者の予想適正価格は188ドル、後者は108ドル。現時点ではいずれも適正価格の半分以下で取引されている。
ただし、上記2銘柄については、投資家は中国当局の規制を念頭に置いて投資する必要がある。また、直近ではパンデミック初期以来の感染拡大に直面し、いくつかの大都市で数百万人を対象とするロックダウン(封鎖措置)が行われていることにも注意したい。
「中国企業への投資にはリスクが伴うことは間違いありません。同国の規制環境はきわめて不透明です」
(翻訳・編集:川村力)