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ロシアによるウクライナ侵攻により、多くのソーシャルメディア企業が政治的にも経済的にも迅速な行動をとらざるを得なくなった。
ここ数週間で、Meta、Reddit、Twitchなど、アメリカに拠点を置く多くの企業が偽情報と見られる情報の取り締まりを行い、ロシアに対する制裁に踏み切った。
これを受け、ロシア政府は国内で人気の高いサイトの一部を閉鎖している。
ロシアの国民もクリエイターたちも、こうした動きの影響を受けている。本稿では、ロシアのウクライナ侵攻が続くなか、主要なSNSプラットフォームがどのような影響を受け、どう対応してきたかを追う。
アクセスを遮断されたFacebook
2022年3月上旬からロシア国民はFacebookにアクセスできなくなっている。ロシア国営メディアのタス通信によると、ロシア政府は合法的にFacebookに「過激派組織」という烙印を押そうとしているという。メタのシェリル・サンドバーグ(Sheryl Sandberg)最高執行責任者(COO)が3月8日に語ったところによると、ロシアがFacebookへのアクセスを遮断した主な理由は、ロシアの国営メディアの投稿に対する「ファクトチェック」をFacebookがやめなかったからだという。
その一方で3月上旬、Facebookは「プーチンとロシア軍に暴力と死を」と呼びかける投稿を一時的にユーザーに許可したとロイターが報じた。メタの広報担当者はロシア国営放送に対し「『ロシアの侵略者に死を』などの表現は、通常であれば規定違反になる」と述べている。
Instagramへのアクセスも遮断
ロシアの情報通信監督当局、通称ロスコムナドゾル(Roskomnadzor)は2022年3月中旬、国内8000万人のInstagramユーザーは、同SNSにアクセスできなくなると発表した。CIAによると、今回のアクセス遮断は、メタが「ロシア国民に対する暴力を呼びかけるような情報の掲載を容認するという異例の決定」を下したことを受けたものだという。
Instagramの責任者、アダム・モッセーリ(Adam Mosseri)はこのアクセス制限について3月中旬、「ロシア国民が互いに分断され、世界から取り残される。こんなことは間違っている」と述べている。
Twitterのアクセス制限は長期化か
ここ数週間、イギリスのインターネット監視団体、ネットブロックス(NetBlocks)は、ロシアの複数の通信事業者の間でTwitterへの接続が大幅に中断、または障害を起こしていると報告している。BBC記者スティーブ・ローゼンバーグ(Steve Rosenberg)は、Twitterは「厳しく規制されている」とツイートし、自分が発信した内容はかなり遅れて投稿されたと言う。
TikTokはライブストリーミングと新規投稿を停止
人気アプリ「TikTok」がロシア国内での使用を制限したのは、同国の新しい「フェイクニュース」法に対応するためだ。同法では、政府が「フェイクニュース」と見なしたものをシェアした場合、投獄される恐れがある。
「当社の最優先事項は、従業員とユーザーの安全を確保することである」とTikTokは2022年3月に文書で発表し、「この法律による安全上の影響を確認する間、やむを得ずロシアでの当社のライブストリーミングと新規コンテンツの投稿を停止する」とした。
Googleは検索エンジンやYouTube動画を含む広告配信停止
「異例の事態を受け、ロシアでGoogleの広告を一時的に停止します」とGoogleの広報担当者は2022年3月、Insiderに語った。「事態は刻々と変化しており、必要に応じて引き続き最新情報を伝えていくことになります」
この決定は、ロスコムナドゾルが、ウクライナに関する「誤った政治的情報」を含むYouTube上の広告をすべて遮断するよう要求したことを受けてされたものだ。
LinkedInは2016年からすでにロシアでの使用は禁止
LinkedInの広報担当者によれば、同社はロシアとの間に商取引関係はほとんどないという。ロシアは、すべてのインターネット関連企業に個人情報を自社サーバー内に保存することを義務付けているが、同社が2016年にこのロシアの法律に違反して以来、LinkedInのサイトはロシア国内からのアクセスがブロックされている。LinkedInはロシアにおける営業活動も停止しており、同ウェブサイト上にあるロシア国営メディアRT(旧ロシア・トゥデイ)とスプートニク(Sputnik)の企業ページをブロックしているとした。
Patreonは一部地域で3月下旬にサービス停止
Patreonは3月下旬から、米国財務省外国資産管理局(OFAC)の制裁の対象となった地域の人々へのサービスを停止する。Patreonの広報担当者はInsiderに対し、同社はウクライナのドネツク(Donetsk)やルハンスク(Luhansk)といった地域(訳注:ウクライナ政府の管轄が及んでいない地域)のユーザーやクリエイターらに対してサービス停止を通知したと語った。
さらに同社は「我々はロシアにいるクリエイターや顧客とも連絡を取り、国際銀行システムから排除された銀行をクリエイターが使用した場合、多額の支払いが滞ったり、支払いが困難になったりすることを通達した」と述べた。
Snapchatは広告を停止。ヒートマップ機能も一時的に停止
メッセージアプリのSnapchatは2022年3月初めに発表した文書の中で、ウクライナを支持し、ロシアとベラルーシでの広告を一時停止して制裁にも参加すると述べた。同社は「今後も家族や友人への重要なコミュニケーションツールであり続けるため」、ロシア、ベラルーシ、ウクライナのユーザーがSnapchatを使い続けられるようにするとした。
また同社は、ロシア軍がウクライナへの攻撃計画に利用する可能性が懸念されることから、ウクライナで提供している「ヒートマップ(heat map)」機能も一時的に無効化している。ヒートマップ機能で色分けされたマップは、Snapがどこで多く投稿されているかを示すことができるからだ。
Twitchのロシアのストリーミング配信者への支払い一時的に凍結
ロシアに対するアメリカとEUの経済制裁に協調するため、ライブストリーミングプラットフォームのTwitchは3月上旬、ロシアのユーザーに対し、彼らのストリーミング配信に対する支払いが凍結され、当面の間コンテンツを収益化できなくなる旨をメールで通達した。
ワシントン・ポスト紙が確認したEメールによると、同社はストリーミング配信者らに対し、「我々は、皆様がどれほど苛立ち、困難な状況にあるかを理解しています。代わりとなる金融機関が見つからない場合は、支払いが可能となり次第、皆様がこれまで得た収入の支払いを行えるよう最善を尽くします」と伝えたという。
Redditはロシアの国営メディアなどへのアクセスを制限
Redditの管理者らはウクライナ支持の一環として、ロシアのドメインである「.ru」で終わるサイトへのアクセスをすべてブロックすると発表した。
Redditの管理者の1人は、2022年3月初めにReddit中のカテゴリーであるsubredditの「r/ModSupport」に次のように投稿している。
「この戦争はサイバー上の戦いという要素が大きく、コンテンツが不正に操作される可能性があるため今回の決定が下された。一見無害に見えるリンクでも、悪意がないとは言えない人物が運営している可能性がある」
「これはかなり広範囲に影響が及ぶ決定であることは確かだが、ほとんどの人にとって、そのようなコンテンツを共有する方法は他にもある」と、その投稿には記されている。
OnlyFansはクリエイターへの支払いを一時凍結後再開
OnlyFansを利用するロシアとベラルーシのクリエイターたちは、2022年2月下旬に一時的に支払いを打ち切られ、支払いをしてくれたファンに対するDMを送ることもできなかった。OnlyFansは、ロシアのユーザーが広く利用しているデジタル決済サービスであるスクリル(Skrill)が同国での支払いを停止したことを受け、クリエイターへの支払いを停止した。
しかし、OnlyFansはロシアのクリエイターのための解決策をすぐに見出した。同社の広報担当者によれば、同社は現在、パクサム(Paxum)やコスモ(Cosmo)といった決済サービスを使用しており、影響を受けたユーザーらは今後も補償を受けられるという。
VPNを使ってSNSへのアクセスを試みるロシア国民
ロシアでは、SNS上から締め出されるユーザーが増えているため、VPN(仮想プライベートネットワーク)の需要が急速に高まっている。複数のVPN分析サイトによると、ロシアでは国際的なニュースサイトのロシア版を含む200以上のウェブサイトが制限されていると報告されている。
VPNプロバイダーの1つ、アトラスVPN(Atlas VPN)によると、3月中旬の時点でロシアでは1万件以上のVPNプラグインがインストールされているといい、これは同社としては過去最高だという。
(翻訳・渡邉ユカリ、編集・大門小百合)