ロシア軍がウクライナに侵攻するまでに、世界で何があったのか?(解説)【再掲】

(※本記事は1月25日に掲載したものを再編集・再掲したものです)

ロシアのプーチン大統領は2月24日に「特殊軍事作戦」を決定。ロシア軍をウクライナに侵攻させた。

ロシアのプーチン大統領は2月24日に「特殊軍事作戦」を決定。ロシア軍をウクライナに侵攻させた。

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ロシアがウクライナとの国境周辺地域で軍備を増強しており、19万人規模ともされるロシア軍がウクライナに侵略するのではないかと懸念されている。

旧ソ連圏のウクライナは、東をロシア、西はポーランド・ハンガリーなどのEU圏、南は地中海へとつながる黒海・アゾフ海に面している。まさにロシアとヨーロッパに“挟まれる位置”にあり、国内でも大統領選などで親ロシア派と親欧米派が対立してきた。

ウクライナはロシアとヨーロッパに挟まれる位置にある。

ウクライナはロシアとヨーロッパに挟まれる位置にある。

Pete_Flyer / Getty Images

こうした中で、ロシアのプーチン政権はウクライナのEU加盟やアメリカと西ヨーロッパの集団安全保障体制「NATO(北大西洋条約機構)」への加盟を警戒し、圧力をかけ続けてきた。

「ウクライナ情勢」が緊迫化するこれまでの大まかな政治的な経緯を、外務省の資料などをもとに簡単に振り返る。

【※追記】ロシアのプーチン大統領は2月24日に「特殊軍事作戦」を決定。ロシア軍をウクライナ領内へさらに侵攻させた。

【緊迫化するウクライナ情勢、これまでの経緯は?】

(1)2014年 親ロシアのヤヌコーヴィチ政権崩壊

2014年1月29日、ウクライナの首都キーウ(ロシア語表記:キエフ)。当局と反政府組織メンバーが対峙。

2014年1月29日、ウクライナの首都キーウ(ロシア語表記:キエフ)。当局と反政府組織メンバーが対峙。

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きっかけは2013年11月のことだった。ウクライナでは、親ロシア派のヤヌコーヴィチ大統領がEUとの連合協定をめぐる交渉を停止。

これを受けて、EU加盟に賛成する野党やヤヌコーヴィチ政権の汚職を批判する市民が大規模な反政府デモを起こした。

2014年2月半ばには100名以上の死者を出すデモにいたり、ヤヌコーヴィチ氏はロシアに亡命。代わってヤツェニューク首相が暫定政権を発足させた。

(2)-1 2014年 ロシアがクリミア占領(クリミア危機)

2014年2月、ウクライナ領クリミア自治共和国議会の建物。クリミア自治共和国の旗の隣にロシア国旗が掲げられた。

2014年2月、ウクライナ領クリミア自治共和国議会の建物。クリミア自治共和国の旗の隣にロシア国旗が掲げられた。

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ところが、これにロシアが報復措置ともとれる動きを見せる。

2014年3月、黒海に面したウクライナ領クリミア半島内の自治領「クリミア自治共和国」にロシアが自国民保護の名目で侵攻した。クリミア自治共和国では住民の約6割がロシア系とされる。

こうした中で「共和国政府」とセヴァストーポリ特別市が一方的に独立を宣言。違法な「住民投票」を実施し、ロシアはクリミア半島を違法に「併合」した。以降、ロシアによる一方的な占領状態が続いている。

クリミア半島にはロシア黒海艦隊の基地があり、ボスポラス=ダーダネルス海峡を経て地中海へと抜けられるため、ロシアにとって軍事的な要衝である。


(2)-2 ロシアを後ろ盾とする武装勢力がウクライナ東部(ドンバス地方)の一部を実効支配

ロシアによる不法占領を受けて、ウクライナ東部でも情勢が急激に悪化。ドンバス地方ではロシアへの編入を求める武装勢力がの一部地域を実効支配し、ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を自称。一方的に独立を宣言した

ウクライナはこれらを反政府武装勢力とみなし、占領された地域を取り戻すべく「反テロ作戦」を実施。戦闘状態に入った。

2014年3月、国連総会は「ウクライナの領土保全」について採決。「住民投票」の無効や他国によるウクライナの国境線の変更を認めないことを「賛成100、反対11、棄権58」の賛成多数で採択した


(3) 2014〜15年「ミンスク」合意

2022年1月20日、ウクライナの反政府組織「ドネツク人民共和国」の戦闘員。

2022年1月20日、ウクライナの反政府組織「ドネツク人民共和国」の戦闘員。

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ウクライナ東部での紛争激化を受けて、ロシア・ウクライナ・ドイツ・フランスの4カ国は、2014〜15年に和平プロセスを定めた「ミンスク合意」(2014年:ミンスク1、2015年:ミンスク2)を締結した。

2015年の「ミンスク2」の主な内容は、武器の即時使用停止・外国部隊の撤退・OSCE(欧州安全保障協力機構)による武器使用停止の監視・ドンバス地方の「特別な地位」に関するウクライナの法律採択・OSCEの基準に基づく前倒し地方選挙の実施などだ。

しかしロシアとウクライナは、ドンバス地方でロシアを後ろ盾とする武装勢力が実効支配する地域に高度な自治権を持たせる「特別な地位」を認めるという条件やドンバス地方で実施される地方選挙のタイミングなどをめぐって対立。

ミンスク合意に記された内容をどのような順番で履行するのか、動向次第では武装勢力の不法占領状態に法的根拠を与えることのなりかねないとウクライナは懸念している。

プーチン大統領は2019年4月、ウクライナ東部の武装勢力が支配するドンバス地方の住民にロシアのパスポート発行を認める大統領令に署名している。ただし、ウクライナでは現在二重国籍を認めていない

ウクライナでは、現在国籍の二重所有は認められておらず、法によれば、誰よりまず公務員とあらゆる議会の議員による所有が許可されていない。(ウクライナ国営通信社「ウクルインフォルム」


(4)2019年 ウクライナ、将来的なNATO加盟方針 → ゼレンスキー大統領就任、武装勢力と停戦合意

ウクライナのゼレンスキー大統領(2020年世界経済フォーラム、ダボス会議)

ウクライナのゼレンスキー大統領(2020年世界経済フォーラム、ダボス会議)

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ウクライナは東部での情勢悪化を受けて、徴兵制の復活を含めて軍備増強を進めた。

2019年2月には憲法を改正し、将来的なEU(欧州連合)・NATO(北大西洋条約機構)加盟を目指す方針を明記した(※なおNATO側は、2008年のNATO首脳会議でウクライナの将来的な加盟を認めている)。

一方、2019年5月に就任したゼレンスキー大統領は、親EU路線をとりつつもロシアとも対話の用意があると表明。

2020年7月、ようやくウクライナとロシアを後ろ盾とする武装勢力との間で停戦合意が実現した。ところが、2021年に入ってから停戦合意違反が増加。死傷者が相次いだ。


(5)2021年4月・10月 ロシア軍が国境に部隊配備「ウクライナのNATO加盟は認めない」

2021年10月18日の衛星写真。「クリミア自治共和国」のノヴォオゼルノエでロシア軍の配備が確認された。

2021年10月18日の衛星写真。「クリミア自治共和国」のノヴォオゼルノエでロシア軍の配備が確認された。

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2021年4月と10月以降、ウクライナとの国境付近でロシア軍の増強が確認された。

ロシア側はNATOがウクライナを軍事的に支援し、ウクライナもロシアとの国境地帯に軍を集結させていると主張。軍事行動を正当化しようと企図しているようだ。

2021年12月10日、ロシア外務省はウクライナとジョージアの将来的なNATO加盟を認めた2008年NATO首脳会議の決定取り消しを求める声明を発表。NATOがこれ以上拡大しない確約や国境付近での軍事演習の停止を要求した。

これに対し、アメリカ国務省「ロシア政府は、ウクライナとの国境に10万人以上の軍隊を配備し、現在の危機を引き起こした。ウクライナ側には同様の軍事活動はなかった」とロシア側の主張を否定している。

プーチン政権は冷戦後の1990年代からNATO加盟国が東ヨーロッパに拡大したことに不信感を持っており、特にNATO軍のミサイルが東ヨーロッパに配備されることを警戒している。

目下、ロシア軍はウクライナを取り囲むように19万人規模の軍部隊を配備しているとされ、ウクライナ北部に面するベラルーシにもロシア軍が展開。

2014年のクリミア占領時のように、ロシア軍が再び侵攻するのではないかという懸念が生じ、軍事的緊張が続いている。



【2022年1月:ロシアの軍事的圧力、米・欧は警戒】

ブリンケン米国務長官「全面戦争の時代に引き戻されてしまう」

アメリカとヨーロッパ各国は外交努力で事態打開を目指している。アメリカのブリンケン国務長官は1月20日にドイツ・ベルリンを訪問。ベルリン・ブランデンブルク科学・人文アカデミーでの演説「(ロシアの行動を見過ごせば)全面戦争の脅威が全ての人の頭上に漂っていた、もっと危険で不安定な時代に引き戻されることになる」と警鐘を鳴らした。ブリンケン氏は1月21日、ロシアのラブロフ外相ともスイス・ジュネーヴで協議。だが大きな進展はなく、今後も協議を継続する方向で一致した。

NATOは増派、アメリカは武器供与&米軍8500人派遣準備

ウクライナ情勢の緊張悪化を受けてNATOは1月24日、東ヨーロッパへ艦船や戦闘機などの増派を決定した。

アメリカも対抗措置として、すでにウクライナに武器を提供している。米国防総省は東ヨーロッパに8500人規模の米軍を派遣する用意だ。

バイデン大統領は1月24日、イギリスのジョンソン首相、フランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相、NATOのストルテンベルグ事務総長、EUのフォンデアライエン欧州委員長らとオンラインで会談した。

ストルテンベルグ事務総長は会談について「ロシアがさらにウクライナへと侵攻すれば、深刻なコストを伴うということで一致した」とツイートしている。

会談後、米ホワイトハウスは「ウクライナの主権と領土保全への支持」を表明した。

ドイツはウクライナへの武器供与を拒否、海軍トップは“失言”で辞任

ドイツ海軍のシェーンバッハ総監

ドイツ海軍のシェーンバッハ総監

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ただ、EU・NATO内の足並みは乱れている様子もささやかれる。アメリカがウクライナに武器を供与し、NATOの加盟各国が増派する中、ドイツはウクライナへの武器提供を拒否している

さらにドイツ海軍のカイ=アヒム・シェーンバッハ総監(海軍中将)が1月21日、ウクライナ情勢をめぐりロシアが侵攻することはあり得ないとした上で「(クリミア半島は)もう戻ってこない」などと発言。ウクライナ側はこの発言に猛抗議し、シェーンバッハ総監は辞任した

また、天然ガスの輸入をウクライナ経由でロシアからの輸入に依存していることもドイツにとっては懸案のようだ。米ニュースサイト・週刊誌「ワシントン・エグザミナー」のトム・ローガン氏はウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿で、こう論じている。

ドイツ政府の対応からは、厳しい現実が分かる。


それは、米国と第2次大戦後の民主的国際秩序が、中国・ロシアという2つの最も重大な安全保障上の脅威に直面する中で、ドイツはもはや信頼できる同盟国ではなくなったということだ。


ドイツにとっては、安価なガス、中国向け自動車輸出、そしてプーチン氏を怒らせないことが、民主主義に支えられた同盟諸国の結束よりも重要なように見える。


ウクライナの運命は、ドイツが担うべき責任の重さを伝えることになるだろう。

アメリカ国務省は1月24日、ウクライナの首都キーウ(ロシア語表記:キエフ)にあるアメリカ大使館員の家族や滞在中の民間人に国外退避を命じた。

また、必要不可欠な業務遂行に従事する職員以外にも退避を認めた。イギリスも24日、大使館員の家族と一部大使館員の退避を決めた。

日本政府もウクライナ全土の危険情報をレベル3の「渡航中止勧告」に引き上げている(※2/11付でレベル4「退避勧告」に引き上げ)。


【2月上旬〜中旬:米・欧の指導者、外交に望み】

米・欧の首脳と、ウクライナのゼレンスキー大統領、ロシアのプーチン大統領。

ウクライナ情勢をめぐり、欧米各国の首脳が外交的解決に望みを託し、動きを活発化させている。一方のロシア側のラブロフ外相がプーチン大統領に欧米との交渉を続けるよう促したのとの報道も出ている。

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2月に入り、アメリカは兵士3000人を東欧へ追加派兵するなどNATO諸国は引き続きロシアへの対抗措置をとっている。

一方、ロシア軍は隣国ベラルーシとの合同軍事演習を2月10日〜20日まで実施。ウクライナを取り囲むように13万人規模ともいわれるロシア軍が展開。黒海にも艦隊を派遣している。

こうした中でも、各国首脳はウクライナ問題の外交的解決に望みを託し、動きを活発化させている。

バイデン米大統領とプーチン露大統領が会談、議論は平行線

アメリカのバイデン大統領とロシアのプーチン大統領は2月12日に電話会談を実施。バイデン氏はロシアがウクライナに侵攻した場合「同盟国とともに断固対応し、迅速に厳しい代償を加える」と伝えた

一方プーチン氏は、NATOが東欧への拡大停止などについて「意味のある回答がない」と主張。ともに従来の立場を主張し、平行線に終わった。

ロシア大統領府によると「両首脳の口調はかなりバランスが取れており、ビジネスのようであった」という。


米大統領と英首相「外交のための“重要な窓”は残されている」

バイデン大統領とイギリスのジョンソン首相は2月14日に電話で会談。米ホワイトハウスの発表によると、両首脳は「ウクライナの主権と領土の一体性に対する支持」を再確認した。

また、ロシアが軍事的緊張をさらにエスカレートさせる行動を選択した場合は「“深刻な結果”をための準備」を含め、同盟国と緊密な協調をとることを強調した。

イギリス首相官邸によると、両首脳は「外交のための“重要な窓”は残されている」と語ったという。

一方で、ヨーロッパ各国がロシアから輸入している天然ガスについて「(ロシアへの)依存度を下げる必要性を繰り返し強調した」とし、「この動きは、他のどの動きよりもロシアの戦略的利益の核心を突くものである」との認識を示した。

ジョンソン氏は14日、ウクライナ情勢について「我々は絶望の危機に瀕しているが、プーチン大統領が(ウクライナから)後退する時間はまだ残っている。我々はみんなで対話し、ロシア政府がロシアにとって悲惨な過ちとなることを避けるように促している」とツイート。外交的解決への希望を捨てていないことを示した。

上記のツイートからおよそ4時間20分後、ジョンソン氏はバイデン氏との会談内容についてもツイート。「ロシアが、ウクライナへの脅威から身を引くための“重要な窓”があることで合意した」「ウクライナへのさらなる侵攻は、ロシアと世界に甚大な損害をもたらすだろう」とつづった。

BBCによると、米英首脳の電話会談時間は40分だった。


ドイツは「ノルドストリーム2」が気がかりか

ドイツのショルツ首相(左)とウクライナのゼレンスキー大統領

ドイツのショルツ首相(左)とウクライナのゼレンスキー大統領

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2月7日にはフランスのマクロン大統領がモスクワでロシアのプーチン大統領と、8日にはウクライナの首都キーウでゼレンスキー大統領とそれぞれ会談した。

14日にはドイツのショルツ首相もキーウ(キエフ)でゼレンスキー氏と会談した。

ショルツ氏はウクライナへの連帯を示し、経済支援を表明した。一方で、これまで拒否してきた武器供与については改めて否定。ロシアからウクライナを経由せず、ドイツへと天然ガスを輸送できるパイプライン「ノルドストリーム2」についても言及しなかった。

ゼレンスキー氏は、ノルドストリーム2について「(ロシアの)地政学的な武器だ」と批判した

ポリティコによると、ウクライナのNATO加盟についてショルツ氏は「(ウクライナの)NATO加盟問題は実質的な議題になっていない」「ロシア政府が、実質的に議題になっていないことを大きな政治問題にしているのは奇妙なこと」と述べた。

一方、ゼレンスキー氏は、NATO加盟は「夢」としつつ、「我々にとって、NATO加盟は絶対的な目標ではない」「欧州の安全保障構造をめぐる(ウクライナの)将来はウクライナが決める」とも述べた。ショルツ氏は15日、プーチン大統領とも会談する予定だ。

ロシアのラブロフ外相、プーチン大統領に交渉継続を促すもパフォーマンス?

ロシアのプーチン大統領(右)とラブロフ外相

ロシアのプーチン大統領(右)とラブロフ外相

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ロシアのラブロフ外相はプーチン大統領との会議の中で「外交的な話し合いはまだ尽くされてない」との見解を示し、プーチン氏に欧米と交渉を続けるよう促した

この模様は国営テレビで中継された。こうした融和姿勢をアピールすることは、欧米からの譲歩を引出したい思惑が垣間見える。

ただ、米CBSは米政府当局者の話として「ロシアは長距離砲とロケットランチャーの一部を発射位置に移動させ、ウクライナを威嚇している」「ロシア軍の一部の部隊は集合場所から離れ、“攻撃態勢”に入り始めている」と報道。

アメリカ国務省は、在ウクライナの大使館職員をウクライナ西部リヴィウに移転したと発表した

ロイターによると、ウクライナのゼレンスキー大統領は14日のテレビ演説で、ロシアが16日にも侵攻する可能性があるとの情報を示し、この日を「連帯の日」にするべく「24時間以内に帰国し、ウクライナの軍隊、外交官、国民と共にあるよう呼び掛ける」と述べた。


インタファクス通信「一部部隊が基地に帰還へ」

ロシアのインタファクス通信は2月15日、ロシア国防省の発表として、ロシア軍の一部の部隊がウクライナとの国境付近での軍事演習を終え、基地に帰還しつつあると伝えた。この部隊はロシアの西部軍管区および南部軍管区の一部部隊だという。

ロイターは「ロシアと米欧の緊張が緩和する可能性がある」と報じたが、なおも予断を許さない情勢だ。

プーチン大統領、ウクライナ東部で「ジェノサイド」→米国務省「根拠なし」

ロイターによると、ロシアのプーチン大統領は2月15日、ドイツのショルツ首相との共同会見で、ロシアを後ろ盾とする武装勢力が実効支配するウクライナ東部のドンバス地方の状況について「ジェノサイド(大量虐殺)」だとウクライナを批判。ミンスク和平の履行を通じて紛争を解決するよう要求した。

【※】アメリカ国務省は2月16日、プーチン氏が主張した「ジェノサイド」について「これらの主張のいずれにも真実の根拠はない」と否定。軍事行動の口実として使用するために作り出した誤った主張だと批判した。

バイデン大統領「ロシア軍の撤退確認できていない」「引き続き脅威」

アメリカのバイデン大統領は2月15日、ウクライナ情勢について演説し、ロシア軍の一部撤退の発表について、事実だとすれば「良いことだ」としつつ、「我々はまだそれ(撤退)を確認できていない」「彼らは依然として、とても脅威的な位置にある」とした

バイデン氏はウクライナ国境に展開中のロシア軍は15万人以上にのぼるとの見解を示し、なおも侵攻の危険性があると警鐘をならした。

一方で「外交を継続するという、ロシア政府の提案に同意する」とも述べた。

バイデン氏は、ロシア軍がウクライナに侵攻したことでロシアに制裁を課した場合、エネルギー価格の高騰を招き、経済にも甚大な影響を与えることを示唆した。

その上で、「アメリカ国民は、民主主義と自由を守るためには決してコストを厭わないことを理解している」と述べた。

演説の中ではロシア国民に向けて語りかける場面も。「ロシアの皆さん、あなた方は我々の敵ではありませんし、ウクライナに対して血みどろの破壊的な戦争を望んでいるとも思えません」と話した。

ウクライナ当局「サイバー攻撃受けた」

ウクライナ当局は国防省、主要銀行のサイトなどがサイバー攻撃(DDos攻撃)を受けたと2月15日、発表した。国防省や軍、国内の主要銀行のページが閲覧できない状態になった。

ロイターは匿名の欧州外交筋の話として「(サイバーでない)物理的な攻撃が近く実施されるか、ロシアがウクライナに干渉し続ける可能性があることを意味している」と伝えた。

ロシア下院、ウクライナ東部の武装勢力支配地域「独立国家」に 大統領に承認求める

ロシアの下院は2月15日、ウクライナ東部で「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を自称しロシアを後ろ盾とする武装勢力について、プーチン大統領に独立国家として承認するよう求める決議を賛成多数で採択した。

ただ、国家承認をすれば2015年にドンバス地方での紛争停止プロセスを定めた「ミンスク合意」に反するため欧米との対立がさらに深刻化する可能性がある。

NATOのストルテンベルグ事務総長は「(独立が)承認されればウクライナの領土保全と主権に対するあからさまな侵害となる。ドネツィク(ロシア語表記:ドネツク)とルハンシクは疑いなく、国際的に認められたウクライナの国境内にある」「ミンスク合意にも違反し、同合意に基づく政治的解決の模索が一段と難しくなる」と懸念を示したとロイターが伝えた。


NATO事務総長「ロシア軍は撤退していない」

NATOのストルテンベルグ事務総長は2月16日のNATO国防相理事会の初日終了後の記者会見で、ロシア軍の「一部撤退」発表について、「外交が続く可能性があるというモスクワからの兆候がある」としながらも、「これまでのところ地上での緊張緩和の兆候は見られず、軍隊や装備は撤退していない」と述べた。

その上で「もちろんこれは変わるかもしれない。しかし、今日私たちが目にしているのは、ロシアは攻撃の準備ができている大規模な侵略軍を維持しているということだ」と非難した。

一方、「同時にNATOは対話の準備を続けている。 ロシアが紛争の瀬戸際から後退するのに遅すぎることはない。平和の道を選んでほしい」と、外交を通じた対話努力を続ける姿勢を見せた。

NATO国防相理事会はこの日、NATOの抑止力と防衛力をさらに強化するため「中欧・東欧・南東欧への新たな部隊の設置を含めた選択肢」を策定する方針を決めた。

ストルテンベルグ氏は理事会の冒頭で「我々は、ヨーロッパの安全保障にとって危険な瞬間に直面している。ロシアはウクライナの国境に侵攻軍を集結させた」発言

一方で「同時にモスクワからは外交を続けるべきというサインも出ている。このことは、慎重な楽観主義の根拠となる」と外交努力を続ける姿勢を見せるも、ロシア軍の撤退を確認できていないため緊張緩和の兆候は見られないとの認識を示した。

ストルテンベルグ氏は国防相理事会に先立つ記者会見「ロシアは(ウクライナ国境での)軍事力増強を続けているようだ」との見解を示していた。


【2月17日:米大統領「ロシアの侵攻、数日以内か」】

「砲撃あった」 ウクライナ政府と武装勢力が主張

ウクライナ東部ドンバス地方のルハンシク州(ロシア語表記:ルガンスク)で2月17日、ウクライナ軍とロシアを後ろ盾とする武装勢力とが「停戦ラインを越えた砲撃があった」と互いを非難し合ったとロイターが報じた。

報道によると、武装勢力は自らが実効支配する領域に「ウクライナ政府軍が過去24時間に4回」砲撃したと主張。これに対しウクライナ側は、武装勢力の砲撃が幼稚園を直撃したとし、非難した。

ウクライナ東部では、これまでもウクライナ政府軍と武装勢力の間で戦闘が続いている。ウクライナ側は武装勢力側の主張を否定。ロイターによると、政府軍の報道官は取材に対し「われわれは、禁止されている武器による攻撃を受けたが反撃していない」と述べた。

岸田首相がプーチン大統領と電話会談

岸田首相は2月17日夜(日本時間)にロシアのプーチン大統領と電話会談した。ロシア大統領府によると、プーチン氏はウクライナ国内紛争の起源と原因について岸田首相に説明。ミンスク合意に沿って紛争解決に向けて取り組んでいることを概説したという

日本の外務省によると、会談の概要は以下の通り。岸田首相がロシアに対して軍の撤収を求めたなどの文言はなかった。

  • 岸田首相はプーチン大統領に「ウクライナ情勢について重大な懸念を持って注視している。力による一方的な現状変更ではなく、外交交渉により関係国にとって受け入れられる解決方法を追求すべき」との旨を働きかけた。
  • プーチン大統領からロシア側の立場について説明がなされたのに対し、岸田首相は外交的な努力により問題を解決することの必要性を重ねて強調した。
  • 両首脳は、平和条約を始めとする日露関係及びウクライナを始めとする地域・国際情勢について対話を続けていくことで一致した。


ロシア「アメリカは建設的な対応しなかった」「軍事技術的措置で対応せざるを得ない」

ロシア政府は17日、安全保障に関するアメリカ側からの文章に対して返答を示した。

ロシア紙コメルサントによると、ロシア側は「アメリカ側は安全保障に関してロシア側がアメリカとの間で作成した条約草案の基本的要素に対し、建設的な対応をしなかった」と批判。改めてウクライナとジョージアのNATO加盟を認めないよう求めた。

ロシア側の要求に応じない場合は「アメリカとその同盟国からロシアが安全を確保するための確かな法的拘束力のある保証について、アメリカ側が合意する準備ができていない場合、ロシアは軍事技術的措置で対応せざるを得ない」とした。

一方で、ウクライナへの侵略意図も、計画もないと主張した。ただし、ウクライナがNATOに加盟した場合は「ロシアとの直接の武力紛争」になる可能性を警告した。

こうした中、ロシアはアメリカ大使館の次席公使を追放した

バイデン大統領「ロシアのウクライナ侵攻、数日以内にも」

アメリカのバイデン大統領は2月17日、ロシアのウクライナ侵攻の危険性が「非常に高い」「数日以内にも起こるだろうと感じている」報道陣に述べた

バイデン氏は「ロシアはウクライナ国境から軍隊を後退させておらず、アメリカには、ロシアが侵略を正当化するための“偽旗作戦”に従事していると信じる理由がある」と述べた

一方でバイデン氏は、外交的な窓口はいまも閉ざされていない姿勢を示した。


ブリンケン米国務長官、国連安保理で演説へ

アメリカのブリンケン国務長官が2月17日、国連安保理の会合で演説する。時事通信によると、この会合は安保理議長国のロシアが、ミンスク合意の履行について協議するために設定していた。

ブリンケン氏は「私は今ニューヨークに到着した。国連安全保障理事会で、ロシアの平和と安全に対する脅威について演説する予定だ」「我々はこの危機を外交的に解決することを目指しているが、ロシアがさらにウクライナに侵攻した場合には厳しい措置を講じる用意がある」とツイートした。


イギリス、ポーランド、ウクライナが三国間協力覚書の作成で合意

イギリス、ポーランド、ウクライナが三国間協力覚書の作成で合意したことを知らせるイギリス政府のプレスリリース。

https://www.gov.uk/

イギリス、ポーランド、ウクライナが2月17日、三国間協力覚書を作成することに合意したとイギリス政府が発表した。

理由についてイギリス政府は「ウクライナを支援する最優先課題に関する三国間の戦略的協力と関与を、さらに強化するという我々のコミットメントを示している」とした。

その上でイギリス政府は「イギリスとポーランドは、ロシアの侵略が続く中、ウクライナと結束してウクライナを支援し続け、国際的に認められた国境内でウクライナの主権、独立、領土保全を守るための努力において、ウクライナ国民と共に立ち上がることを完全に約束する」としている。

ブリンケン国務長官が国連安保理で演説「私は戦争を防ぐため、今日ここにいる」

アメリカのブリンケン国務長官が2月17日、国連安保理で演説した。

ブリンケン氏は「はっきりさせておこう。私が今日ここにいるのは、戦争を始めるためではなく、戦争を防ぐためなのだ」と発言。ロシアに対し、直ちに事態をエスカレートさせる行為と侵略をやめ、対話と外交の道を歩むよう求めた。

ブリンケン氏は冒頭、今回の安保理の会合のテーマとなっている「ミンスク合意」についても言及。

「2014年と2015年に交渉され、ロシアが署名したこれらの合意は、ウクライナ東部の紛争を解決するための和平プロセスの基礎であり続けている」とした。

加えてブリンケン氏は「平和と安全に対する最も差し迫った脅威は、ロシアによるウクライナへの侵略が迫っていることだ」と述べ、これは世界の全ての国に影響を及ぼすとの見解を示した。

「その脅威はウクライナをはるかに超えている。これは、何百万人もの人々の生命と安全、そして国連憲章と世界の安定を維持するルールに基づく国際秩序の基盤が危機に瀕している瞬間だ」


「この危機はすべての加盟国、そして世界のすべての国に直接影響を及ぼす。なぜなら、平和と安全を支える基本原則、すなわち二度の世界大戦と冷戦を経てうたわれた原則が脅かされているからだ」

さらに、ロシア側が練っているとするウクライナ侵攻の「計画」について言及した。

ブリンケン氏は、ロシアは侵攻の口実をつくるため、ウクライナ側がテロ攻撃を仕掛けたとみせかける自作自演の攻撃を実行した後、ロシア政府首脳陣の緊急会議を開き、「ロシア市民やロシア系民族を守るために」という戦争を正当化する口実を宣言し、侵攻するだろうとの見通しを述べた。

こうした攻撃には、化学兵器が用いられる可能性もあるとの認識を示した。

また、ロシアは戦争の口実として「ジェノサイド(大量虐殺)やエスニッククレンジング(民族浄化)」といった言葉を用いて、自作自演の攻撃をするだろうと主張した。

また、ブリンケン氏はロシア軍がウクライナに侵攻する場合、以下のような「計画」だと述べた。

「ロシアのミサイルと爆弾がウクライナ全土に投下され、通信が妨害される。 サイバー攻撃でウクライナの主要機関が停止した後、ロシアの戦車と兵士が、すでに特定され、詳細な計画が立てられている重要な目標に進撃する」


「その標的には人口280万人のウクライナの首都キーウ(キエフ)も含まれると考えている」

イギリス国防省が公開した、ロシア軍の侵攻予想図。

イギリス国防省が公開した、ロシア軍の侵攻予想図。

Twitter/@DefenceHQ

その上で、ブリンケン氏は「この危機を解決するための唯一の責任ある方法は、外交である」と述べ、ロシアのラブロフ外相に書簡を送り、来週にもヨーロッパで紛争解決のための会談を提案したと明かした。

また、NATO・ロシア理事会およびOSCE常設理事会の会合も提案したと述べた。


アメリカ・ロシアの外相が来週末に会談へ 条件は「ウクライナ侵攻なければ」

France24などによるとアメリカ国務省は2月17日、ロシアによるウクライナ侵攻がないことを条件に、ブリンケン国務長官がロシアのラブロフ外相と来週末に会談すると明らかにした。


武装勢力が避難呼びかけも“過去の動画”の可能性

ウクライナ東部で「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を自称しロシアを後ろ盾とする武装勢力の指導者らは2月18日、ウクライナ側の侵攻が差し迫っているとして、実効支配する地域の住民にロシアへの避難を呼びかけた

ロイターによると、70万人を避難させる計画だという。ウクライナ政府は、同地域への攻撃説を否定している。避難の呼びかけの後に武装勢力の実効支配地域ではサイレンが鳴り響いたという。

一連の動きは、武装勢力がロシアにウクライナ侵攻の口実を与えるため、緊張をエスカレートさせるものだとガーディアンは伝えている。

ただ、イギリスの調査報道サイト「べリングキャット」のアリック・トラー氏は、両勢力が住民に非難を呼びかけた動画のメタデータが2月18日ではなく「2月16日」のものだったと伝えた。ノーバヤ・ガゼータも同様に伝えた。

ロシアの現地メディアは、ウクライナ東部から避難している人々を乗せた最初のバスが18日夜遅くにロシアのロストフ地域に到着したと伝えた。


ドネツィク市内とルハンシク近郊のパイプラインで爆発、タス通信などが報道

車が爆発したとみられる。

REUTERS/Alexander Ermochenko

ロシア国営タス通信などは2月18日、武装勢力が実効支配するウクライナ東部のドネツィク市中心部で爆発があったと伝えた。負傷者はいないという。報道によると民兵隊トップの車が爆発したとみられるが、事件の背景や容疑者などは不明。

また、ドネツィク市内での爆発から数時間後には、武装勢力が実効支配するルハンシク近郊のガスパイプラインで爆発、火災が発生したと現地通信社が報じたとガーディアンなどが伝えた。

17日にアメリカのブリンケン国務長官が国連安保理での演説で、ロシア側が戦争の口実をつくるためウクライナ側によるテロと偽った「偽旗作戦」を実行するおそれを強調しており、今回の爆発も侵攻のための自作自演の可能性が指摘されている


バイデン大統領「プーチン大統領が侵攻決断したと確信している」

アメリカのバイデン大統領が2月18日、ウクライナ情勢について会見した

バイデン氏は質疑応答の中で、ロシアのプーチン大統領がウクライナへの侵攻を「私は彼(プーチン氏)が決断したと確信している。 そう信じるに足る理由がある」と発言した。

バイデン氏は会見の中で「ロシア軍は数週間から数日のうちにウクライナを攻撃する計画であり、そのつもりであると信じるに足る根拠がある」とも述べた。

ただし、そのロシアが決定を覆す時間はまだ残っており「ロシアはまだ外交を選択できる。外交交渉のテーブルに戻れる余地がある」とも述べた。

一方で、ブリンケン国務長官とロシアのラブロフ外相が2月24日にヨーロッパで会談することで合意したことを明かし、「もしロシアがその前に軍事行動を起こせば、彼らが外交の扉を閉ざしたことは明らかだろう」と語った。

2月18日、ウクライナ国境に近いロシア・ミルレロヴォの飛行場の衛星写真。

2月18日、ウクライナ国境に近いロシア・ミルレロヴォの飛行場の衛星写真。

Maxar Technologies/Handout via REUTERS ATTENTION EDITORS

バイデン氏は、ロシアのメディアによる「ウクライナがドンバス地方で大規模な攻撃を開始することを計画している」と主張する報道についても言及。これらが「でっちあげ」の「偽情報」であるとの見解を述べた。

「ここ数日、ドンバス地方でウクライナを挑発しようとするロシアの支援を受けた戦闘員による停戦違反が、大幅に増加していることが報告されている」


「例えば、昨日ウクライナの幼稚園が砲撃されたが、ロシアはウクライナが実行したと誤認している。また、ロシアに支援された分離主義者を含むロシア国民が“ウクライナがドンバス地方で大規模な攻撃を計画している”と主張する偽情報を、ますます多く目にするようになった」


「ロシアの国営メディアも“ドンバスで大量虐殺が行われている”という偽りの主張を続け、何の証拠もなくウクライナがロシアを攻撃すると警告する“でっち上げの主張”を押し通している。」


「これらは全て、ウクライナ侵攻のための偽の正当性をつくるという、ロシアが過去に用いた脚本と一致している。 これはアメリカとその同盟国やパートナー国が数週間にわたって警告してきた(ロシアが軍事行動を起こすための)口実のシナリオとも一致する」


プーチン大統領、予備役動員令に署名

インタファクス通信は2月18日、プーチン大統領が予備役動員のための大統領令に署名したと伝えた。召集された予備役は軍、国家親衛軍、各地の治安機関などに訓練のために動員される。国営タス通信は、毎年計画されている訓練の一貫だと伝えた。


アメリカのOSCE大使、ロシア軍は「19万人」

アメリカのカーペンターOSCE大使は2月18日、ロシアがウクライナの近くに展開する軍隊は最大で19万人規模と述べ、警戒を強めている。1月末時点で、アメリア側はロシアがウクライナ周辺で展開している軍の規模は「10万人」規模としていた。


ロシア軍が軍事演習、プーチン大統領の指揮でミサイル発射訓練を実施

プーチン大統領たち

ロシア国防省

ロシア国防省は2月19日、プーチン大統領の指示の下、ミサイル発射演習を実施したと発表した。

ロシア国営RIAノーボスチ通信などによると、ICBM(大陸間弾道ミサイル)や極超音速巡航ミサイル、イスカンデルミサイルなどの発射訓練があった。演習には航空宇宙軍、南部軍管区、戦略ミサイル軍、北方艦隊、黒海艦隊などが参加した。

ロシア国防省は「核戦力と非核戦力の戦闘準備と兵器をテストするため」かねてより計画されていたものだと説明。発射訓練にはベラルーシのルカシェンコ大統領も同席した。

ウクライナ東部での緊張高まる OSCE「停戦違反870件」

ウクライナ東部ではウクライナ政府とロシアを後ろ盾とする武装勢力の双方が攻撃を受けたと非難し合い、緊張が高まっている。

「ドネツク人民共和国」を名乗る武装勢力は2月19日、住民に対して総動員令を発表した。ロシア国営RIAノーボスチ通信が伝えた

AFP通信は2月19日、ウクライナ政府軍の情報として、東部での武装勢力との戦闘で兵士1人が死亡したと明らかにした。

19日午前7時(日本時間19日午後1時)までに、ウクライナ軍東部作戦司令部は66回の交戦を確認したという。この数字について、独立した検証は行われていない。

一方で、停戦を監視するOSCEのウクライナ特別監視団は18日付レポートで、ウクライナ東部(ドネツィク州、ルハンシク州)では16日午後7時からの24時間で停戦合意違反が870件にのぼったとした。

SCS2022-02-201.16.53

https://www.osce.org/

OSCEのSMMのレポート

https://www.osce.org/

ウクライナの国家安全保障・国防評議会のオレクシー・ダニーロフ書記は「ドンバス地方で今起こっていることは、ロシアが我々の軍隊を誘い込もうとする試みだが、ウクライナは平和を望んでおり、強制的に(武装勢力の)占領地に進出するつもりはない」と述べた。

G7外相が緊急会合、共同声明を発表 ロシア軍の集結は「国際秩序への挑戦」

G7外相緊急会合の様子。

Fassbender/Pool via REUTERS

G7(主要7カ国)は2月19日、ドイツ・ミュンヘンで緊急外相会合を開き、ウクライナ情勢に関する共同声明を発表した。

声明では「ウクライナ周辺、違法に併合されたクリミア、及びベラルーシにおけるロシアの威嚇的な軍備増強について引き続き重大な懸念」を表明した。

同地では「安保のダボス会議」とも言われるミュンヘン安全保障会議が18〜20日かけて開かれ、これに合わせて議長国のドイツが緊急会合を開いた。

共同声明では、ロシア軍の集結について「欧州大陸における冷戦終結以来最大の配備であり、世界の安全保障及び国際秩序への挑戦」として非難。

その上で「外交の道を選び、緊張を緩和し、実質的な形でウクライナ国境付近から軍隊を撤収させ、リスク削減及び軍事活動の透明性に関する国際的なコミットメントを完全に遵守するよう求める」とした。

一方で、ロシアがウクライナに侵攻した場合は「ロシア経済に厳しく前例のないコストを課すこととなる幅広い部門・個人を対象とした経済・金融制裁を含め甚大な結果を招くことを、明確に理解すべき」と警告した。

外務省発表のG7外相声明(仮訳)は以下の通り。

  1. 我々、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国のG7外相及びEU上級代表は、ウクライナ周辺、違法に併合されたクリミア、及びベラルーシにおけるロシアの威嚇的な軍備増強について引き続き重大な懸念を有している。ロシアによる、挑発されたものではない不当な軍隊の結集は、欧州大陸における冷戦終結以来最大の配備であり、世界の安全保障及び国際秩序への挑戦である。
  2. 我々は、ロシアに対して、外交の道を選び、緊張を緩和し、実質的な形でウクライナ国境付近から軍隊を撤収させ、リスク削減及び軍事活動の透明性に関する国際的なコミットメントを完全に遵守するよう求める。我々は、その第一歩として、ロシアが自ら発表したウクライナ国境沿いでの軍事活動の低減を実施することを期待する。我々は、そのような低減の証拠を何も目にしていない。我々は、ロシアの行動によってロシアを評価する。
  3. 我々は、外交的に関与する用意があるとのロシアの最新の発表に留意した。我々は、欧州の安全保障、リスク削減、透明性、信頼醸成及び軍備管理といった相互の懸念事項について対話を追求するとの我々のロシアとの関係でのコミットメントを強調する。また、我々は、現在の危機への平和的・外交的な解決を見出すとのコミットメントを改めて表明し、ロシアに対して、米露戦略的安定対話、NATO・ロシア理事会及びOSCEを通じた対話の提案を受け入れるよう求める。我々は、議長国ポーランドによって立ち上げられたOSCE新欧州安全保障対話を称賛し、ロシアが建設的に関与することを強く期待する。
  4. 国家の主権及び領土の一体性に対する武力による威嚇又は武力の行使は、ルールに基づく国際秩序を支える根本的原則に反するものであり、またヘルシンキ宣言、パリ憲章及びそれらに続く他のOSCEの諸宣言に記された欧州の平和と安全保障を支える原則にも反するものである。我々は、正当な安全保障上の懸念に対応するために外交的解決を探る用意はあるが、ロシアは、ウクライナに対するあらゆる更なる軍事的侵略は、ロシア経済に厳しく前例のないコストを課すこととなる幅広い部門・個人を対象とした経済・金融制裁を含め甚大な結果を招くことを、明確に理解すべきである。我々は、そのような場合には、連携した制限的措置を執る。
  5. 我々は、ウクライナ国民との連帯と、同国の民主主義とその制度を強化するためのウクライナの努力への支持を再確認し、更なる改革の進展を促す。我々は、ウクライナ経済・金融の安定及びウクライナ国民の福祉の維持を支援することが何よりも重要であると考える。我々は、2014年以来の支援を基礎として、ウクライナの強靱性強化の支援に、ウクライナ当局と緊密に連携して貢献することにコミットしている。
  6. 我々は、国際的に認められた国境及び領海内におけるウクライナの主権及び領土の一体性への揺るぎないコミットメントを改めて表明する。我々は、主権国家が自らの将来及び安全保障体制を決定する権利を有することを再確認する。我々は、継続的な挑発及び不安定化の試みに直面しながらもウクライナが自制していることを称賛する。
  7. 我々は、ウクライナ東部における紛争の永続的な政治的解決への唯一の道であるミンスク合意の完全な履行を確保するための、ノルマンディー・プロセスを通じたドイツ及びフランスの取組に対する強い感謝と継続的な支持を強調する。我々は、ウクライナのミンスク合意への強固なコミットメント及びプロセスに建設的に貢献する意欲を強調するゼレンスキー大統領の公の場での発言を認識している。ウクライナ側の呼びかけは、ロシアの交渉官及びロシア連邦政府の真剣な検討に値するものである。我々は、ロシアに対して、ウクライナの提案が示している外交的道筋のための機会を掴むよう求める。
  8. ロシアは、緊張を緩和し、ミンスク合意を実施するとの自らのコミットメントを果たさなければならない。最近のコンタクト・ライン沿いにおける停戦違反の増加が非常に懸念される。我々は、重火器の使用や一般市民の地域への無差別砲撃を、明白なミンスク合意違反として非難する。また、我々は、ロシア連邦がウクライナの非政府支配地域の住民に対しロシア旅券を配布し続けていることを非難する。これは、ミンスク合意の精神に明らかに反する。
  9. 我々は、複数の自称「人民共和国」による、軍事的エスカレーションの土台作りを行っているとしか看做し得ない措置を特に憂慮する。我々は、偽装事案が軍事的エスカレーションの口実として利用され得ることを懸念する。ロシアは、複数の自称「人民共和国」が自制し緊張緩和を行うよう影響力を行使しなければならない。
  10. この文脈で、我々は、OSCEの特別監視団への支持を強固に表明する。同監視団の監視要員は、緊張緩和に向けた取組において重要な役割を果たしている。同ミッションは、活動と移動の自由が制限されることなく、ウクライナ東部の人々の利益及び安全のため、そのマンデートを完全に遂行することが認められなければならない。


ウクライナ東部で停戦合意違反が激増 OSCE「1566件」報告

ウクライナ東部の停戦を監視するOSCEのSMM(ウクライナ特別監視団)は2月19日付レポートで、ウクライナ東部(ドネツィク州、ルハンシク州)では18日の停戦合意違反が1566件にのぼったとした。

SCS2022-02-209.15.07

https://www.osce.org/

OSCEによる停戦違反報告。左が2/18付、右が2月19日付け。

OSCEによる停戦違反報告。左が2/18付、右が2月19日付け。

https://www.osce.org/


ロシア軍とベラルーシ軍、合同演習を延長 ベラルーシ国防省

ベラルーシ国防省は2月20日、合同演習中のロシア軍について、ウクライナ東部の情勢が悪化しているとして演習期間(2月10日〜20日)の終了後もベラルーシ国内に駐留するとし、演習の延長を発表した。ロイターなどが伝えた。欧米諸国は演習を名目にロシア軍がウクライナに侵攻することを警戒している。

ウクライナのゼレンスキー大統領とマクロン仏大統領が会談

ウクライナのゼレンスキー大統領は2月20日、フランスのマクロン大統領と会談したと発表した。東部で悪化する情勢や政治家・ジャーナリストへの砲撃について報告したという。「政治的・外交的解決の必要性と可能性について議論した」とした。

ゼレンスキー氏はミュンヘン安全保障会議に出席。報道陣に対して、ウクライナはロシアからのいかなる挑発にも応じないと主張。「私たちは慌てなくても良い。いかなる挑発にも応じていない。そのことは一貫している」「私たちは何年もの間、現在のような緊張状態にあった。慌てる必要はないと思う」と述べたとガーディアンが伝えた。

フランス・エリゼ宮(大統領府)は20日、マクロン氏がロシアのプーチン大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領、アメリカのバイデン大統領、ドイツのショルツ首相、イギリスのジョンソン首相と電話会談したと発表した。

米大統領、地元行きをとりやめNSC開催 日曜開催は異例

アメリカのバイデン大統領2月20日、地元デラウェア州行きを中止し、国家安全保障会議(NSC)を開催した。NSCが日曜日に開かれることは異例。

ホワイトハウスによると、ウクライナ国境におけるロシアの軍事力増強に関する最新状況について議論したという。

また、バイデン氏はフランスのマクロン大統領と電話で会談。ホワイトハウスは「ウクライナ国境でのロシアの軍事力増強に対応するため、外交および抑止の取り組みについて話し合った」と発表した。


ブリンケン米国務長官、経済制裁の目的は「戦争しないよう抑止するため」 先制制裁は否定

米CBSは2月20日、アメリカの情報機関からの話として「ロシアの司令官がウクライナへの侵攻を進める命令を受けている」と伝えた。

CBSニュースのデビッド・マーティン国家安全保障特派員も、ロシア軍の司令官が「アメリカ軍司令官が進攻命令を受けたら実行するであろうことをすべてやっている」と、アメリカ情報機関による情報として報じた。

ブリンケン米国務長官氏は週末にCNNNBC、CBSの報道番組に相次いで出演した。CBSの看板番組「Face the Nation」では「アメリカの情報機関は、プーチン大統領がウクライナを攻撃する計画を立てていると考えている」「我々が見ているものは、全てプーチン氏が下した侵略の決定が進んでいることを示している」と述べた。

ウクライナのゼレンスキー大統領は週末のミュンヘン安全保障会議での演説で、欧米にロシアに対する経済制裁の先制を求めてる趣旨の発言をした。

ブリンケン氏はこれについて、「制裁の第一目的はロシアが戦争をしないように抑止することだ。発動したとたんに、その抑止力はなくなってしまう」との見解を示し、先制制裁を否定した。

一方、ロシアのドミトリー・ポリャンスキー国連副大使は20日、「ロシアにはウクライナに侵攻する計画はないと述べ、モスクワは外国の情報機関を信用していない」「我々はアメリカ・イギリスの諜報機関を信用していない。彼らは何度も我々を、全世界を失望させた。イラクの大量破壊兵器を思い出せば十分だ」と主張した

バイデン米大統領とプーチン露大統領、会談開催で「原則同意」もロシア大統領府は否定

フランスのマクロン大統領の提案で、アメリカのバイデン大統領とロシアのプーチン大統領が首脳会談を実施することに同意したと、フランス・エリゼ宮(大統領府)が発表した。開催日程は明らかになっていない。

2月24日には米露外相会談が予定されており、首脳会談に向けた準備になるとみられる。

米ホワイトハウスのサキ報道官「バイデン氏はプーチン氏との会談を原則的に受け入れたが、これは侵略が起こっていなければの話だ。 我々は常に外交の用意がある」「ロシアが戦争を選択した場合、迅速かつ厳しい結果を科す用意がある」と発表した。

エリゼ宮によると、マクロン氏はヨーロッパの安全保障と戦略的安定について話し合うサミットの開催も提案したという。


ロシア大統領府「米露首脳会談の具体的計画なし」

ロシア大統領府のペスコフ報道官は2月21日、フランスが提案した米露首脳会談ついて「具体的な計画はまだない」と述べ、米露間の交渉は外相レベルで続くとの認識を示した。独立系メディア「モスクワのこだま」が伝えた。


プーチン大統領、ウクライナ東部武装勢力の「国家承認」是非を21日中に判断

ロシアのプーチン大統領は2月21日、ウクライナ東部で「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を自称し、ロシアを後ろ盾とする武装勢力が実効支配する地域の国家承認問題について、21日中に決定すると国家安全保障会議で述べた。タス通信などが伝えた。

ロシアの下院は2月15日、ウクライナ東部で「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を自称する武装勢力について、プーチン氏に国家として承認するよう求める決議を賛成多数で採択している。

ミシュスティン首相は「独立が承認された結果に備えて何ヶ月も準備している」とし、プーチン氏に国家として認めるように求めた。また、メドベージェフ国家安全保障会議副議長も「ドンバス地方の状況が悪化し続ける場合、ロシアは独立を認めざるを得ない」と述べた

国家安全保障会議の模様はテレビで放映されたが、これには決定の正当性をアピールするための思惑が見える。

中継された国家安全保障会議については、事前に撮影された疑惑を指摘するメディアもあった。モスクワのこだまによると、会議は21日午後4時54分にスタートしたが、放送された会議ではショイグ国防相の時計が12時52分を示していたという。

もしプーチン氏が国家承認をすれば、2015年にドンバス地方での紛争停止プロセスを定めた「ミンスク合意」の内容を覆すことになり、ウクライナや欧米との関係が更に緊迫化する可能性がある。

ロシアはこれまで「ミンスク合意」の履行をウクライナに迫っていた。また、国連安保理も2015年に全会一致でミンスク合意の履行を求める決議を全会一致で承認している

【※】アメリカのブリンケン国務長官は2月17日、ロシアが侵攻の口実をつくるための「計画」について指摘。ウクライナ側がテロ攻撃を仕掛けたとみせかける自作自演の攻撃を実行した後、ロシア政府首脳陣が緊急会議を開き、「ロシア市民やロシア系民族を守るために」という戦争を正当化する口実を宣言し、侵攻するだろうとの見通しを述べていた


プーチン大統領、ウクライナ東部の武装勢力地域「国家承認する」と仏・独へ伝達 インタファクス通信

ロシアのプーチン大統領は2月21日、ウクライナ東部で「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を自称し、ロシアを後ろ盾とする武装勢力が実効支配する地域について、独立国家として承認する大統領令に署名すると、フランスのマクロン大統領ドイツのショルツ首相に伝えたとインタファクス通信が伝えた。


【2月21日:ウクライナ情勢、重大局面に】

プーチン氏、ウクライナ東部の武装勢力地域「独立国家として承認」:ミンスク合意は崩壊

2月21日、緊迫が続いてきたウクライナ情勢は重大局面を迎えた。

ロシアのプーチン大統領は2月21日(日本時間の22日午前3時半過ぎ)からテレビを通じて国民向けにスピーチした。

ウクライナ東部ドンバス地方で「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を自称し、ロシアを後ろ盾とする武装勢力が実効支配する地域について、国家として承認すると述べた。

プーチン氏がウクライナ東部でロシアを後ろ盾とする武装勢力が実効支配する地域を一方的に国家として承認することで、ロシアは自らがウクライナに履行を要求していた「ミンスク合意」の内容を覆すことになる。

また、ウクライナや欧米とのさらなる関係悪化は不可避な情勢で事態がさらに緊迫化するおそれがある。

およそ1時間のスピーチの中で、プーチン氏は帝政ロシア・ソ連時代に触れつつ、ウクライナはロシアがつくったのだとする自らの歴史観を開陳。「ウクライナは単なる隣国ではなく我々の歴史・文化・精神的空間において不可欠」とし、旧ソ連の建国者レーニンについて「ウクライナをつくりし者」と呼んだ。

その上で、「ウクライナは国家としての地位を保持したことはなく、主権国家ではない」「ウクライナは西側との交渉のためにロシアとの対話を利用した」「西側の傀儡」とも主張。

ウクライナがソ連崩壊後も脱共産化ができておらず、加えて「ウクライナは分裂しており、深刻な経済危機に直面している」とも発言した。

これらはかねてより、プーチン氏が主張する「ウクライナが東部の親ロシア派と西部の親欧派で対立・分裂している」とする持論に沿った内容で、ウクライナ東部の情勢への介入を正当化を企図する発言だ。

加えて、90年代以降のNATOの東欧への拡大に触れ「ロシアは騙された」「安全保障に関するロシアの要求は拒否された」との持論も展開。西側諸国が「ドンバスでのジェノサイド(大量虐殺)を西側諸国は無視することを好む」とも発言した。

その上でプーチン氏はウクライナ東部で「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を自称する武装勢力が実効支配する地域を独立国家として承認すると述べた

さらにプーチン氏は、2地域がロシア軍に軍事基地等の建設・使用の権利を与える「友好協力相互支援協定」にも署名した。

自らのウクライナに関する歴史観を国民向けにテレビで主張することで、プーチン氏はウクライナ東部2地域の国家承認を正当化し、国民の支持をとりつけたい狙いも垣間見える。

なおプーチン氏は2月15日、ドイツのショルツ首相との共同会見でもドンバス地方の状況について「ジェノサイド(大量虐殺)」だと主張。ミンスク和平の履行を通じて紛争を解決するよう要求していた。

【※】プーチン氏が主張した「ジェノサイド」などについて、アメリカ国務省は2月16日の時点で「これらの主張のいずれにも真実の根拠はない」と否定。軍事行動の口実として使用するために作り出した誤った主張だと批判している。

アメリカ、自称「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」に限定し経済制裁へ

ロシアがウクライナ東部で武装勢力が実効支配する「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を自称する地域を独立国家として承認することを受けて、アメリカのバイデン大統領は経済制裁を発動する。

ホワイトハウスのサキ報道官の両地域について大統領令で経済制裁を発動すると発表した

ただし制裁は限定的なもので、両地域での投資や貿易にアメリカ人が関わることを禁止するものとなる。また、ロシアの「露骨な国際公約違反」に関連し、追加措置を間もなく発表する予定とした。EUも同様の措置をとるという。


プーチン大統領、国家承認の2地域に軍派遣を指示

法令

http://publication.pravo.gov.ru/

ロシアのプーチン大統領は21日に署名した法令で、ウクライナ東部でロシアを後ろ盾とする武装勢力が実効支配する「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を自称する地域を独立国家として承認した上で、軍を派遣するよう指示した。

プーチン氏は「平和維持」が目的だと主張し、これを名目にウクライナ東部にロシア軍が展開することを正当化した。ウクライナや欧米の反発は必至だ。ロイターは目撃者の情報として、ドネツィクに大規模な軍車両や装備が運ばれていると報じた。

ウクライナのゼレンスキー大統領「主権の侵害」

ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、国民向けのスピーチの中でロシアの行動を「ウクライナの完全性と主権の侵害」として批判した。一方で平和的な解決も呼びかけており、西側諸国の支援に期待する旨を述べた。


米・ウクライナ首脳が電話会談、ロシアを非難

アメリカのホワイトハウスは21日、バイデン大統領がウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談したと発表した

バイデン氏は、ウクライナの主権と領土の一体性を支持すると表明。バイデン大統領は、ロシアのプーチン大統領がウクライナ東部の武装勢力が実効支配する地域を独立国家として承認したことを強く非難したと発表した。

バイデン氏は、ロシアの侵攻に対して、迅速かつ断固として対応することを改めて表明した。

ウクライナ大統領、各国首脳と会談

ゼレンスキー大統領は21日、イギリスのジョンソン首相やトルコのエルドアン大統領、ミシェル欧州理事会議長らと相次ぎ会談した。

米・仏・独首脳が電話会談、ロシアを非難

アメリカのホワイトハウスは21日、バイデン大統領がフランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相と電話会談し、ロシアのプーチン大統領がウクライナ東部の武装勢力が実効支配する地域を独立国家として承認したことを強く非難したと発表した


米政府高官が会見 ロシア軍の動向「数時間〜数日注意深く観察」

ホワイトハウスは21日、政府高官がウクライナ情勢の背景説明のため会見した。

報道陣は、ここ数日にわたってバイデン大統領がロシアの新たな軍事侵攻が近いと言及していたことに触れ、「今がその時ではないのか」と指摘。「本格的な制裁を実施せよとの圧力はないのか」と質問した。

これに対し高官は、「ロシアは2014年以来これらの地域(ロシアを後ろ盾とする武装勢力が実効支配するウクライナ東部の地域)を占領している」「これら地域にロシア軍は存在しないというのがロシアの立場だが、現実はまったく異なっている。これらの地域には、ずっとロシア軍が存在していた」と発言した。

その上で「今後数時間〜数日にわたる彼らの行動を注意深く観察」すると述べるにとどめ、プーチン大統領によるウクライナ東部へのロシア軍派兵が「新たな侵攻」にあたるのか見極める姿勢を示した。

また「ウクライナ国内で戦うために、アメリカ軍を派遣する意図はない」と述べ、ウクライナへの米軍派遣はしないと改めて強調した。

また、バイデン政権は明日にも追加の制裁措置をとると発表しているが、これは同盟国やパートナー国と調整してきた「迅速かつ断固とした措置」とは別だという。

国連事務総長がロシアを批判する声明「国連憲章に矛盾する」

国連は21日、ウクライナ東部の武装勢力が実効支配する地域をロシアのプーチン大統領が独立国家として承認したことについて、グテーレス事務総長名で批判する声明を発表した。

国連が事務総長名で安保理の常任理事国を批判することは異例。

声明では「ロシア連邦の決定に大きな懸念を抱いている」とし、2015年の「ミンスク合意」に基づきウクライナ東部の紛争を平和的に解決するよう求めた。その上で「ウクライナの領土保全と主権の侵害であり、国際連合憲章の原則と矛盾するものと見なす」と強く非難した。

また、ウクライナの主権、独立、領土保全を全面的に支持し続けることも表明した。


国連安保理、アメリカがロシア非難「明らかな国際法違反」

アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使

アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使

REUTERS

国連安保理では2月21日に緊急会合が開催され、ロシアへの非難が相次いだ。

アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は、ウクライナ東部の武装勢力が実効支配する地域をロシアのプーチン大統領が独立国家として承認したことについて、ロシアがウクライナをさらに侵略する口実を作るための基盤を作ることだと指摘。ロシア軍の派兵を非難した。

トーマスグリーンフィールド氏は「プーチン氏は私たちの決意をテストしている」「明らかな国際法違反」とし、ロシアがウクライナにさらに侵攻した場合の対応は「迅速かつ深刻」になると強調した。

ウクライナのキスリツァ国連大使は、ロシアは「8年間にわたる戦争と混乱を扇動するための“ウイルス”であった」と述べた。その上でウクライナの国境は「ロシアによるいかなる声明や行動に関係なく変更されない」とした。

キスリツァ氏は、ゼレンスキー大統領の発言を一部引用し「私たちは私たちの土地にいる。私たちは誰にも何も負っていない。そして、私たちは誰にも何も与えない。私たちは何かや誰かを恐れていない」と、ロシアの挑発には屈しない姿勢を示した。

これに対し、ロシアのネベンジャ国連大使は「(独立国家として承認した地域の)平和維持はロシア連邦の軍隊によって実行される」と反発した。

ドイツ「ノルドストリーム2」の認可作業を停止

ドイツのショルツ首相は2月22日、ロシアからドイツへ天然ガスを輸送する海底パイプライン「ノルドストリーム2」について、すぐには認可しないよう経済省に要請すると述べた。事実上、計画が一時中止されることになる。

ロイターによると、パイプライン自体は9月に完成。ドイツとEUによる承認待ちの状態だった。プロジェクトは110億ドル規模。

現在、ヨーロッパでは世界情勢の悪化や新型コロナウイルスからの経済回復の需要もあって石油や天然ガスなどエネルギー価格が高騰している。電気代や暖房費も値上がりし、消費者の生活を直撃。こうした中でノルドストリーム2は天然ガス価格を引き下げる処方箋として期待されていた。

ウクライナに対してNATO諸国が武器を提供する中、ドイツは一貫してこれを拒否。背景には「ノルドストリーム2」があるとみられていた。

ただ、ロシアがウクライナ東部の武装勢力が実効支配する地域を一方的に独立国家として承認。これを受けて、ドイツは「ノルドストリーム2」の認可作業を一時停止する判断を下した。

アメリカ、ウクライナはドイツの決定を歓迎しているが、ウクライナ情勢が緊迫する中、欧州でのエネルギー価格は更に高騰する可能性がある。



【2月22日:米大統領「侵攻の始まり」と明言】

バイデン大統領「ロシアによるウクライナ侵攻の始まり」 金融・経済制裁を発動

アメリカのバイデン大統領は2月22日(日本時間23日未明)に会見した。

バイデン氏は、ロシアがウクライナ東部の武装勢力が実効支配する地域を一方的に独立国家として承認し、「平和維持」を名目に同地域への派兵を決めたことについて「ロシアによるウクライナ侵攻の始まり」と非難した。

バイデン氏は「主の名において、プーチン氏が国家を自称する勢力の独立を認める権利があると、誰が思うのか?」とプーチン氏を批判。

「簡単に言えば、ロシアはウクライナの大部分を切り分けると発表したばかりだ 」と述べ、プーチン氏の行動は「国際法の明白な違反」であるとし、大手金融機関や政府発行の国債などを対象に経済・金融制裁を発動すると発表した。

一方、アメリカのと同盟国は「最悪のシナリオ」を回避するために、ロシアとの外交的な選択肢を模索する姿勢を崩していないと述べた。

ロシアがウクライナ東部の武装勢力が実効支配する地域を一方的に独立国家として承認した直後の21日時点で、バイデン政権はこれをロシアによる「新たな侵略」と認めることは留保していた。

米政府高官は21日の会見で、報道陣から「ロシアによる侵攻ではないのか」問われると、ロシアを後ろ盾とする武装勢力の実効支配地域にはすでにロシア軍がいると述べ、プーチン氏によるウクライナ東部へのロシア軍派兵が「新たな侵攻」にあたるのか見極める姿勢を示していた。

「ロシアは2014年以来これらの地域を占領している」


「これら地域にロシア軍は存在しないというのがロシアの立場だが、現実はまったく異なっている。これらの地域には、ずっとロシア軍が存在していた」


「今後数時間〜数日にわたる彼らの行動を注意深く観察」

バイデン氏も、これまで「新たな侵攻」をみなす基準については「戦車もしくは軍隊が国境を越えてウクライナへ侵攻」と定義している。

ブリンケン国務長官は、20日時点ではロシアへの抑止力として大規模な経済制裁は温存したい考えを示していた。


プーチン大統領、ウクライナのNATO非加盟や非武装化が「最善の方法」

インタファクス通信によると、ロシアのプーチン大統領は2月22日に記者団に対し、「現在の状況を打開する最善の方法」はウクライナの非武装化とNATO非加盟による中立化だと述べた。


ロシア外務省、ウクライナにいる外交官の避難決定を発表

ロシア外務省は2月22日、「ウクライナにあるロシアの外国施設の職員を避難させることを決定し、できるだけ早く実施する予定である」と発表した

ロシア外務省は避難決定の理由について「8年前、キエフで起きた武装クーデターにより、合法的に選出されたウクライナ大統領が倒され、急進的な勢力が権力を握った」「この国には無法地帯が広がった。反政府や反体制者への迫害が日常茶飯事となった」など、ウクライナ政府を批判する言葉を列挙した。

その上で「ナチスの協力者や子分がウクライナで英雄に祭り上げられるなど、歴史を改ざんする試みは前代未聞の規模になった」という文言のほか、ウクライナで各地で総領事館が襲撃されており外交官も攻撃のターゲットになっているなどと主張した。

ただし、避難決定の発表声明は23日午前6時15分現在(日本時間)ロシア語のみで発表されており、国内向けに自国の正当性をアピールする狙いが垣間見える


ウクライナ、予備役を招集

ウクライナのゼレンスキー大統領は2月22日、予備役を召集すると明らかにした。


プーチン大統領、ミンスク合意は「もはや存在しない」

ロシアのプーチン大統領はウクライナ東部での停戦をめぐる国際的な停戦合意「ミンスク合意」について、「もはや存在しない」と述べた

ロシアはこれまで「ミンスク合意」の履行をウクライナに迫っていたが、プーチン氏は21日にウクライナ東部でロシアを後ろ盾とする武装勢力が実効支配する地域を一方的に国家として承認した。

これはロシアがウクライナに履行を要求していた「ミンスク合意」の内容に反する行為であり、ロシアが自ら停戦合意を崩壊させたことになる。

国連安保理は2015年に全会一致でミンスク合意の履行を求める決議を全会一致で承認している


2月24日の米露外相会談はキャンセル ブリンケン米国務長官「意味がない」

アメリカのブリンケン国務長官は2月22日の記者会見で、24日に予定していたロシアのラブロフ外相との会談をキャンセルすると述べた。

ブリンケン氏は「侵攻が始まり、ロシアが外交を全面的に拒否していることが明らかになった今、このまま会談をしても意味がない」と述べた。

アメリカ国務省は2月17日に米露外相会談の開催について発表していたが、ロシアによるウクライナ侵攻がないことを条件としていた。

岸田首相、対ロシアの経済制裁について指示

岸田首相は2月23日に首相公邸前でぶら下がり会見し、ロシアがウクライナ東部の武装勢力が実効支配する地域を一方的に独立国家として承認したことを受けて、ロシアへの経済制裁を指示したと述べた。

制裁内容は以下の3つ。

  • いわゆる2つの共和国(自称「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」)の関係者の査証発給停止及び資産凍結
  • いわゆる2つの共和国との輸出入の禁止措置の導入
  • ロシア政府による新たなソブリン債の我が国における発行・流通の禁止

在ウクライナのロシア大使館、ロシア国旗をおろす

ロシア国営タス通信は23日、ウクライナ首都キーウ(キエフ)のロシア大使館からロシア国旗がおろされたと伝えた。

ロシア外務省は2月22日、「ウクライナにあるロシアの外国施設の職員を避難させることを決定し、できるだけ早く実施する予定である」と発表している

ウクライナ議会、非常事態宣言を承認

ウクライナ議会は2月23日、全土への非常事態宣言を承認した。BBCなどが伝えた。

期間は24日から30日間。個人の検閲や大規模デモ活動の禁止、危険地域からの退避、情勢を不安定にさせる可能性がある情報をつくったり拡散することを禁止する。

必要に応じて夜間外出を禁止したり、ネット上での情報拡散に関する「特別な規則」を適用する可能性もある。

ウクライナ東部の武装勢力、プーチン大統領に「ウクライナの侵攻撃退するよう要請」 侵攻の口実に利用する可能性も

ロシアを後ろ盾とし、ウクライナ東部の一部を実効支配する武装勢力(自称「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」)の指導者らが「ウクライナ軍からの侵攻を撃退するようプーチン大統領に要請した」とロシア大統領府のペスコフ報道官が発表した。

ロシア国営タス通信が伝えた。アメリカのブリンケン国務長官は2月17日に国連安保理での演説で、ロシア側が戦争の口実をつくる行動への警戒を示しており、今回の「要請」もウクライナへのさらなる侵攻に利用される可能性がある。


アメリカ国防総省高官「ロシア軍、侵攻に必要な兵力のほぼ100%が所定位置」

アメリカ国防総省の高官は「ロシア軍は、侵攻に必要な兵力のほぼ100%を所定の位置に移動させた」と述べたと、米「フォーリン・ポリシー」のジャック・デッチ記者が伝えた。

一方で「ドンバス地域にさらにロシア軍が移動したことを確認できない」と同高官は述べたという。

アメリカ国務省報道官、ロシアとの交渉は「外交歌舞伎の劇場」

アメリカ国務省のプライス報道官は、ロシアとの交渉を「外交歌舞伎の劇場だ」と表現した。

プライス氏は「彼らは外交に尽力していると述べているが、実際は正反対の行動をとっている」「外交が達成するべき結果を出せるような環境ではない」と批判した。

また、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の所有会社とその役員に制裁を発動することについて「我々の制裁対応の始まり」とし、ロシア側の行動がエスカレートした場合はさらに制裁を強める方針を述べた。

米ホワイトハウス報道官「ウクライナに米軍は派遣しない」

ホワイトハウスのサキ報道官は2月23日の会見で、たとえロシアがウクライナに本格的に侵攻したとしても、アメリカがロシアと戦争をすることはないと述べた

サキ報道官は、いかなるシナリオにおいてもアメリカは、ロシアと戦うためにウクライナへ軍を派遣することはないとした。

米ホワイトハウス報道官、ノルドストリーム2は「海の底で死んでいる」

また、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の所有会社とその役員に制裁を発動したことについて、「(ノルドストリーム2は)現在、海の底で死んでいる」と表現した。ドイツ政府はすでに、「ノルドストリーム2」の承認作業の停止を発表している。

ウクライナ、国連安保理の緊急会合を要請

ウクライナのドミトロ・クレバ外相は2月23日、ウクライナ東部の一部を実効支配する武装勢力(自称「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」)の指導者らがプーチン大統領に「ウクライナ軍の侵攻を撃退するよう要請した」ことを受けて、国連安全保障理事会の緊急会合の開催を求めたとツイートした。

アメリカのブリンケン国務長官は2月17日に国連安保理での演説で、ロシア側が戦争の口実をつくる行動への警戒を示しており、今回の武装勢力の「要請」もウクライナへのさらなる侵攻に利用される可能性がある。

クレバ氏はこのツイートの前に、ロシアが占領するクリミア半島北部の化学工場から作業員が避難したとの報告があるとツイート。「ロシアによる新たな挑発行為の準備かもしれない」「さらなる侵略のために口実をでっちあげるロシアの試みに限界はないようだ」と、ロシアの偽旗作戦を警戒する姿勢を見せた。

ウクライナのゼレンスキー大統領、ロシアは「ウクライナへの攻撃を承認した」

ウクライナのゼレンスキー大統領は2月23日、テレグラムに10分ほどの演説を投稿した。この中でゼレンスキー氏は、ロシアの首脳が「ウクライナに対する攻撃を承認」し、国境に20万人近い軍隊を駐屯させていると述べた。

ゼレンスキー氏はロシア国民に対し、ウクライナの国民も政府も平和を望んでいると語った。ゼレンスキー氏はロシアのプーチン大統領に会談を求めたが応答がなく「沈黙だけ」として、招請に応じていないと明かした。

演説の中でゼレンスキー氏はウクライナ語とロシア語の両方で発言。ロシア国民に向けて「ヨーロッパでの大規模な戦争のはじまりかもしれない」として、ウクライナへの軍事侵攻を支持しないように語りかけた。

一方で、ウクライナの自由と国民の声明が脅かされた場合は反撃するとも述べた。ゼレンスキー氏は22日の会見でロシアとの断交を検討していると述べてい

ウクライナにまたサイバー攻撃 行政機関のサイト閲覧できず

ロイター通信によると、ウクライナ国内では政府、議会、内閣、外務省など行政機関のウェブサイトが2月23日に閲覧できなくなった。大規模なDDos攻撃の可能性が指摘されている

ブリンケン米国務長官「ロシアは大規模侵攻の準備は全て整えたように見える」

アメリカのブリンケン国務長官は2月23日に出演したNBCの番組でロシアが侵攻する準備が整っていると述べた。

ブリンケン氏は番組アンカーの「夜が明ける前にロシアがウクライナに完全に侵攻すると信じるに足る理由はあるか」との問いに対し否定しなかった。

アンカーがさらに「今夜、侵攻が起こり得るのか」と質問すると「日付や正確な時間は言えないが、ロシアが前進するための準備は全て整えたように見える」と述べた。

やり取りは以下の通り

── 夜が明ける前に、ロシア軍はウクライナへの完全な侵攻すると信じるに足る理由はあるか。

ブリンケン氏:そうですね、残念ながら、ロシアはウクライナの国境を北・東・南にまたがる最終地点に軍を配置している。ロシアがウクライナに大規模侵攻するための準備は全て整えたように見える。

──今夜起こり得るのか。

ブリンケン氏:いいですか、日付や正確な時間は言えませんが、ロシア軍が前進するための準備はすべて整っています。


「ウクライナ北東部の都市ハルキウへの攻撃懸念」

CNNのバートランド記者(安全保障担当)によると、アメリカのバイデン政権は、ロシアの全面的な侵攻が間近に迫っているとウクライナ政府に新たな警告を出した。

特にウクライナ北東部の都市ハルキウ(ロシア語表記:ハリコフ)への攻撃が懸念されるという。

A satellite image shows an overview of a field hospital and a troop deployment, in Belgorod, Russia, February 21, 2022. Picture taken February 21, 2022. Courtesy of Satellite image.

A satellite image shows an overview of a field hospital and a troop deployment, in Belgorod, Russia, February 21, 2022. Picture taken February 21, 2022. Courtesy of Satellite image.

2022 Maxar Technologies/Handout via REUTERS ATTENTION EDITORS

マクサー・テクノロジー社は2月23日に新たな衛星写真を公開。ハルキウの北に位置し、ウクライナ国境から40キロほどのロシア・ベルゴロドで2月21日に撮影された写真では野戦病院と部隊配備の様子が確認できた。

ロシア、NOTAM発出 ウクライナ北東部の飛行禁止を通知

ロシアは2月23日、ウクライナ北東部に接する航路について民間航空機に飛行を禁止する航空情報(NOTAM)を発出したCNNなどが伝えた

対象は、ロシア軍が過去数週間にわたって集結している地域の回廊。

アメリカ国務省報道官、ロシアの「偽旗作戦」への警戒呼びかけ

アメリカ国務省のプライス報道官は2月23日夜にTwitterで、ロシアがウクライナ侵攻の口実として利用する可能性のある「偽旗作戦」について警戒するよう呼びかけた。

プライス氏は「ウクライナは大量虐殺を犯していない」「ウクライナはドネツクやルハンスクを攻撃していない」「ウクライナはテロ攻撃をしていない」とつづり、「軍事行動を正当化しようとするクレムリン(ロシア大統領府)の偽情報キャンペーンに注意を。これらの誤った主張を裏付ける証拠はない」とツイートした。



【2月24日:プーチン大統領、ウクライナへの侵攻表明】

プーチン大統領、ウクライナでの「特別軍事作戦」決定 事実上の侵攻表明

プーチン大統領

REUTERS

ロシアのプーチン大統領が2月24日、ウクライナ東部ドンバス地方での「特殊軍事作戦」を実施すると発表した事実上、ウクライナ領へのさらなる侵攻を表明したことになる。

プーチン氏はロシア系住民の保護を名目に軍事行動を正当化する以下のような主張を述べた。

「ドンバスで起こっている悲劇的な出来事と、ロシア自体の安全を確保するための重要な問題に立ち返る必要がある」

「作戦目標はウクライナ政府によって8年間にわたって嫌がらせと大量虐殺にさらされた人々を保護することだ」

ウクライナのゼレンスキー政権については「極右勢力とネオナチ」とし、これをNATOが批判しているとし、「ウクライナの非軍事化と非ナチ化に努める。ロシア連邦の市民を含む民間人に対し、多数の血なまぐさい犯罪を犯した人々を裁判にかける」と主張した。

一方で、ウクライナの占領は計画にはないとした。

また、プーチン氏は現代のロシアが世界最強の核保有国一つだとし、ロシアへの直接的攻撃は「侵略者の壊滅と悲惨な結果につながる」と述べた。

プーチン氏はこれまでにもウクライナ東部で「大量虐殺」があったと主張しているがウクライナ側は否定している。

【※】アメリカ国務省はかねてより、プーチン氏が「ロシア系住民の保護」などを侵略を正当化するための口実にするだろうと指摘していた。

アメリカ国務省のプライス報道官は2月23日夜にTwitterで、ロシアがウクライナ侵攻の口実として利用する可能性のある「偽旗作戦」について警戒するよう呼びかけていた。

プライス氏は「ウクライナは大量虐殺を犯していない」「ウクライナはドネツクやルハンスクを攻撃していない」「ウクライナはテロ攻撃をしていない」とつづり、「軍事行動を正当化しようとするクレムリン(ロシア大統領府)の偽情報キャンペーンに注意を。これらの誤った主張を裏付ける証拠はない」とツイートしていた。

なお、プーチン氏はウクライナのゼレンスキー政権を「ネオナチ」「ナチ」と主張したが、ゼレンスキー大統領はユダヤ系である。

(文・吉川慧

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