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教育系スタートアップ「Newsela」の編集長 ジェニファー・クーガンは言う。大人が「偽ニュース」を見つけ出すことができないのに、子どもたちが「偽ニュース」に気づけるわけがないと。
子どもたちに進むべき道を示すためには、デジタルとアナログの両方を知る人間が必要だとクーガンは考えている。
「子どもたちの生活は100%デジタル。率直に言って、デジタルの世界で偽物を作るのは簡単です」とクーガンは語る。
Newselaの主な目的は、オンラインのニュース記事を使って子どもたちの読み書き能力を向上させること。大統領選挙から数カ月で、同社はより公共の利益にかなった役割を果たしている。アメリカのK-12の学校(幼稚園から高校3年生まで)の約75%にあたる100万人以上の教師が、子どもたちにニュース・リテラシーを持たせたいと考えている。
ネットには偽ニュースが溢れている。少なくとも数十の偽ニュースサイトがあり、ソーシャルメディアでの総フォロワー数は数百万人にも上ると想定される。いくつかのサイトは、The Onion(米国の風刺ニュース。モットーは「Tu stultus es」、ラテン語で「お前はばかだ」)のように風刺的だが、その多くは偽ニュースをあくまで本当のニュースであるかのように伝えている。
子どもたちが事実と作り話を区別できるよう、Newselaは2016年10月、American Press Instituteと提携した。今では子どもたちがスマートフォンで記事を読むたびに、記事自体に関する質問が投げかけられる。「それは事実?」「その意見に偏りはない?」「補足材料として足りないものはない?」などだ。
「生徒にとっては、ちょっとした研究課題のようなものになるでしょう」とクーガン。
教師はニュースサイトについて徹底した質問を投げかけることができる。例えば、本社所在地、資本金の内訳、事業提携先など。 「いまどき、誰も朝刊を隅から隅まで読むようなことはしないでしょうが、健全なレベルの懐疑的姿勢を養うためには、やりすぎぐらいでなければならない」とクーガンは語る。「情報源を常に疑ってかかることは、自分でものを考える良い練習になります」
歴史が示しているように、子どもは親の助けによって「何が嘘で、何が本当か」を見分けるようになる。しかし、現在においては親と子どものニュースの受け取り方には根本的な違いがある。親世代は、信頼性の高い紙媒体のニュースを読んできた。その時代に偽ニュースを作るのは、不可能ではないが、かなり困難だった。「偽ニュースを出すために印刷機を手に入れ、たくさんの新聞を印刷する人なんていませんでした」
現代の若い読者はデジタルネイティブだ 。同様に彼らのニュースソースも。親たちは、従来の数少ない有名な情報発信源については馴染みがあるし、情報が信頼できるものかどうかをチェックすることもできる。New York TimesやWall Street Journalが本物であることは理解しているが、では、AmericanNews.comとInfowarsはどうだろう? どちらも評判は良いが、信用できないのではないかという疑いがある。
「新聞購読が習慣になっている両親の姿を見ているだけでは、現代の子どもがニュースの真贋を見極められるようにはなりません」
Newselaのアプローチによって、子どもたちは自身で読んだものに疑問を抱き、センセーショナルで疑わしいものは除外するようになった。しかし、具体的なデータはなかなか得られない。Newselaの次なる目標は、自分が読んだものが真実で公正なものだと、子どもたちが自信を持って感じられるようにすることだ。
「子どもたちの判断力を育てる責任は教師にあります。それは今後、教師に求められるスキルの新たなスタンダードになるでしょう」
(敬称略)
[原文:This education startup is teaching kids how to spot fake news]
(翻訳:蓮)