2021年4月22日、ホワイトハウスで行われた定例記者会見で、気候担当大統領特使として発言するジーナ・マッカーシー国家気候アドバイザー。
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- アメリカ証券取引委員会は、企業に気候関連の財務リスクの開示を義務付ける案を発表した。
- ジーナ・マッカーシー国家気候アドバイザーはこれについて、アメリカ人の貯蓄を守るための「大きな一歩」だと述べた。
- 多くの退職金や年金は、気候危機によって打撃を受ける可能性のある企業に投資されている。
アメリカのバイデン政権は、深刻化する気候危機がもたらす財務リスクについて、企業が確実に会計処理することを望んでいる。
アメリカ証券取引委員会(SEC)は2022年3月21日、企業に対して温室効果ガス排出量と、事業や財務状況に影響を与える「気候関連リスク」の開示を義務付ける案を発表した。ジーナ・マッカーシー(Gina McCarthy)国家気候アドバイザーがTwitterで説明したように、企業の排出量データのすべてが正確で、実際の排出量を反映していることを確認するために、個別に監査が行われることになる。
「これは我々の経済を守り、投資家と一般市民に向けて透明性を高めるための大きな一歩だ」とマッカーシーは述べている。
「この気候関連リスクの開示ルールは、ビジネスにとってもアメリカ国民にとっても良いことだ」と彼女は続けた。
「気候変動が経済にシステミック・リスクをもたらすことは分かっており、透明性が高まれば、投資家や退職年金、年金基金の運用に関するよりよい意思決定が可能になる」
今日、SECは歴史を作った。 SECは初めて、上場企業が温室効果ガス排出量と気候リスクを開示するための要件を提案している。 これは、我々の経済を保護し、投資家と一般市民のために透明性を高める大きな第一歩だ。
これは、気候変動に関連する財政的な打撃からアメリカ人を守ろうとするバイデン政権の最新の取り組みだ。Insiderが以前報じたように、バイデン大統領は2021年10月、気候危機がもたらす2つの主要なリスクを軽減するための戦略をまとめた計画を発表した。1つは、異常気象により資産に損害を与える物理的リスク、もう1つは、温室効果ガスを大量に発生させる経済から風力や太陽光などのクリーンエネルギーに移行する際にコストが発生するリスクだ。
SECの提案は、これらに対する保護機能を強化することを意図している。このルールが施行されれば、企業は次の4点の開示が求められることになる。
- どのように気候変動リスクを管理しているか
- 気候変動リスクが短期的・長期的に事業に重大な影響を与える可能性はどの程度か
- 気候変動リスクが、ビジネスモデルにどのような影響を及ぼしたか、または及ぼす可能性があるか
- 自然災害が企業の財務諸表にどのような影響を与えるか
この提案に対する一般からの意見が、60日間にわたって募集されている。
気候危機が悪化の一途をたどる中、多くの専門家が、このような取り組みは早く始めるべきだと主張している。国連が2022年2月28日に発表したレポートによると、最大36億人が気候変動により極めて大きな影響を受け、気温の上昇が続けば、一部の都市は人が住めなくなる可能性があるという。
多くの人々の生活、そして経済が危機に瀕している中、SECのゲーリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長は、声明で次のように述べた。
「数十兆ドル規模の投資家たちが、気候関連の情報開示を支持している。というのも、気候変動リスクは企業に重大な財務リスクをもたらす可能性があり、投資家は十分な情報に基づいて投資判断を行うために、気候変動リスクに関する信頼できる情報を必要としているからだ」
「企業も投資家も、今回提案された明確なルールから恩恵を受けるだろう」とゲンスラーは述べている。
「業績に影響を与える可能性が高く、一貫性があり比較可能な情報に対する需要がこれだけある以上、SECには果たすべき役割があると信じている」
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)