ニッケル価格高騰がEV各社を直撃。テスラは独自の供給網で最悪の事態回避か

イーロン・マスク

高騰するニッケル価格。だがテスラは周到に手を打っていたようだ。

Patrick Pleul/picture alliance via Getty Images

ロシアのウクライナ侵攻により、ガスや小麦など必需品の価格が高騰している。そして今、電気自動車(EV)業界は、ニッケル価格の高騰という問題に直面している。

ニッケル価格の高騰は、EVへの移行を進める伝統的企業にとっても、ルーシッドやリビアンといったEVスタートアップにとっても痛手であり、業界トップのテスラでさえも市場の変化と無縁ではいられない。

テスラはサプライチェーンと価格設定の課題に対応するため、最近2回にわたって値上げを行い、基本モデル車の価格は3万ドル台半ば〜4万5000ドル以上(約400万〜540万円、1ドル=120円換算)となった。

しかし競合他社の多くとは異なり、テスラはかねてよりサプライチェーンとバッテリーリサイクル戦略に投資してきたおかげで、ニッケル市場の変動に十分備えているようだ。

ニッケル価格高騰の理由

ニッケルは、ステンレス鋼やリチウムイオン電池の重要な材料だ。採掘が必要なニッケルの枯渇は何年も前から予測されていたが、ノルウェーのエネルギー分析会社ライスタッド・エナジー(Rystad Energy)が最近発表したレポートによると、2024年までに需要が供給を上回り、2026年までに不足の危機が訪れるとされている。

そして、ロシアがウクライナに侵攻した。ロシアは最高級ニッケルの供給量の20%、世界全体のニッケル供給量の10%を占めているため、アメリカをはじめとする西側諸国がロシアに対して起こした経済制裁は市場の注目を集めた。ニッケル価格の高騰により、ロンドン金属取引所は1週間以上にわたり取引を中止していたが、2022年3月16日には限定的に取引を再開した。

アメリカ国内のEVメーカーのニッケル調達価格が高いのは、国内採掘が限られていることも一因だ。アメリカのニッケル生産量は世界の0.7%程度にすぎない。ニッケルの採掘工程は、同じく電池の材料として人気の高いコバルトよりはクリーンだが、それでも環境に優しいとは言いがたい。バイデン政権は最近、ミネソタ州の水と森林を汚染から守るため、銅とニッケルの採掘を禁止した。

自動車業界のアナリスト、ローレン・フィックス(Lauren Fix)はInsiderの取材に答え、「重要な材料の供給を敵に頼ることは、決して利益になりません。敵は、取引価格をコントロールする能力を持っており、供給を受けにくくすることで目標達成を阻むこともできます」と述べている。

テスラの成功戦略

Insiderはテスラに対し、ニッケル価格の上昇をどのように乗り切るかについてのコメントを求めたが、回答は得られなかった。しかしテスラは、市場変化の影響を極力回避するための計画を、何年も前から継続している。

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