ロシア当局に身柄を拘束される、ウクライナ侵攻に反対するデモ参加者(2022年3月2日、サンクトペテルブルク)。
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- ロシアでは、ウクライナ侵攻をめぐって身柄拘束や経済的困窮を恐れ、国外へ逃れる人が増えている。
- Insiderが話を聞いた3人のロシア人たちは、逃れた先で自分たちに向けられる敵意を感じたと語った。
- ただ、3人はそれも理解できると話している。1人は「彼らを責めることはできません」と話した。
ウクライナ侵攻をめぐって国を離れたロシア人たちは、逃れた先の国で嫌がらせを受けたり、高い賃料を取られるなどしているとInsiderに語った。
ロシアでは、プーチン大統領が2月にウクライナ侵攻を始めてから、国を離れるロシア人が増えている。その多くは戒厳令の発動や国境封鎖、身柄拘束、経済的困窮を恐れて近隣諸国に逃れている。
「彼らを責めることはできません」
モスクワにあるコンサルティング会社で働いていたアンナさん(仮名)は、3月に入ってから親戚のいる隣国ジョージアに逃れた。
アンナさんは、昼食を買おうとした時に彼女のアクセントに気付いたレストランの店主から怒鳴られたとInsiderに語った。
「最初は困惑しましたが、わたしも戦争に反対していることを知ってもらいたかったです。ただ、彼が怒るのは理解できます」とアンナさんはInsiderに話した。
「わたしでも怒りを感じるでしょう」
サンクトペテルブルク大学の教授だったヴァレリヤさん(仮名)は先週、夫とともにトルコのイスタンブールへ逃れた。現地には夫の家族がいるという。ヴァレリヤさんは、街中で彼女の家族がロシア語でやりとりしているのを聞いた男性グループから嫌がらせを受けたとInsiderに語った。
「自分の身にこのようなことが起きたのは初めてでした」とヴァレリヤさんはInsiderに話した。
「でも、彼らを責めることはできません」
ロシア人には高く、ウクライナ人には無料で?
ロシアによるウクライナ侵攻を批判してきた、モスクワ大学の教授で金融ジャーナリストでもあるボリス・グロゾフスキー(Boris Grozovski)さんは現在、友人たちとともにジョージアの首都トビリシにいるとInsiderに語った。
自身の政治的見解のせいで、身柄を拘束されるかもしれないと恐れているとグロゾフスキーさんは言う。ロシア当局は反戦デモ、ウクライナ侵攻に関する報道、政府を大っぴらに批判する人間を厳しく取り締まっている。
ロシアの独立系監視団体OVD-Infoは3月16日の時点で、ロシア各地でウクライナへの侵攻に抗議した1万4900人以上が身柄を拘束されているとしている。
首都トビリシで反戦デモを行う人々。参加者の中にはロシア人の姿も(2022年3月12日、ジョージア)。
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グロゾフスキーさんは、ジョージアではよくしてもらっているとしつつ、トラブルを目にしたこともあると話した。
「ジョージアの人々はとても温かく迎え入れてくれました。街中、カフェなどでもとても優しいです」
「ただ、ロシア人やベラルーシ人向けに賃料を値上げするジョージア人は多いです」とグロゾフスキーさんは話した。ロシアとウクライナに国境を接するベラルーシはロシアの強い協力者だ。
グロゾフスキーさんは「同じオーナーがウクライナ人には無料で部屋を貸しています」と話し、それは「理解できるし、良いこと」だと思うと付け加えた。
ロシア人には高く、ウクライナ人には無料で部屋を貸しているとするグロゾフスキーさんの主張をInsiderでは独自に確認することはできなかった。
「彼らの立場なら、自分も同じようなことをしたでしょう」とグロゾフスキーさんは語った。
「戦争やプーチンの独裁に反対している人間、ロシアがやっていることに責任を負おうとする人間とジョージアの人々に見なされれば、信頼できる人間として見てもらえるでしょう」
ただ、グロゾフスキーさんは長期的にはジョージアにいることが安全だとは考えていないという。「ジョージアの人々の心は今、ウクライナとともにあるものの、政府は違う」からだ。
ジョージア政府は「ロシア軍による侵攻を恐れていて、(ロシアとの)友好関係、ビジネス関係を築きたいと考えています」とグロゾフスキーさんは指摘する。
「そのため、長く滞在し過ぎるとジョージアは自分にとっては安全ではありません」
ロシアによるウクライナ侵攻は、2008年のジョージア侵攻としばしば比較される。5日に及ぶ戦闘では、EU(欧州連合)の推計で約850人が死亡した。
ジョージア侵攻は2つの地域 —— 南オセチアとアブハジア —— をめぐる戦いで、ロシアがその独立を認める一方で、ジョージア、アメリカ、イギリス、その他の国連加盟国の大半はジョージアの領土と見なしている。
ただ、ジョージア政府はロシアに対してウクライナ侵攻をめぐる制裁を課しておらず、ウクライナのゼレンスキー大統領はこれを「モラルに反する」と表現した。ジョージアはまた、国民が志願兵としてウクライナへ行き、戦闘に加わることも禁止している。
※身元を保護するため、一部の取材協力者の名前を仮名にしています。
(翻訳、編集:山口佳美)