新型コロナウイルスのパンデミック中に、記録的な数の人が仕事を辞めた。
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- 女性の賃金の上昇率は6カ月連続で男性を上回っている。
- 賃金の上昇は、よりよい機会を求めて仕事を辞めた女性によってもたらされている。
- その一方で、賃金の低い女性の多くは、育児などのために完全に仕事を辞めなければならなかった。
この1年、女性が大量に離職している。多くの女性はより収入の高い仕事を求めて辞めているようだ。
アトランタ連邦準備銀行の賃金上昇率追跡調査によると、女性の賃金上昇率は、6カ月連続で男性を上回っている。このデータによると賃金が上昇している女性は、よりよい条件を求めて「大退職」に加わっている人たちであるという。彼女たちはより高い賃金を得ているかもしれないが、それは、特に低賃金の女性の離職率が過去最高を記録したことを受けて起こったものである。そのため、このデータはストーリーの一部しか示していない可能性がある。
働いている女性には「大退職」は効果があった
民間調査機関の全米産業審議会(Conference Board)が2022年2月に発表した調査結果によると、過去2年間に転職した女性の約31%は、給与やボーナスなどの報酬を前職の30%以上受け取っていた。これは、同じく報酬が上がったと回答した男性の28%よりも多い。
「女性労働者の方がパンデミックからの回復が不安定だが、成長が期待される産業に集まってきているのも事実だ」と、アメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)のチーフエコノミストであるウィリアム・スプリッグス(William Spriggs)博士は2021年、Insiderのジュリアナ・カプラン(Juliana Kaplan)に話している。
「この移行が進む中、労働者は、成長して雇用を増やしている分野で仕事を得る方法を見出している」と彼は述べていた。そしてそこでは「年収がはるかに多くなる」という。
一方、この2年間で約100万人の女性が完全に仕事を辞めた
働く女性の中には昇給している人もいるが、アメリカの労働人口は2年前に比べておよそ100万人減少していることが全米女性法律センター(NWLC)の調査で明らかになった。
NWLCの教育と職場の公正性を担当するバイスプレジデント、エミリー・マーティン(Emily Martin)は2021年9月、「黒人や有色人種の女性たちが多くを占めている低賃金の仕事に就いている女性の大半は、不十分な賃金と、保育施設が不十分ために離職している」と述べている。そのため、女性の仕事に関するいくつかの数値は、信頼性が低いという。
「飲食店や小売店、保育士、ホテルの客室係といった低賃金の仕事に就いていた女性が仕事を辞めたことで、賃金格差は縮小したかのように見えているだけだ」
全体的な賃金に関しては、女性は男性に比べるとまだまだ不利な状況だ。国勢調査(Current Population Survey)の収入の中央値のデータに基づくと、2020年、年間を通じてフルタイムで働く男性が収入1ドルを稼ぐ毎に女性が得るのは83セントであり、男性に比べると約17%少ない。
また、全般的には女性の方がうまくいっているが、賃金格差が縮小しているような数字には、低賃金の女性が仕事を辞めて戻っていないことが考慮されていないとNWLCのマーティンのような専門家は指摘している。
賃金の上昇に関しては、低賃金労働者はまだ満足のいく対応が得られていないかもしれない。例えば、2021年で言うと、賃金は上昇しているものの、インフレを考慮すると、平均的な労働者の実質的な給料は減っている。
ブルッキングス研究所が2021年12月に発表した分析結果によると、「現場の労働者の賃金は上昇しており、実質賃金も上昇していると報じられているが、多くの場合、賃金レベルはまだ低いという現実を覆い隠している」という。
「インフレが進行している現在、賃金が上昇しても、許容できる賃金水準の最低基準値も上昇している」
[原文:The Great Resignation is working for women]
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)