2017年7月23日、カナダ北極海諸島の北西航路沿いのピール海峡。溶けた海氷に沈む夕日。
David Goldman/AP Photo
- 南極と北極に熱波が到来し、3月18日には平年の気温を南極で40℃、北極で30℃上回った。
- 両極地の季節は逆だが、「大気の川」が両極地に湿気と暖かい空気を運んだ。
- 気候変動が両極地での熱波を引き起こしたのかは定かではないが、極地が地球の他の地域よりも早く温暖化していることは確かだ。
2022年3月半ば、地球の極地は熱波に覆われ、季節外れの高温となった。
AP通信によると、北極の一部では、3月18日に気温が平年より約30℃高くなった。同じ日、南極大陸のドームC観測所では、平年より約40℃高いマイナス11.8℃という記録的な気温となった。南極高原の標高3488mの地点に位置するボストーク基地でも、マイナス17.7℃という極端な気温となった。
気候変動に関する非営利研究機関、バークレー・アース(Berkeley Earth)の主任科学者ロバート・ロデ(Robert Rodhe)によると、3月22日の時点で南極の熱波は収まっているが、気温は平年より30℃ほど高い状態が続いている。
「この現象は、これまでの記録や、南極で何が可能なのか、我々が予想してきたことが書き換えている」とロデはツイートしている。
「これは単に異常なほどあり得ない現象なのか、それともこれから起こることの前兆なのか。今のところ、誰にもわからない」
2010年1月1日、南極東部のコモンウェルス湾、デニソン岬の岩場の海岸線に残された溶けかけの氷の上に立つ2羽のアデリーペンギン。
Pauline Askin/Reuters
2つの極地は今、正反対の季節にある。南極は秋になって寒くなり始め、北極は冬の暗闇から抜け出したところだ。だが今回、両極地で高温を記録したメカニズムは同じものだ。水蒸気が空を流れる川のように帯状になった「大気の川(Atmospheric rivers)」が、大量の水分と暖かい空気を極地に運び、熱波を引き起こしたのだ。
南極大陸では、「ヒートドーム」と呼ばれる高気圧が大陸の東側に居座り、熱と湿気をそこに閉じ込めたと、ワシントン・ポストが報じている。
南極大陸を研究するダナ・バーグストローム(Dana Bergstrom)、シャロン・ロビンソン(Sharon Robinson)、サイモン・アレクサンダー(Simon Alexander)は、「この2つの熱波に関連性があるのかどうか、まだ分からない。偶然の一致である可能性が高いだろう」とThe Conversationに3月22日付けで投稿している。
それでも彼らは、「モデリングによると、大規模な気候パターンがより変わりやすくなっていることが示唆されている。つまり、この一過性のような熱波が、気候変動が進んだ未来の前兆なのかもしれない」と付け加えている。
極地は地球の他の地域より早く温暖化している
2018年2月18日、南極のヤンキーハーバーで、氷の上に立つペンギン。
Alexandre Meneghini/Reuters
これらの温暖化現象は、気候変動と直接結びつけられるわけではないが、今後の研究によってそうなる可能性は高い。2021年6月に太平洋岸北西部で記録的な熱波により数百人が死亡したわずか1週間後、異常気象の研究機関、World Weather Attributionは、人間が引き起こした気候変動がなければ、この熱波は「ほぼ起こり得ないこと」だったと結論付ける研究を発表した。
人間が二酸化炭素のような熱をため込むガスを、ますます多く大気中に放出することで、地球の気温は上昇しており、特に極地は地球の他の地域よりも早く温暖化している。
北極で冬の間に暖かい時期があるのは自然なことだが、地球が温暖化するにつれて、その時期がより頻繁に、より長く続くことが調査により明らかになっている。一方、南極大陸では、これまでの記録が少ないため、このような気候を説明するのは難しい。
2017年8月1日、グリーンランド南西部にあるヌープ・カンゲルルアのフィヨルドで、氷山が溶けて水滴がしたたり落ちている。
David Goldman/AP Photo
Australian Centre for Excellence in Antarctic Scienceのマット・キング(Matt King)所長は「南極の正確な気温の記録は1950年代後半から始まっているため、何が際立った現象で、何がそうでないかを見極めるのは本当に難しい」とガーディアンに語っている。
「この先、我々が排出する二酸化炭素の量によっては、このような気温をもっと頻繁に目にすることになるかもしれない」
ノルウェーの気象研究所のデータによると、熱波の到来とともに、あるいは熱波が原因となって、北極の海氷面積は3月に突然減少した。
一方、南極では、熱波が到来する以前から、海氷面積が史上最低を記録したと、2月にガーディアンが報じていた。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)